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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第13章・トラック野郎と恐怖のダンジョン』
158/273

158・トラック野郎、ダンジョンにて

 最初のゴブリンを倒した俺は、少し調子に乗っていた。

「おっさん、グリンワームだ!!」

「おう、任せろ!」

 煉瓦造りの通路を進むと、大型犬ほどの大きさのキモい青虫が現れる。こいつに遭遇するのは三回目だ。

「俺の弾丸の餌食になれっ!」

『ピギィィィィーーーッ!』

 弾丸が青虫の身体に食い込み、緑色の液体が飛び散る。

 青虫は絶命すると、ダンジョンの床に吸収された。

「ふ······また、つまらぬ物を撃ってしまった」

 カービン銃のマガジンを取り替えながら呟く。

「おっさん、やるじゃねーか。雑魚ばかりとはいえ射撃もかなり上手くなってるぜ」

「ま、これだけぶっ放せばイヤでも慣れるさ」

 太陽達はまだ何もしてない。この一階層のモンスターは俺に任せてくれるようだ。

「ご主人様、かっこいい」

『なおーん』

 よしよし、可愛いやつめ。

 コハクとしろ丸の頭をナデナデしてると、月詠が言う。

「コウタさん、ここはまだ一階層ですので、一般種でも最弱レベルのモンスターしか現れません。下の階層に降りれば降りるほど、強力なモンスターが現れます」

「最初の階層はおじ様にお任せしますわね。ですが、油断は禁物ですわよ?」

「わかってるよ、最初の階層がザコってのはロープレの基本だ。ちゃんと弾は節約していくよ」

 替えのマガジンはまだまだある。ベレッタの予備マガジンもあるし、ナイフもある。

 某バイオゲームで弾を撃ち過ぎて残弾ゼロになって絶望したっけ。ナイフクリアって選ばれし強者だけが成せる技だよな。

 ま、俺にそんな心配はない。

 多分、最初の階層は俺のストレス解消のために雑魚刈りをやらせてくれてるんだと思う。みんな言わないが、雑魚を蹴散らしてさつさと下の階層に進む事だって出来るはずだしな。

 ここに出てくるモンスターはゴブリンとグリンワームくらいだし、俺でも対処出来る雑魚だ。一度だけゴブリンをナイフで倒そうと思ったがやめた。ゴブリンってかなりキモいし臭い。

 仮に弾切れになっても、チートレベル最高の武具と魔力を持つ勇者パーティーがいる。月詠とコハクの戦いを見てわかったが、今の太陽達は玄武王なんて敵じゃない。

 玄武王に苦戦したのは武具を使いこなせていなかったからだ。

 免許取り立てのペーペーにフェラーリを乗りこなせるわけがない。仮に乗れたとしても事故を起こすのは明白だ。

 玄武王の乗るダンプカーと太陽の運転するフェラーリがサーキットで勝負をしても、玄武王のダンプに潰されておしまいだ。だけど、今の太陽ならダンプを上手く躱し周回差を付けて勝利出来るだろう。

「お、あそこが下の階層への階段だぜ」

 通路を曲がると、何の変哲もない地下への階段が現れた。

 ま、最初だしな。通路も一本道だし楽勝だぜ。

「じゃ、次もお兄さんにお任せねっ」

「よーし、任せとけ」

 クリスの笑顔に釣られ、俺は笑顔でそう答えた。




『雑魚刈りのコウタ』はレベルアップした。なーんて言われてもおかしくないくらい雑魚を葬った。

 ゴブリンを撃ち殺し、スライムは弾の節約のためナイフで刺殺した。スライムって初めて見たけどけっこう可愛いのな。

 スライムの中には核があり、それを破壊すると溶けるように消える。しかも攻撃手段は体当たりのみなので、俺でも対処出来た。

 現在五階層。ゴブリン、スライム、ワーム系などの雑魚を倒し、六階層への階段を降りる。

 するとそこは、何もない半円形の広場だった。奥には下へ降りる階段が見える。

「ここは······」

「なんだここ?」

 煌星も太陽も知らないようだ。

 俺は月詠を見るが、首を捻ってる。

「すみません、勉強不足で。ダンジョンは初めてなので······」

 クリスとコハクに聞こうと視線を送る。

「しろ丸、ふっかふかー」

「ふわふわー」

『なうなうー』

 だめだこりゃ。

 ともかく、ここは年長者として先行する。数多のモンスターを屠った俺に死角はない。

「まぁ、進まないとわからん。行くぞ」

 勇敢なる俺が第一歩を踏み出した瞬間だった。

「へ?」

 突如、床に巨大な魔法陣が現れ床一面が光り輝き出した。

 魔法陣の模様がガチャガチャ動き出し、円形の中心に集まる。

「これ······召喚魔術だよ!!」

 しろ丸を抱きしめたままクリスが叫ぶが、もう遅かった。

 どうやら、テリトリーに入った瞬間に魔術が発動するらしい。つまり·········俺がテリトリーに侵入したから魔術が発動した。しかも結界付き、俺とモンスターだけの空間に。

「こ、これは······『ブルホーン』ですわ!! 一般種最強クラスのモンスターです!!」

 煌星の叫びが響く。

 ああそっか、この部屋はボス部屋なんだ。しかも戦えるのは一人だけ、最初にテリトリーに入った人を結界で隔離して戦わせる。

 俺の目の前には、三メートルはありそうな牛の化物がいた。

 プロレスラーを超える体格に、バッファローのような表情、武器こそ持ってないが、見ただけで分かる豪腕から繰り広げられるパンチはコンクリートブロックを粉砕するだろう。

「············」

 俺は唖然としてブルホーンを見上げていた。

 そして、ブルホーンの雄叫びが響く。

『ブォォォォォォォォォッ!!』

「ぎゃあーーーーーーーっ!?」

 こうして、コウタ対ブルホーンの戦いが始まった。




 俺は腰を抜かす寸前で堪え、何とか後ずさる。

「たたた、助けくれーーーっ!!」

 情けないがなりふり構ってる場合じゃない。太陽達の元へ走り助けを求める。あれ、薄いガラスような壁がある、これが結界か?

「どいて!!」

 コハクが拳を振り上げ、結界に全力で叩き付ける。

「······うそ」

 だが、結界には傷一つ付いてない。

 マジかよ、岩石を叩き割るコハクの一撃だぞ!?

「ちくしょー、オレがっ!!」

「む、ムリだよタイヨウッ、ダンジョンの結界は制約によって成り立ってるの、物理法則は無効化されちゃうよっ」

「んだよそれ、どういう·····おっさんっ!!」

「え、うぉあっ!?」

 太陽が叫ぶと同時に振り返ると、ブルホーンが拳を振り上げていた。

「うぁぁぁぁぁっ!!」

 横に逃げるとパンチが空を切る、そして結界と衝突した。

 当然ながらヒビすら入らない。やばいやばいやばい、マジでやばい!!

「こうなったら······おっさん、おっさんがそいつを倒せ!!」

「はぁぁっ!?」

「コウタさん、これはダンジョンの制約と誓約によって作り出された結界です、これを解除するにはモンスターを倒すしかありませんっ!!」

「おじ様、相手は一般種です、倒せない敵ではありませんっ!!」

「がんばれおにーさんっ!! やっちゃえっ!!」

「ご主人様、ご主人さまぁぁぁーーーっ!!」

『なおー』

 お、俺がこいつを倒す? 

 太陽達はもはや声援を送り、コハクは結界を破壊しようと素手で結界を殴りまくってる。しろ丸はいつも通り可愛い。

 あぁちくしょー、やっぱ来なきゃ良かった。

 それとも、調子にのった罰なのか。でも、ここで死ぬなんて嫌だ。

「や、やってやる······やってやるよ」

 くそ、過呼吸になりそうなくらいハァハァ息が出る。

 カービン銃を握り、ズンズン近付いてくるブルホーンに照準を定める。

「ハァハァハァハァ·········ふぅ」

 息を整え、トリガーを引いた。

 弾丸がばら撒かれ、薬莢が排出される。そして弾丸はブルホーンの身体にめり込んだ。

「おぁぁぁぁぁっ!!」

『ブゥゥゥバァァァァッ!!』

 こ、この野郎······両腕をクロスして頭と心臓をガードしてやがる。

「あ、やべぇっ」

 弾切れだ。

 俺はカバンから慌てて予備マガジンを取り出す。

『ブモォォォォォォッ!!』

「ひっ」

 ブルホーン、怒りの突進攻撃。

 俺は恐怖してカバンを開けたまま横に転がる。おかげでカバンの中身が散乱した。

 崩れた体勢を直そうとするが、突進の恐怖が抜けておらず手が震える。替えのマガジンを装填しようとするが上手くいかない。

「落ち着け、落ち着け落ち着け······ん?」

 ブルホーンを見ると、ヤツは俺の落とした携帯食料をクンクンと嗅いでいた。確かあれはドライフルーツの袋だ。

「············待てよ」

 ちょっと、いいこと思いついた。




 俺は半分諦めながら試してみる事にした。

「おい!! こっち見ろ!!」

『ブルルルルル······?』

 俺の手にはドライフルーツの袋。

 袋を開けて中の乾燥ブドウをひとつまみ、自分の口の中へ。

 ドライフルーツならではの凝縮された甘みが広がる。これが最後の食事かもな。

「さ、お前も」

『ブルルル?』

 なんとブルホーンは、袋のまま口に入れ咀嚼する。

 すると美味いのか、ごきけんな雄叫びを上げた。

「おーし美味いか? じゃあこれはどうだ?」

『ブルルルル、ブモォォォォォォッ!!』

「あーんして、ごくん。あーして、ごくんだぞ?」

『ブモォォォォォォッ!!』

「ほれ、アーン」

 俺はジェスチャーで食べ物を口に入れる素振りをする、するとブルホーンが大口を開けた瞬間に、美味しい果実を上空へ放り投げた。

『ブモォォォォォォッ』

「アーンして、ごくん」

 ブルホーンは、上空に投げた果実を上手に口に入れて飲み込んだ。

「ナイス!!」

 次の瞬間、ブルホーンの上半身は爆発した。




 結界が解除され、ようやく太陽達と再会出来た。

「ご主人さまぁっ!!」

 さっそく飛び付いてくるコハク。

 優しく抱き止めるが、プロテクターのせいでおっぱいのやわらかさが堪能できない。実に残念だ。

「おっさん、大丈夫か?」

「ああ、何とか······あいつがアホで助かったよ」

 そう、ブルホーンに食わせたのは手榴弾。

 ピンが外れても数秒は爆発しない。最初にドライフルーツを食べて安心させてから、果実と偽り食べさせたのだ。意地汚いモンスターで助かったぜ。

「ご主人様、わたし······護衛なのに」

「いいって、ほら、あーん」

「あむ」

 俺はドライフルーツをコハクに食べさせ、涙を拭う。

 とにかく、危機は去った。

「おっさん、これから下の階層は、オレらに任せろ」

「頼むよ、もう戦闘は懲り懲りだぜ······」

 もう生身での戦闘はマジで勘弁してくれ、もう疲れたよ。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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