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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第12章・トラック野郎と勇者のお礼』
156/273

156・トラック野郎、ダンジョンへ

*****《コウタ視点》*****




 俺のダンジョン入りが決まり、すぐに出発する事になった。

 ダンジョンの位置はスゲーダロからそこそこ離れた位置にあり、トラックでも丸一日はかかる。

 なので、今日は町で必要な物資を補給し、すぐにダンジョンへ向けて出発する。そして安全なところで野営をし、翌日からダンジョンを攻略するという予定になった。

 なるべく急ぎでという俺の希望なので、無理なスケジュールで申し訳ない。出来ればさっさと終わらせて帰りたいというのが俺の心情だ。

 ちなみに、まだアレクシエルの教授室で話をしてる。

「観光したいところだけどよ、おっさんの都合があるなら仕方ねーな」

「ふん、別に見る場所なんてなーんもないわよ。魔導技術が発達してるだけで、観光スポットなんてないからね」

 太陽のボヤキにアレクシエルはつまらなそうに返した。

 すると月詠が立ち上がる。

「とにかく、行きましょう。災害級は待ってくれないわ」

「よーし、武具の性能を試してやるぜ」

「その前にダンジョンですね。ふふふ、わたくし、実は楽しみですの」

「あ、私もー。ダンジョンなんて物語の世界でしか知らないし、実際に入るのは初めてなの」

「わたし、いっぱいモンスター倒す」

 はぁぁ、あっちは盛り上がってるよ。

 俺は憂鬱、だって俺までダンジョンに入る事になっちまったし、嫌な予感しかしない。

「ダンジョンの位置はここから馬車で三日ほどの距離よ。ま、せいぜい気を付けなさい。あたしの武具は完璧だから、もし負けたり怪我したりしたら、あんた達がヘボってことね」

 なんだこいつ、勇者にケンカ売ってるのか?

 太陽達は苦笑しながら部屋を出ると、何故かアレクシエルも付いてきた。

「あの、アレクシエル博士?」

「べ、別に見送りに出るわけじゃないわ。お菓子を買いに行くだけよ」

 月詠はクスリと微笑むと、それ以上は何も言わず校舎を出た。

 なんだこいつ、もしかして寂しいのかね。

「おっさん、キモい顔でこっち見ないでよ。憲兵隊に連絡するわよ」

「··········」

 やっぱこいつ可愛いくねーや。

 正門前に到着すると、アレクシエルが太陽達にいろいろ話をしていた。

「いい、災害級危険種を討伐したらまた来なさい。武具のチェックをしてあげる。それと、災害級モンスターの部位があったら持って来て。新しい武具の素材になるからね」

 俺はこのスキに駐馬場へトラックを取りに戻る。

 運転席に座りエンジンを掛け、アレクシエルと喋ってる太陽達の元へ。

「おーい、乗れよ」

 すると、アレクシエルの表情が変わった。

「な、な、な·········なに、これ」

 驚愕するアレクシエル。

 そりゃそうか、こんな巨大な乗り物なんて見たことないだろうしな。

「ちょ、おっさん、これ、なによ?」

「トラック」

 太陽達が乗り込み、しろ丸を抱えたコハクが助手席へ座る。

 驚き、目を見開いてるアレクシエルには悪いが、さっさと行かせてもらいますかね。  

「じゃーな、また来るからよ」

「ま、待って!! なにこれ、こんなの見たことない!! こんな精巧な作りの乗り物······しかも、こんな巨大な形、動かすだけでも相当な魔力が必要なはず!! おっさん、あんたも勇者なの⁉」

「ちげーよ。こいつのエネルギー魔力じゃない」

「じゃ、じゃあ何よ⁉ 待って、調べさせ」

「じゃーな」

 長くなりそうなので出発した。

 サイドミラーで確認すると、アレクシエルが追い掛けて······コケた。リーンベルさんに抱き起こされ、手をブンブン振ってる。

「どうしたの? ご主人様」

「いや、あいつも研究者だし、トラックが珍しいのかもな」

 さーて、行きたくないけどダンジョンに向かいますか。




 町で買い物を済ませ、ダンジョンへ向かう。

 助手席には最初コハクが乗っていたが、眠そうにしていたのでベッドルームへ行かせた。すると入れ替わるように月詠がやって来た。

「隣、失礼しますね」

「ああ、ほれ」

『なうなうー』

「わ、しろ丸」

 俺の太ももをクッションにしていたしろ丸を渡すと、月詠はしろ丸をフカフカと触りだした。

「ほかの連中は何してる?」

「ええと、太陽は煌星と一緒にゲームして遊んでいます。煌星、ゲームセンターで遊んだ事が無いみたいで。クリスはクレーンゲームでぬいぐるみを獲ろうと躍起になっていました」

「はは、そうか。月詠はここでいいのか?」

「はい。その、煌星の邪魔したくないし、コウタさんにダンジョンの説明もしなきゃと思ったので」

「ダンジョン······」

 そういえば、ダンジョンについて何も知らない。

 身の危険もあるし、事前情報は必要だな。

「この世界には、ダンジョンと呼ばれる迷宮が無数に存在します。詳しい事はよくわかっていないみたいですけど、ある日突然現れるそうです」

「なんだそりゃ?」

「一説では生物と言われていますね。ダンジョンは大きく分けて四タイプに分かれ、迷宮型、討伐型、財宝型、総合型とあります」

 月詠の説明ではこういうことだ。

 迷宮型・その名の通り迷宮で、迷宮の一番奥にレアなお宝があるらしい。迷宮にはトラップやモンスターも多く、数あるダンジョンで一番数が多いそうだ。

 討伐型・塔のような形をしたダンジョンで、最低でも五階層程度の高さを持つダンジョンだ。特徴としては各階層にいるボスを倒しながら登っていき、最上階のボスを討伐すると財宝にありつけるらしい。腕自慢にはもってこいのダンジョンだが、数は少ないそうだ。

 財宝型・ボーナスステージのようなダンジョンで、モンスターも存在せずお宝だけがあるダンジョンだ。特徴としては、財宝を獲得するとダンジョンそのものが消えてしまうらしい。なので、見つけた人は超ラッキーだ。

 総合型・上記の全てを兼ね備えたダンジョンで、最下層にはとんでもないお宝が眠ってるらしい。財宝だの伝説の武器だの言われてるが、この世界に存在する総合型ダンジョンは、未だに踏破された事が無いらしい。

「と、こんな感じです。ちなみに今回は総合型ダンジョンです」

「って、一番危険なダンジョンじゃねーか」

 ボスモンスターあり、トラップあり、財宝ありのダンジョン。考えただけでも恐ろしい。

「コウタさんの安全はあたし達が守りますのでご安心下さい。なので、コウタさんはダンジョンを楽しんで下さいね」

「お、おぅぅ……」

 月詠も勇者パーティーもコハクも、純粋に俺がダンジョンを楽しめると思ってる。というか月詠、俺はマジでトラックがないと一般人なんだって。

 こうして、トラックはダンジョンへ向けて進んでいく。




*****《アレクシエル視点》*****




 アレクシエル・ブレン・ルーミナス。

 一四歳の天才少女であり、産業都市スゲーダロでも最高の頭脳を持つというのは過言ではない。現に、『アルストロメリア魔導総合研究学園』では最高位の『魔導教授』の称号を得ていた。

 彼女の功績は並では無い。スゲーダロを走る『魔導走行輪』はアレクシエルが五歳の時に考案・開発した都市内移動用車で、現在はスゲーダロに無くてはならない住人の足となっている。

 それ以外にも、画期的な魔道具や設備を開発し、技術者達を唸らせた。

 アレクシエルが天才と言われ、名が広まったのは功績だけではない。彼女の家系は代々『聖剣』の技術を継承し、後世に伝えていく役割を担った名家であったのだ。

 真偽は不明だが、『聖剣』の技術はアレクシエルの先祖が産みだした技術と言われ、そのルーツはわかっていない。

 『聖剣』の技術は特殊な魔術によって継承され、当代の技術者で最も優秀な者が選ばれる。選ばれた技術者が『聖剣の技術』を継承されると、前任は『聖剣』を生み出す魔術が一切使えない。

 技術を継承した者は『ルーミナス』と呼ばれ、技術の研磨に一生を賭ける。

 アレクシエルの才能は『聖剣』でも発揮された。

 武具に属性を付与させ装備者の力に合わせたり、追加装備を作成し戦力の大幅な向上を可能にした。

 誰もがアレクシエルの偉業を称えた。聖剣の技術を大幅に進歩させた偉人として、一四歳ながら教授として教鞭を振るっていた。

 そんなアレクシエルが、心底興味を引かれた。

 急いで教授室に戻ったアレクシエルは、お茶の支度をしていたリーンベルに告げる。

「リーンベル、リーンベル!!」

「アレクシエル教授、どうかしたのですか?」

「馬車を出して、出かけるわよ」

「はぁ……どちらへ?」

「決まってるわ、ダンジョンよ。勇者パーティーを追うわ」

「えぇ!?」

 アレクシエルの興味は、トラックにあった。

 見たことの無い材質のボディ、金属ではない黒く柔らかい何かが地面と接地して走行し、一般人程度の魔力しかない人間が、実に滑らかな走行スピードで走り去った。

 あんな巨大な金属が走った、しかもコウタは言っていた、燃料は魔力ではないと。

「あり得ない、あり得ないわ……わからない」

「あ、アレクシエル教授?」

「気になる……ふふ、このあたしが理解出来ないですって? ふざけんじゃないわよ」

 理解出来ない事を理解する。

 その為なら、どんな事でもできる。

「確か、『とらっく』とか言ってたわね……待ってなさい」

 アレクシエルの驚きは、この程度では終わらなかった。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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