15・トラック野郎、青パンツと話す
アップグレードを終えた俺は、青パンツのいるベッドルームへ向かう。
女の子が寝てる部屋だと思うと緊張するね。しかも裸体もしっかり拝んじゃいましたからね。手のひらサイズおっぱいにスベスベつるつるの肌を余すことなく……って、俺は変態か。
「コウタさん、シャイニーブルー様をどうするんですか?」
「とりあえず話を聞いて、ゼニモウケに帰るなら送っていこう。帰り道の途中で降りるなら降ろせばいいしな」
「わかりました」
ミレイナはにっこり微笑む。やっぱ天使だわこの子。
ベッドルームへは居住ルームを抜けた先にあるので、どうしても新しい設備が目に入る。
「おぉぉっ!! やったぜ!!」
「あ、あの?」
「ふっふっふ、見ろよミレイナ、テレビだぜ!!」
「は、はぁ…………てれ、び?」
居住ルームの一角には、壁掛けテレビとソファが鎮座してる。
ここで酒とツマミをいただきながら、高校野球でも見ますかね……それとも、ミレイナと一緒にクイズ番組でも見ながらキャッキャウフフと……ヤバいな、異世界に来てから俺の欲望が増してる。
だってしょうがないじゃん!! 異世界で俺を慕ってくれる可愛いJKがいるんだぜ!? しかも警察なんて存在しないから(多分)目一杯かわいがりたいし!! この世界じゃ話しかけたくらいで通報されないだろ!?
「あ、あの」
「ふぅ……すまんミレイナ、行こうか」
「は、はい」
ヤバいな、いつかミレイナに手を出しちまうかも。
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ベッドルームはそんなに広くない。四畳半の間取りにベッドとサイドテーブルが置いてあるだけだ。設備を入れれば広くなるのかな。今度ミニ冷蔵庫入れてみるか。
そんな部屋のベッドの上で、シャイニーブルーは上体を起こしていた。ボンヤリとして俯いてる。心ここにあらずって感じだな。肩もピクピク動いてるし······どうしたんだ?
ちなみに着てるのはミレイナの寝間着。胸がスカスカなのは目の錯覚だと思う。
「え〜と、大丈夫か?」
「·········」
「お〜い」
「······ふぇ······」
「あ、あの、シャイニーブルー様?」
何だろう? 何か様子がおかしいな。なんか堪えてるような、徐々に顔が歪んでいく。もしかして毒が残ってるのか⁉
「ふぇっっっくしょんっ‼······あーやっと出た·······」
·········何だ、くしゃみを我慢してただけか。っておい。
余りの図太さにビックリだよ。ミレイナもポカンとしてるしさ、ここでようやく俺たちに気が付いた。
ベッドから飛び起きると、俺に詰め寄ってきた。
「あんたたちがアタシを助けて······あ、ドラゴンは⁉ どうやって逃げたの⁉ ここはドコよっ⁉」
「落ち着け落ち着けっ⁉ ゆっくり説明すっから1個ずつだ‼」
最初の清楚なお嬢様イメージは消え去った。何というか、じゃじゃ馬なお嬢様って感じがする。だけどそんなギャップも可愛いね。
「まず、ドラゴンはやっつけた」
「·········はっ」
この野郎、鼻で笑いやがった。
「あのね、ヴェノムドラゴンは猛毒を持つ超危険種のモンスターなのよ? アタシたち『七色の冒険者』ですら単体じゃ勝ち目の薄い相手を、あんたがやっつけたって?」
「·········」
この野郎、なんかムカつく。
それに、単体じゃ勝ち目の薄い相手に何で1人で立ち向かったんだよ。せっかくだし聞いてやる。
「あ、あの······ドラゴンを倒したのはホントです。そのおかげでシャイニーブルー様を侵してた毒を治療出来たんです。信じて頂けませんか······?」
あらら、ミレイナちゃんに先を越された。健気でかわいいなぁ。おずおずとだけど、しっかり言ってくれた。
「······まぁいいわ。事実、こうして毒は消えてるし。その·········助けてくれてありがとう」
「ちょっと言い方が引っかかるけど、助かったならいいや。気にすんな」
「ふん······あっ⁉ アタシの服と装備はっ⁉」
「服は洗濯中、装備は居住ルームに置いてある。安心しろよ、ちゃーんとパンツも洗ってるから」
「へ?······あぁっ⁉」
するとシャイニーブルーは下半身を両手で押さえて蹲った。どうやら気付いたようだな······キサマは今、ノーパンという事実に‼
「あ、アンタ······アタシに何を······」
「いや何もしてねーよ。アホか」
「あの、汚れ落としや着替えは私がやりました」
「今は乾燥中だから、服はもう少し待ってろ。それと俺たちはゼニモウケに帰るけど、お前はどうする? 途中までなら送ってやれるけど」
「ゼニモウケ······アタシも帰る。それとここドコよ?」
「ここはトラックの中。まぁ·········スゴい馬車だ」
「はぁ?」
うーん、何て説明すりゃいいんだ?
まぁ実際に降りて見てもらうのが1番か。ドラゴンも荷台に積んであるし、これで信じてもらえるだろ。
「とりあえず外へ出ようぜ」
シャイニーブルーにはドラゴン、ミレイナにはユニックフォームを見てもらいたい。それが終わったらとりあえず出発しよう。
というわけで、みんなで外へ。
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「わぁ〜、形が変わってますっ。なんかスッキリしましたね、それに······この長いのは何ですか?」
「ドっ、ドドドドドドドドドドドドっ⁉」
ミレイナはユニックフォームに驚きつつ首を傾げ、クレーン部分を見てる。シャイニーブルーはジョジョみたいな擬音を出して固まってる。なんか面白いな。
「ドラゴンっ⁉ うっそホントに〜〜っ⁉」
「だから言ったろ、マジだって」
「そ、それに何この鉄のカタマリはっ⁉ 硬いし太いし長いしっ、スッゴ〜〜いっ‼」
おいその言い方やめろ、なんか照れるだろ。
シャイニーブルーは首チョンパドラゴンを見て驚きつつ、ユニック車を見てはコンコンと叩いてる。まぁオーバーテクノロジーだし、気になるよね。
「さーて、後はこいつを換金する。そして念願の事務所設立だっ‼」
「はいっ‼」
「事務所?」
「ああ。運送屋の事務所。土地は買ったから建物を建てるんだ。そんでこのトラックを使って運送屋を始めるんだ‼」
「ふ〜ん······まぁ、ドラゴンを倒したのはあんただからいいけど、ギルドに報告はさせてもらうわ」
あぁ、ギルドに報告した方がいいってミレイナも言ってたな。せっかくだしシャイニーブルーに任せよう。
「それと、助けてくれたお礼もしなきゃだし······このドラゴンの討伐報酬はあんたたちにあげる。アタシが討伐したことにすれば討伐報酬は4000万······開業資金にでもしたら?」
「·········え、マジで?」
つまり素材で5000万、討伐報酬で4000万の儲け。
家を建てるのにいくら掛かるか知らんけど、それでもかなり残るのは間違いない。運送屋を始めて軌道に乗るまでの資金に当てればいい。
「で、ですが······そんな大金、もらうわけには······」
ありゃ、ミレイナは遠慮してる。
まぁ普通はそうだな。そんな大金おいそれと頂けるワケがない。ちょっと調子に乗ってしまった。
「いいのよ。命の価値はコインなんかじゃ計れない。だからこれは正当な報酬······ね?」
「っ‼ は、はいぃ······」
この野郎。ミレイナにウィンクしやがった。しかもミレイナも顔を赤らめて縮こまるし。くぅぅ、なんか悔しい。しかもシャイニーブルーのやつ可愛い。
「よ、よし。まずは森を出て街道に出よう。その間にミレイナ、昼メシを頼んでいいか?」
「お任せ下さいっ‼ 腕によりをかけて作りますね‼」
「アタシは?」
「寝ててもいいけど、よかったら助手席に座るか?」
「なんか面白そうね、座る」
ミレイナの席だが譲ろう。そういえばトラックって2人乗りだな。暇なとき追加装備でシートが購入出来ないかチェックしてみよう。デコトラ化も気になるし。
でも、まずは森を出て昼メシかな。