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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第12章・トラック野郎と勇者のお礼』
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148・トラック野郎、コハクと月詠

 産業都市スゲーダロは、ゼニモウケから大体一週間くらいの距離。というかゼニモウケがこの世界の中心に位置する商業都市だから、どこへ行くのも距離が同じくらいだ。ホントに助かるね、神様どうもありがとう。

 助手席にはコハクがいて、さっきまで寝てたが今は起きてオヤツのシュークリームをモグモグ食べている。

 ちなみにスゲーダロのルートは、『タダッピロ大平原』を抜けて『タケー山道』を越えた先にある。もう名前にはツッコまない事にした。

 現在、タダッピロ大平原へ続く街道を走ってる。なんとか今日中には入口近くまで進む予定だ。

「ご主人様、モンスターがいたら戦わせて」

「ん、でも危な·········いや、コハクなら平気か」

 コハクは強い。 

 並大抵のモンスターは歯が立たないだろう。

「身体が鈍るとご主人様を守れない。任せて」

「わかった、でも危なくなったらすぐ逃げろよ」

「うん」

 コハクは笑顔で頷く。やっぱ可愛いな。

 ちなみに、太陽達は居住ルームでのんびりしてる。

「あ、そうだ。コンビニやゲーセンの説明しとくか」

 待ってるのもヒマだろうし、奢りとはいかないがコンビニで買い物したり、ゲーセンで遊ぶのもいいだろう。

 俺は街道脇にトラックを停車させ、居住ルームへ。コハクは再び昼寝を始めた。

「あれ、どうしたおっさん」

「いや、ただ待ってるのもヒマだろ? ちょっと来いよ」

 四人は首を傾げ、居住ルーム奥の通路へ案内する。

「お前ら、金は持ってるか?」

「ああ、王国からの支給金があるぜ」

「そっか、なら腹減ったり暇だったらここを好きに使え」

「へ?」

 案内した場所はコンビニ。

 日本のどこにでもあるような、一般的なコンビニだ。

「な、なんだこれ······夢か?」

「う、うそ······」

「まぁまぁ、何という事でしょう······」

「わぁ、なんかいいニオイするー」

 そりゃコンビニおでんだな。さすがクリス、いい嗅覚だ。

 俺はお手本でコーヒーとジュースを買う。

「とまぁ、こんな感じだ。さすがに奢ってはやれないけど、好きな物があったら買っていけ」

「うぉぉぉぉーーーっ‼ すっげぇぇぇぇっ‼」

「こ、これがコウタさんのチートスキル······」

 四人はさっそくコンビニ内を物色する。

 太陽はカゴいっぱいにお菓子を詰め込み、月詠は化粧水や女性が月一でくるアレ用品、煌星も似たようなラインナップで、クリスはおでんや肉まんを買っていた。

「おっさん最強だな!! マジで羨ましいぜ!!」

「ふ、驚くのはまだ早いぜ」

 ポテチにかぶりつく太陽を押さえ、同通路内にある別室へ。

「ヒマならここで遊んでいけ、一通りのラインナップはあるからよ」

「うっそだろ······」

「ゲーム、センター?」

「わぁ、わたくし初めて来ましたわ」

「な、なんかキラキラしてやかましいー」

 勇者パーティーの反応を楽しみつつ中を案内すると、太陽達はさっそく遊び始めた。

 太陽は格闘ゲームで月詠と対戦し、煌星とクリスはクレーンゲームのしろ丸クッションに狙いを定めた。

 さて、案内も終わったし運転に戻りますか。




 運転席に戻ると、そこは修羅の国だった。

「え、なにこれ」

 助手席にはしろ丸を抱きしめて寝てるコハク、そしてフロントガラスの向こう側には、ガラの悪そうな集団。

 手には剣だの斧だの持ってるし、フロントガラス前に五人、運転席と助手席側のドアにも五人ほど張り付いてる。

 究極に嫌な予感がすると、タマが言った。

『社長。盗賊団に囲まれました。対応をお願いします』

「ととと、盗賊団っ⁉ マジかよ······」

「うぅ〜ん······」

 寝ていたコハクが起きるとコシコシと目を擦る。なんか猫みたいで可愛い。じゃなくて、盗賊団だぞ。

「ご主人様、どうしたの?」

「こ、コハク、盗賊団に囲まれてる。落ち着け落ち着け」

「盗賊団? あ、ホントだ」

 めっちゃ落ち着いてるね。俺が落ち着けよ。

 コハクは軽く伸びをすると、俺に向かって微笑んだ。

「ちょっとやっつける。寝起きにはちょうどいい」

「え」

 コハクは、何の迷いもなくドアを開けた。

 するとドア前にいた盗賊が倒れ、コハクはあっさりと囲まれる。

 盗賊団はコハクの身体を舐め回すように見つめ、何人かは舌なめずりまでしてる。この野郎ども、ふざけやがって。

「くぁ······」

 だが、コハクは興味なさそうに欠伸をした。

 その態度がナメられてると感じたのか、盗賊達は武器を構える。

「このガキ、ナメんじゃねぇぞ!!」

「たっぷり楽しんだあとは売り飛ばしてやる」

「へへ、いい身体してやがる、おい、あんまり傷付けんなよ」

 クソみたいな会話をしながら、盗賊団は徐々にコハクとの距離を詰める。それでもコハクの余裕は変わらなかった。

「ヤッちまえっ!!」

 盗賊団のリーダーらしき男の掛け声と同時に、コハクを囲んでいた盗賊団の首から血が吹き出した。

「な、なんだ? テメェ何しやがった!!」

「回転蹴り」

 コハクは、円形に詰め寄る盗賊団に対し、グリーブの踵に内蔵されてる『飛竜爪』を展開して回転蹴りを繰り出した。

 つまりコハクの間合いに入ったと同時に絶命。容赦ねーな。

 あとはもう、コハクのステージだった。

 両手の『龍虎爪』で盗賊を切り刻み、膝の『龍杭』で盗賊の顎に膝蹴りを食らわせ、剣を振り上げる盗賊に対し肘の『竜剣』で受け止めカウンターで爪を食らわせた。

「う、うわぁ······」

『素晴らしい戦闘力です』

 タマも絶賛してる。こんなの初めてだ。

 あっという間に盗賊のリーダーだけになり、リーダーはやぶれかぶれで大斧を振り上げコハクへ突進してきた。

「必殺」

 コハクは両踵の『飛竜爪』を展開し、向かってくるリーダーに向けて正面から突進する。

「はっ!!」

 そして大ジャンプ。

 踵落としのような体制になり、そのままリーダーの背中から心臓を狙い、片足の踵の刃を突き刺した。

「ぐ、ぉぉぉ······」

「やぁっ!!」

 そのままリーダーの身体を蹴り回転ジャンプで距離を取ると、盗賊団のリーダーはフラフラとしながら倒れ絶命した。

 カミキリムシのバイク乗りみたいなキックだ。まさかリアルで見れるとは。

「必殺・『飛竜心空殺』」

 おいおい、コハクのやついつの間にこんな殺人技を。

 嬉しそうに助手席に戻り報告する。

「ご主人様ご主人様、全員倒したよ」

「お、おお、すげーな」

「えへへ」

 俺は頭を突き出してくるコハクをなでると、コハクは猫みたいにウニャンと鳴いた。

 そういやコハク、憲兵隊三〇人殴り倒したんだっけ。盗賊団なんて相手にもならないな。 

 死体はモンスターが食べるから放っておいていいらしい。厄介事になる前に、この場から離れる事にした。

 人生初の盗賊団は、あまりにも不憫だった。




 それから特に問題なく『タダッピロ大平原』の入口までやって来た。

 今日はここで一泊し、明日から大平原を進む。  

 ちなみに、食事は月詠と煌星が作ってくれた。なんでも勇者パーティーの食事は交代制で、中でも月詠が料理上手らしい。

 食事が終わり、さっきの盗賊団の事を話した。

「マジかよ、悪いおっさん、オレ達遊んでばっかで······」

「気にすんな、コハクが瞬殺したからな」

 すると、月詠がコハクを見て聞いた。

「·········あの、コハクさん、コハクさんは格闘家なんですよね?」

「うん」

「······そう、ですか」

「?」

 コハクは首を傾げるが、長い付き合いの太陽は月詠が何を言いたいのか瞬時に理解した。

「コハクさん、月詠は是非とも手合わせしたいそうですよ」

「な······ちょ、太陽!!」

「バーカ、何年の付き合いだと思ってんだよ。お前がオレの事をわかるように、オレもお前の顔見れば何考えてるかわかるっての」

「な、ば、バカ!!」

「うぐぇっ⁉」

 月詠は真っ赤になり太陽の首を締め、慌てた煌星とクリスが月詠を宥める。するとコハクが言った。

「じゃあ、戦う?」

「え······」

「明日戦おう。でも、わたしは手加減出来ない、やるなら本気で」

「······」

 武闘家としての血が騒ぐのか、月詠の目に炎が灯る。

 コハクと月詠、どっちが強いのか俺も気になるな。

「そうだな、タダッピロ大平原は広いみたいだし、思い切り戦っても問題ないだろ。せっかくだしやってみたらどうだ?」

 俺の一言で、月詠の気持ちは決まったようだ。

「······わかりました。コハクさん、手合わせ願います」

「うん、楽しみ」

 というわけで、コハク対月詠の模擬戦が決まった。

 場所はタダッピロ大平原、時間はお昼前くらい。

 さーて、どっちが強いのかね。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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