表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第12章・トラック野郎と勇者のお礼』
154/273

154・トラック野郎、アレクシエルと話す

 調整機が置いてある小部屋の壁際に、安っぽい椅子とテーブルが設置されている。

 俺とアレクシエルは椅子に座り、眼鏡秘書リーンベルさんが淹れてくれたお茶を飲みながら待つことにした。

「それにしても、あのコハクとかいう子······めっちゃ怖いわね。まさかリーンベルに歯向かうなんて思わなかったわ」

「普段は大人しくて優しいんだけどな、俺の買ってやった武具を貶したお前が悪いんだからな」

「ふ、ふん······どうせ暴れてもリーンベルがいるから問題ないもん」

 いやいや、コハクも相当強いぞ。

 リーンベルさんを見ると、困ったように微笑んだ。

 ピシッとした黒のスーツに白いワイシャツ、長い黒髪を後頭部でお団子にまとめてる。オシャレなデザインの眼鏡をかけ、前髪の一部に紫のメッシュを入れて個性を出していた。

「あの御方は恐ろしい強さをお持ちですね、私でも勝てるかどうかわかりません」

「なーに言ってんのよ。あんたが負けるわけないわ」

「その根拠は何なんだよ······」

 するとアレクシエルは、自慢げに言った。

「だってリーンベルは『七色の冒険者アルコバレーノ』の一人で『紫』を司る、『紫影暗器ヴァイオレットアサシンリーンベル』なのよ? まぁ今はあたしの護衛兼御世話係だけどね」

 驚く俺を見て、リーンベルさんは恥ずかしそうに一礼した。




 秘書のお姉さんは、まさかの『七色の冒険者アルコバレーノ』だった。

 リーンベルさんは小さな皿にクッキーを盛りしろ丸の前に出す。するとしろ丸は美味しそうに食べていた。

「まぁいいわ。そういえば、調整が終わったらダンジョンに行くんだっけ?」

「ああ。災害級危険種が勇者パーティーをご指名なんだとさ」

「ふーん。でもまぁ、あたしの《勇者武具ヒーローレガリア》に勝てるモンスターなんて存在しないけどね」

 どうやら、武具の正式名称らしいな。カッコいいじゃねーか。

 すると今度は部屋にビープ音が鳴り響く。

「終わったようね。さーてチェックチェック」

 アレクシエルが調整機に手をかざすと幾何学模様が光り、ベッドがゆっくりと動き出して立ち上がる。やっべぇ、月詠達の裸が丸見えだ。

「やっぱ勇者の魔力量はとんでもないわね、普通の魔術師が束になっても敵わないわ」

 アレクシエルが幾何学模様にタッチしてる。俺には理解不能だがこれが調整らしい。

「さーて調整終わり、覚醒させるわよ」

 ベッドは再度横になり、幾何学模様が消える。

 するとみんなが目を覚まし起き上がる。うぉぉ、一六歳のハダカが丸見えですよ。

「う·········おおおっ‼ うっひょーっ‼」

「う、ううん」

「ふぁ······よく眠りました」

「ん〜、おわったの?」

 太陽は興奮して女の子達をガン見してる。おいおい、股間のマグナムを隠せよみっともない。

「うぅ〜ん、ご主人さまぁ······」

 コハクはまだ寝てる。

 可愛いけどおっぱいを隠しなさい。太陽のヤツにガン見されてるぞ。

「しろ丸、頼む」

『うなーお』

 コハクはしろ丸に任せ、俺は一度部屋を出た。

 太陽の断末魔の叫びが響いたのは、それからすぐ後だった。




 最初の居間で待っていると、着替えを済ませた勇者達とコハクが戻ってきた。ちゃんと武具も装備してる。

 太陽の顔がボコボコなのは、月詠に殴られたからだろう。

 アレクシエルとリーンベルさんも戻り、説明を開始した。

「調整は終わり。これでレガリアとあんた達の身体は完全に同調したわ。鎧身の負担も減ったし装着時間も伸びたはずよ」

「あの、アクセルトリガーは?」

「アクセルトリガー? ああ、《聖武具展開補助装置》ね。あれの性能はレガリアの同調に比例するから問題ないわ。むしろ使いやすくなったはずよ」

「おー、スゲぇな」

「それとグラムガインの同調も完璧よ。調整でいくつか使用不可になってた武装を開放したし、身体にかかる負担もだいぶ減らせたから、じゃんじゃん使用して構わないわ」

「ありがとう」

 コハクは素直に礼を言った。

 とりあえず、コハクの身体に異常はないみたいで良かったぜ。じゃんじゃん使用しろってのもアレだが。

 太陽達は立ち上がり、アレクシエルに頭を下げる。

「アレクシエル博士、ありがとうございました」

「当然よ。天才のあたしが作った武具ですもの、あたしの調整でより完璧になったわ」

 アレクシエルは平べったい胸を自慢げに張る。

 ここで、これからの方針を月詠が話す。

「さて、武具の調整が終わったから、次はダンジョンね」

「ああ、災害級のヤツが待ってるぜ。まぁ今のオレらの敵じゃねーけどな」

「太陽くん、油断大敵ですよ?」

「わーってるよ」

「えへへ、でも試してみたいよね〜」

「ああ、そうだな」

 勇者パーティーが盛り上がっていると、話を聞いていたコハクが言う。

「ダンジョン······」

「コハク?」

「ご主人様、わたしもダンジョンに入りたい」

「え」

 実は、そんな事を言い出す気はしてた。

 俺の目的は勇者パーティーの送迎と、コハクの武具について調べる事。それが終わった今、勇者達がダンジョンに潜ってる間、ダンジョン前にトラックを止めてのんびり待ってればいい。

 だが、災害級がいるダンジョン······コハクが気にならないはずがない。

「いや待てコハク、勇者パーティーの邪魔になるし、俺と一緒に大人しく待ってよう」

「ご主人様、おねがい」

「んだよおっさん、そんなの気にすんなよ、コハクさんなら大歓迎だぜ」

 こら太陽、余計な事を言うな。

 するとここで追撃。

「確かに、コハクさんの強さなら。むしろこちらからお願いしたいですね、相手は災害級ですし、戦力が多くて困ることはありません」

「そうですね。ダンジョンではどんな危険があるかわかりませんし······」

「コハクさん、一緒にがんばろーっ」

 あ、これ拒否不可能なパターンだ。




 事態は、最悪な展開に進んでいた。

「ご主人様ご主人様、ご主人様もダンジョンに入ろう」

「は?」

「お、そりゃいいな。おっさんもたまには身体を動かした方がいいぜ」

「おいこら」

「せっかくですし、一緒にどうですか? 道中の安全はあたし達が確保しますので」

「え、いや、その」

「ふふふ、日常から離れた冒険は、いい刺激になりますよ?」

「あの」

「よーし、お兄さんとコハクさんと一緒に冒険だーっ!!」

「ちょ」

 俺は、命の危機に進んでいた。

 ちょい待て、俺が、生身の俺がダンジョンだと?

 俺の人生に不必要な『刺激』を求めてダンジョンに入る?

「あ、あのさ、ダンジョンってトラックは······」

「けっこう入り組んでるから入れねーよ。でも大丈夫だって、オレらがいるからさ」

 あ、やっぱこれ拒否不可能なパターンだ。

 するとアレクシエルがニヤニヤしながら言う。

「くくく、おっさん、死なないでねー」

「うるせぇ!!」

 こうして、俺は人生初のダンジョンに潜ることになった。

 もう一度言う、事態は最悪な展開に進んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ