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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第13章・トラック野郎と恐怖のダンジョン』
163/273

163・トラック野郎、絶体絶命

*****《コウタ視点・???階層》*****




「…………」

 ここ、どこだ?

 視界がブレたと思ったら、景色が一変した。

「なんだここ………森、か?」

 まず、目の前に広がるのは森。

 背後には石の壁があり、まるで出口が壁でふさがれたようになっている。そして、木々に囲まれた森に、見たことの無いような植物が茂っている。

「ん……これ、なんだ」

 俺の足下に、魔法陣のような物が刻まれていた。

 まるで、この魔法陣の上に俺が現れたみたいじゃないか……ははは。

『なう、なうなう』

「え、しろ丸っ!!」

 足下に、白いバレーボールのようなフワフワがあった。

 思わず抱き上げると、耳と尻尾が現れる。

『なうー』

「しろ丸……ああ、よかった」

 ギュッと抱きしめると、しろ丸は苦しそうに鳴いた。

 でもやめない、考えたくはないが、どうやら俺は孤立したようだ。

 確か、太陽達がめっちゃ重い扉を開けようとして、気が付いたらここだった。

「考えられるのは……転移魔法陣、だっけ?」

 魔術でマーキングした場所に転移するとかいう、一種のテレポート。もしかしたらトラップに引っかかったのかもしれない。

「とにかく、太陽達と合流しないと。タマ、ここどこ………」

 そう呼びかけた途端、俺の背筋に冷たい汗が流れた。

 そういえば、いやまさか………ウソだろ。

「し、しまった………」

 完全武装、カービン銃にベレッタ、ナイフにプロテクター、そして替えのマガジンに手榴弾、携帯食料に水、それらを防刃リュックに入れて背負い、軍隊用ヘルメットを被ってる。

 準備は万全だ。そう、万全過ぎたのだ。

「なんて、こった……」

 軍隊用ヘルメットを被っているせいだ。

 俺はタマの連絡用イヤホンを、持ってこなかった。




*****《勇者タイヨウ視点・21階層》*****




 オレ達勇者パーティーは、突如消えたおっさんの謎に迫っていた。

「みんな、これ見て……魔力の痕跡がある、それにこの魔法陣……」

「転移ね。不味いわね、どこに飛ばされたか見当も付かないわ。それにしろ丸もいない」

「上の階か下の階か……どうしましょう、戻りますか?」

「でもよ、このダンジョンが何階層まであるかわかんねー以上、引き返すより先に進んだ方がいいと思うぜ、まだ20階層だし、この下が百や二百階層まで続いてないとは言い切れねーしよ」

 ここでオレ達はコハクさんに確認する。

「コハクさん、おっさんは多分、下の階層に行った可能性が高い、このままさっさと……」

「………」

「コハクさん?」

「ご主人様……」

「あ、あの?」

「ご主人様ご主人様、ご主人様ご主人様……」

 な、なんか怖い。ブツブツ言って目の焦点が合ってなくね?

 そういえば、おっさんとブルホーンが戦ったときも、何も出来ない自分が許せない感じだった。あの時はおっさんが宥めたけど、今回はそのおっさんがいない。

「ご主人様………ぜったいに、助ける!!」

「え、ちょ」

「ご主人さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ!」

「ちょ、コハクさん!?」

 なんとコハクさんは、一人で下の階層に降りてしまった……ダッシュで。

 オレ達は唖然として見送り、慌てて後を追いかける。

「お、追うぞ!!」

 魔力を集中し、身体能力を強化してダッシュする。

 くそ、おっさん……無事でいてくれよ。




「どけぇぇぇぇーーーーーーッ!」

 コハクさんは鎧を展開し、迫り来るモンスターを薙ぎ払っていた。

 アレクシエル博士の調整のおかげか、なんだかすげぇパワフルになってる気がする。再び現れたブルホーンの群れに突っ込んだだけで肉片が飛び散る勢いだ。

「は、早すぎ……お、追いつけないよぉ」

「クリス、オレに掴まれ」

「わわわっ、ありがとタイヨウ」

 クリスは身体強化があまり得意じゃない。なのでオレがお姫様抱っこでコハクさんの後を追う。

 この階層は迷宮タイプ、たぶん次の階層の前にボスがいるはず。

「コハクさん、落ち着いて下さいっ!!」

 月詠の声もコハクさんには届かない。

 というか、マジで追いかけるだけで精一杯だ。

「見て下さい、ゴールですっ!!」

 直線の通路に出た、そして一番奥には扉が見える。たぶんあそこを開けるとおっさんがブルホーンと戦ったようなボス部屋に出るはずだ。

「あぁぁぁぁっ!!」

 コハクさんはドアを蹴破る。やっぱりボス部屋だ、ボスモンスターを倒さないと先に進めない。

 先ほどと同じように、結界のテリトリーに入ったコハクさんが囚われ、部屋の中央に巨大な岩石のモンスターである『ロックゴーレム』が現れた。

「コハクさん、そいつは危険種」

「邪魔ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

『グォォォォォンンンッ!!』

 鎧身形態のまま突進したコハクさん。

 ロックゴーレムは、何にもしないまま粉々に砕かれ消滅した。

「あー……」

「もしかしたら、あのまま進ませた方が早いんじゃない?」

「そ、そうかもしれませんわね」

「わーお、ワイルドぉ……」

 呆然とするオレ達を余所に、コハクさんは下の階に走り去った。




*****《コウタ視点・???階層》*****




 とにかく、ここにいて……平気なのか?

 正直動きたくないが、こんないかにもな森でジッとしてたら、モンスターとかに襲われないだろうか。現在の戦力は、カービン銃とベレッタ、手榴弾とナイフしかない。

 勇者パーティーの戦闘を見たせいか、どうしても頼りなく感じる。現にブルホーン相手にカービン銃はあまり効果がなかったしな。

「しろ丸、どうしようか?」

『なうなう、なうなう』

「ん?」

『なうー』

 しろ丸は俺の周りをグルグル回り、ゆっくりと森に向かって歩き出す。

 チョコチョコ歩くと立ち止まり振り返った。

『なーお』

「……付いてこいって?」

『うなーお』

 うーん、よくわからんが、ここはしろ丸の野生の勘を信じるべきだろう。

 こう見えて災害級危険種だし、俺なんかより頼りに……。

『うなー』

 うーん、可愛い。

 よし、俺の命はしろ丸に預けるぜ。




 しろ丸に付いて歩くこと一〇分。

 仕方ないとはいえちょっとスローペースだ、チョコチョコ歩きは可愛いけど、俺の歩幅と比べるとかなり違う。

 藪を掻き分け、ナイフで蔦を切り裂きながら歩く。ジャングルブーツでよかった、それにプロテクターや防刃ズボンのおかげで尖った枝や切れ味のよさそうな葉っぱも気にしなくていい。

『………』

「ん、どうしたしろ丸?」

『なう』

 しろ丸は、小さく吠えた。

 俺にはそれが「警戒しろ」と言ってるように聞こえた。

「………」

 ザワリと背筋に悪寒が走り、俺はしろ丸を抱えて近くの藪へ隠れる。

 息を殺し、冷たい汗を掻きながら、小さく震えていた。

『シュルルルル………』

 あり得ない。

 なんだ、あれは。

 死ぬ、死ぬ、死ぬ。

 しろ丸を抱きしめ、ひたすら息を殺す。

「…………………」

 なんだ、あの巨大なトカゲは。

 ユニック車くらいの長さのトカゲ、全身に岩をくっつけたような、不気味な黄土色のゴツゴツした巨大トカゲが、俺としろ丸の潜む藪の、すぐ近くを通って行く。

 音も立てず、スルスルと進んで行く。

 心臓の音がヤバい、気付かれる。

『………なう』

「…………」

 どうやら、行ったようだ。

 今になって全身が震える。リアルな死の恐怖が全身を包む。

「ハァ、ハァ、ハァ………」

『なぅぅ』

 しろ丸が俺を慰めるように、俺の顔をペロペロなめた。




 後になって知った事だ。

 ここはダンジョンの『第95階層』

 最下層まで残り5階層の超危険地帯であり、通称『死の5階層』だ。

 総合型ダンジョンの特徴として、最後から5階層はレベルが違う。それが数ある総合型ダンジョンが未だに踏破されない最大の理由だ。

 そんな最悪な場所に、俺はしろ丸と取り残されていた。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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