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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第12章・トラック野郎と勇者のお礼』
144/273

144・トラック野郎、いきなりの来客

「よう、おっさん‼」

 そいつは、突然やって来た。

 黄金の軽鎧に赤いマント、腰には最新式の聖剣をぶら下げた、俺と同じ日本出身でこの世界に召喚された勇者、天空寺太陽だ。

 配達が終わり午後の書類作業中、いきなりやって来た。

「た、太陽?」

「へぇ〜、ここがおっさんの会社かぁ。広いしキレイだしいい感じじゃん」

 キョロキョロしながらカウンターの座布団で寝てるしろ丸をフカフカと撫でてる。おいおい、なんでここに勇者サマがいるんだよ。

 再びドアが開くと、残りのメンバーが入ってきた。

「こら太陽、毎回毎回あんたは先に行くなっての‼」

 一人目はショートポニーの少女、獅子神月詠。

 スレンダーなスタイルで、服装はショートパンツにジャケット、細い生足を見せつけてる。

「まぁまぁ月詠ちゃん」

 二人目はゆるふわウェーブの少女、延寿堂煌星。

 フリルの付いたドレスみたいな服を着て、腰には矢筒に背中には弓矢を背負ってる。

「あ、しろ丸だ、久しぶりー」

 最後はロリっ子金髪黒服シスターのクリス・エレイソン。

 背中には装飾された杖を背負い、カウンターのしろ丸に一直線だ。

「あれ、ウィンクは居ないのか?」

「ああ、ちょっと用事で里帰りしてる」

 もう一人、蒼髪蒼目の少女ウィンクブルーが居たんだけど、里帰りでいないとは。シャイニーに会わせてみたかったな。

 とにかく、なんでここに勇者パーティーが?




 仕事を少しだけ早めに切り上げ、勇者パーティーがここに来た理由を聞くことにした。

 あまり使ってない応接間に勇者パーティーを案内し、ミレイナがお茶とお菓子を出す。

 俺とミレイナ、シャイニーとキリエ、コハクとしろ丸ももちろん一緒に話を聞く。また厄介事の可能性が高いからな。

 まずは、ここに来た理由を聞いてみた。

「おっさんにお礼をしに来たんだ」

「お礼って、ああ、ホーリーシットで······」

 クリスを助け届けた件か。

 律儀というか何というか、気にしなくてもいいのにな。

「と言うわけでおっさん、ダンジョンに行こうぜ」

「···············は?」

 意味不明。

 ダンジョン? ダンジョンって、あのダンジョン?  

 ロープレとかでお馴染みのダンジョン? お礼は?

 完全に混乱した俺は首をかしげ、深いため息を吐いた月詠が補足した。

「申し訳ありません、あたしが説明します」

 マジで頼む、意味わからんぞ。

 太陽は煌星とクリスに押さえられ、月詠が話し出す。

「実は私達、任務と武具の整備点検と調整のために、産業都市スゲーダロに向かうんです」

「産業都市スゲーダロ······」

 たびたび名前は出てたけど、まだ行ったことはない。

「まず、オレサンジョウ王国の諜報部が入手した情報で、スゲーダロの近くに新しいダンジョンが発見されたんです。あたし達の任務はそこの調査なんです」

 すると疑問に思ったのかシャイニーが聞く。

「ダンジョンの調査? おかしいわね、フツーは冒険者の仕事じゃないの?」

「本来ならそうでしょうけど、ダンジョンに潜った先発隊がとんでもないモンスターと出くわしたんです」

「とんでもないモンスター?」

「はい。そのモンスターは人語を喋り、先発隊にあたし達勇者パーティーをダンジョンの最下層に来るように伝えたんです」

 人語を喋るモンスター······まさか。

 俺の嫌な予感は絶対に当たる。

「相手は『朱雀王アルマーチェ』の眷属であり『六王獣』の一体である『夜翔カイム』と名乗りました」

 まさかの六王獣かよ。

 それと、俺へのお礼がどう繋がるんだ?

「コウタさんにはあたし達をスゲーダロまで送って貰いたいんです。報酬はもちろん、ダンジョンで見つけた財宝は全てコウタさんに進呈します」

「ま、マジで?」

「はい。誰も踏み込んでいないダンジョンなので、宝石や貴重な財宝がたくさん出てくると思います」

 なーるほど。それがお礼か。

 ぶっちゃけお金は要らない、財宝興味ない。でも、こいつらなりに俺やみんなにお礼をしたい気持ちを無下にするのは悪い気がする。

 それに、スゲーダロへ行くって事は、また休業しなくちゃいけないのか?

 ゼニモウケ・フードフェスタが近く、運送の依頼が立て込んでいる中での休業は、信用問題に繋がる。ここで会社を休むのは流石にマズイな······。

 すると、意外な声が上がる。

「あ、アタシはパス。留守番してるわ」

 シャイニーが、申し訳なさそうに手を上げた。

「え、な、なんでだよ?」

「······今のアタシじゃ戦力になれないしね。ダンジョンに興味はあるけど、武器も防具もないアタシは役に立てない。だったらこっちで仕事をしてるわ」

「あ······」

 そっか、シャイニーの愛剣は壊れたんだ。

 砕けた剣の欠片は供養したらしく、今のシャイニーはホーリーシットで買った鉄の双剣を使ってる。もちろん仮の武器らしく、本気を出すことは出来ないらしい。

「·········では、こうしましょう。私とミレイナ、シャイニーが会社に残り通常業務を、社長とコハクは勇者パーティーと共にスゲーダロへ向かう。どうでしょうか」

「私はそれで構いません、今こちらの仕事に穴を開けるわけにはいきませんしね。それにエブリーの運転はシャイニーにも任せられますから」

「そーゆーこと、コハクはそれでいい?」

「うん、わかった。ご主人様はわたしが守る」

 マジかよ、また俺を置いて決まってしまった。

 でもまぁそれもいい。それに、スゲーダロに向かうなら頼みたい事もある。

「わかった、それで行こう。それと、太陽達に頼みたい事があるんだ」

「ん、なんだよ?」

「スゲーダロにはダンジョン以外にも武具を調整してもらうんだよな? そこでコハクの武具を見てもらいたいんだ」

「ご主人様?」

 そう、コハクの武具も勇者パーティーと同じ技術が使われてる。コハクは平気そうだが、身体にどんな負担が掛かってるかちゃんと調べてもらった方がいい。

「あ、紹介してなかったな、この子はコハク、ウチの新しい従業員だ」

「よろしくね」

 ペコリと頭を下げるコハク。

 クリスから話は聞いていたみたいだし、紹介はこれでいいだろう。

「へへ、何だかんだ言っても、おっさんも美少女好きじゃん。なんだよご主人様って」

「うっせ、お前と一緒にすんなっての」

 マジでそう思う、でも否定出来ない。俺は別にハーレムなんて考えてないからな。

 すると月詠が不思議そうに質問する。

「あの、コハクさんの武具って?」

「これ」

 コハクは仕事中は車内に、仕事終わりには必ず装備する武具を勇者パーティーに見せる。お馴染みの群青色に黄金の稲妻ラインが入った篭手とグリーブだ。

 立ち上がり、腕をクロスして言う。

「『獣甲じゅうこう』」

 ドロリと武具が溶け、全身を鎧が包み込み、龍と虎を組み合わせた獣のような鎧へ変身した。

「な······嘘だろ⁉」

「が、鎧身形態⁉」

「まぁ······わたくし達以外にも、聖剣の武具を?」

「すっごーい、コハクさんカッコいい!!」

 多少は見慣れたが、やっぱカッコいいな。

 コハクは鎧のままソファに座る。おいおい邪魔だぞ。

「武器屋でもらったんだけど、どうやら大昔の勇者が使っていた武具らしいんだ。モンスターと戦ったらこの姿に変身したんだと」

「これは調査の必要がありますね。わかりました、コハクさんもスゲーダロへ連れていきましょう。武具を制作したアレクシエル博士なら何か知ってるかも」

「か、かっけぇ、コハクさんすげーよ」

『かっこいい?』

「ああ、サイコーだぜ!!」

 太陽とコハクは置いといて、とりあえず決まった。

 俺とコハク、ついでにしろ丸は勇者パーティーの依頼でスゲーダロへ、ミレイナとシャイニーとキリエはゼニモウケで通常業務。

 ちなみにスゲーダロにはトラックで一週間ほど、つまり最低でも二週間、用事を入れれば三週間は掛かる。

 フードフェスタには間に合いそうだけど、さっさと用事を済ませよう。

 産業都市スゲーダロか、ミレイナ達にお土産いっぱい買って行こう。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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