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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第13章・トラック野郎と恐怖のダンジョン』
159/273

159・トラック野郎、大ピンチ

異世界の配達屋さん第一巻・本日発売です!

書き下ろしあり、加筆ありで充実した内容となっております。

どうぞよろしくお願いします!

 俺は生身で人生最高の死闘を演じた。

マジで死を覚悟したし、あんな凶悪な牛のバケモノ相手によく立ち回ったと思う。

 でも、悲しいよな·········これが現実なのよ。

「おりゃあッ!!」

「焼けろっ!!」

 太陽の剣がモンスターを両断、月詠の炎がモンスターを黒焦げにする。

「飛べっ!!」

「雷よ、轟けっ!!」

 煌星の矢がモンスターの頭を貫き、クリスの魔術の雷がモンスターを焼く。

「えい」

 コハクも勇者パーティーに混ざり、ワラワラと現れるモンスターを殴り殺してる。ちくしょう、なんだよこの光景は。

 現在の階層は二〇。モンスターも強力になってる。ちなみにこの階層は出現するモンスターを全部倒せば先への道が開かれるという階層だ。

「でもさ、何もコイツが出てこなくても······」

 現れたのは、先程俺が死闘を繰り広げた『ブルホーン』だ。

 俺が一匹でも死ぬかと思ったモンスターなのに、勇者達とコハクは苦もなく倒してる。現れるブルホーンをバッサバッサと処理していく。

「飛べ、『グライドエッジ』!!」

 太陽の剣が発光、そのまま振り抜くと光の刃が飛び、ブルホーンを何匹もまとめて両断した。

「焦がせ、『鳳仙火ほうせんか』!!」

 月詠の両拳から小さな火球が何発も発射され数体のブルホーンを包囲、爆発した。

「貫きなさい、『颯大蛇ハヤテオロチ』!!」

 煌星の発射した一発の矢は風を帯び、軌道を変えながら何体ものブルホーンの頭部を貫通した。

「紫電の雷よ、我が呼び声に応えよ、そして打ち砕け、『雷獣の咆哮ライトニング・ハウリング』!!」

 クリスの放った魔術の雷が、ブルホーン達をまとめて消滅させた。

「ご主人様には触れさせないっ!!」

 コハクはとにかく暴れてる。俺を殺しかけたブルホーンだからか、獣のような動きでブルホーンを肉の塊にしてる。

「············」

 俺は右手に持ってるカービン銃と、暴れる勇者パーティーを見比べた。

 うん、勝てるワケねぇや。

『なうなーう』

 しろ丸が慰めるように俺の足に身体を擦りつける。

 その気になれば戦闘に参加出来るがそんな必要は全くない。というかもうすぐ終わりそうだ。

「よっしゃ勝利、やっぱ調子いいな」

「ええ、身体に馴染むわね。少ない魔力で技が出せる」

「いつもなら一〇〇の魔力を使いますが、これなら一〇で出せますわ。さすがは天才アレクシエル博士ですわね」

「うんうん、小生意気でちっちゃいけどねー」

 戦闘終了後、何事もなかったように集まり談笑する。コイツら息一つ切らしてない······勇者パーティーとして修行してるのは伊達じゃないな。

「ご主人様、いっぱいやっつけた」

「おぉ、すごいぞコハク」

「えへへ」

 コハクも息一つ切らしてない。

 断言する、このパーティーは無敵だ。俺以外最強だ。




 次の階層に降りると、すぐ目の前にドアがあった。

 しかも豪華な装飾の施された立派な観音開きドアで、今までにない造りのドアに俺は困惑した。しかし月詠は目を輝かせて俺に言う。

「コウタさん、これ······お宝部屋ですよ!!」

「お宝部屋?」

「はい。総合型ダンジョンに必ず一つ以上はある、財宝がある部屋です。モンスターは居ないし、あるのは財宝だけ、せっかくですし、今日はここで休みましょう」

「お、おう」

 確かに、時間的にもかなり経過したし、外は夜になってるだろう。腹具合で何となくわかる。

「おい、ドアを開けるぜ」

 ワクワクした太陽が、ゆっくりとドアを開いた。  

「うぉ·········」

 そこは、黄金郷だった。

 漫画やアニメで出てきそうな黄金の光だ。金貨に銀貨、テンプレな王冠や宝石、宝箱ぎっしりの装飾品、よくわからん宝剣などが山のように積んであった。

「な、なんじゃこりゃ······」

「ご主人様ご主人様、きらきらだね」

『なうなうなう』

 しろ丸を抱いたコハクは殆ど無表情で言う。

 部屋いっぱいの財宝を前に感動してたのは、俺だけじゃない。

「すっげー、いくらあるんだこれ?」

「これほどの財宝とは思わなかったわ······多分、最初の探索だからかしら?」

「一度財宝を入手すると、次に同じ部屋に訪れた人達のお宝は、かなりグレードが下がると聞きました。これだけの財宝の後は、小さな宝箱一つという事もあるそうですよ」

「ねぇねぇ、この首飾りもらっていい?」

 クリスが俺の腕をクイクイ引きながら、いつの間にか手に持っていた綺麗な首飾りを見せる。

「クリス、最初に言った通り、財宝は全部コウタさんにあげるのよ」

「わかってるよー、だから聞いてるの!!」

「ははは、好きなだけ持っていけよ」

「やたっ、おにーさん大好きっ!!」

 やっぱクリスは可愛いね。でも俺にロリ趣味はないから安心してくれ。

 というか、こんなのどうやって持って帰ればいいんだよ。

「あ、持ち帰りは私に任せてね〜」

 クリスが杖を掲げ呪文を唱えると、部屋全体を魔法陣が包み込み、財宝はキレイさっぱり消え去った。

「ふふん、こんなときのために訓練した異空間魔術『アイテムボックス』だよ。私が作り出した魔術空間に物を収納するの。当然、出したりもできるよ」

 異空間魔術は、今は失われた『時』属性の魔術らしい。キリエ曰く、素質があれば使える人間はいるだろうけど、指導する人間がいなければ習得は難しいそうだ。オレサンジョウ王国に『時』属性持ちの魔術師はいないそうだし、独学でクリスは身につけたのだろうか。どっちにしろスゲぇ。

 クリスが再び呪文を唱えると、今度は別の道具が出てきた。

 テントに魔導コンロに食材、鍋や食器などだ。

「じゃ、今日はここで野営しましょう」

 というわけで、今日はここまで。




 俺と太陽はテント作り、残りは調理に別れ支度をする。

 ちなみにテントは二つなので、俺と太陽、女性としろ丸に別れる。

「わたし、ご主人様と一緒がいい」

「却下」

 こんなやり取りもあったが一蹴した。

 今日のメニューはカレーライス。月詠オリジナルのスパイスを使った野菜カレーだ。ちなみに太陽の大好物。

 食事を終え、やる事もないのでテントに入る。

 総合型ダンジョンの階層は不明だが、一日で二〇階層ほど進んだのでかなりいいペースだ。

 普通の冒険者だったら五階層ほど進めればいい方らしい。勇者達が強すぎてハイペースなだけだ。

 俺の隣で寝袋に包まる太陽が言う。

「おっさん、ダンジョンはどうだ?」

「んー······最初は調子に乗ったけど、もういいかな。俺はブルホーン一匹でも手を焼くし、最下層まで見学してるからよ」

「そっか、まぁ見ててくれ、こんなダンジョン軽ーく踏破してやるからよ」

「はいはい·········おやすみ」

「ん、おやすみ、おっさん」

 疲れからか、すぐに眠気が襲ってきた。




 翌日、というか時間が曖昧なのでよくわからん。

 ここは日の光もないダンジョンで、しかもテントの中である。

 簡単な朝食を済ませ、さっそく下の階層へ。

「ここは迷宮タイプですね、死角に気を付けて」

 太陽が先頭、月詠と続き、俺としろ丸、煌星とクリス、最後尾をコハクに任せて進む。  

 勇者達は、何よりも俺の安全に気を遣ってくれた。最年長なのに情けない。

 現れるモンスターは太陽が薙ぎ倒し、背後から不意打ちで現れるモンスターもコハクの敵じゃない。

「お、次の階層への扉だぜ」

 コハクの案内で進むとあっという間に次の階層への扉が見つかった。コハク曰く『勘とニオイ』で道を探してるそうだ。

 太陽がドアを開けようとするが、開く気配はない。

「あ、あれ?······この、ふんぬぬぬっ!!」

「何してるのよ太陽······」

「手伝う」

 月詠とコハクが参加し、思い切り扉を押す。

 すると、少しづつ扉が開いていく。どうやらかなりの重量らしい。

「タイヨウ、私の魔術で押そうか?」

「わたくしの風でサポートしますね」

 俺以外のみんなが協力しあい、ゆっくりとドアを······。

「え」

 次の瞬間、俺の視界がブレた。




*****《勇者タイヨウ視点》*****




 クッソ重い扉をみんなで開く。

 月詠やコハクさんのパワーに煌星とクリスのアシスト。力を合わせてようやく扉が開いた。

 まだ先は長いのだろうか、とりあえずみんなを鼓舞しようと振り返る。

「よーし、さっさと進もう········あれ?」

 ここでオレは気が付いた。

 というか、全員が気が付いた。

「おっさん······?」

 おっさんの姿が、消えていた。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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