143・トラック野郎、ゲームで遊ぶ
コンビニで買ったお菓子を片手に、俺達はゲーセンにやって来た。
ドアを開けてはいビックリ、ミレイナ達は唖然としてたよ。
「これがゲームセンターだ。あっちがパチンコとスロット、こっちが格闘ゲームやクレーンゲーム、あっちが卓球台」
「す、すごいキラキラ光ってます」
「なにこの音楽? あとキラキラに、へんな金属は」
「恐ろしい技術ですね······」
「まぶしー」
『うなーお』
さて、それぞれゲームを説明してやるか。
「一通り説明するよ、まずはクレーンゲームから行くか」
クレーンゲーム筐体は五台ある。
ぬいぐるみ系とお菓子系などで、どれも面白そうだ。
とりあえず、しろ丸みたいな犬のフカフカクッションの筐体を選び、百コインを投入した。
ちなみに、ご丁寧に両替機まで置いてある。
「このボタンを操作して······」
アームをボタンで操作し、しろ丸クッションに狙いを定める。
ミレイナ達は凝視してる。クレーンが気になるのか、しろ丸クッションが気になるのか。
アームは見事にクッションを掴み·······落とした。
「あぁ、失敗だ。とまぁこんな感じでアームを操作して景品を掴む遊びだ、やってみるか?」
「じゃ、じゃあ私が」
どうやらミレイナはしろ丸クッションが欲しいようだ。
小銭入れからコインを出し筐体へ入れ、俺のやったようにアームを操作する。だが、クッションは掴めたがポロリと落ちた。
「あぁっ、も、もう一度‼」
ミレイナは再度コインを投入。
熱中してるしここは邪魔しないでおくか。
「ご主人様ご主人様、あれなに?」
「ん、あれは卓球台だ。やってみるか?」
「うん」
コハクは卓球台に興味があるらしい。
すると、シャイニーも付いてきた。
「あれ、キリエは?」
「あそこよ」
シャイニーが指差した場所には、怖いオーラを漂わせてミレイナと共にクレーンゲームに熱中するキリエがいた。狙いは色違いのしろ丸クッションらしい。
「あの可愛いクッションが欲しいみたい。ま、アタシはしろ丸がいるから要らないけどね」
『なおー』
シャイニーはしろ丸を抱き締める。
相変わらずしろ丸は可愛いな。フカフカモコモコした生のクッションだ。
卓球台は二台、壁際にラケットやピンポン玉が置いてある。
シェイクハンドにペンハンドのラケットに、なんと室内用シューズまで置いてある。
「いいか、これはラケットでピンポン玉を打ち返すゲームだ。ミスしたら相手に一ポイントでサーブは交換、先に21ポイント先取した方の勝ちだ。シャイニー、そっちに立って」
シャイニーを相手にピンポンを打つ。ちなみに俺は中学時代に卓球部に所属してた。
シャイニーは何もせず玉を見送る。
「おい、打てよ」
「打つ? これで?」
「ああ、このネットが境界線だ。相手の陣地に玉を打って打ち返す、打ち返されたらまた打つの繰り返し、相手がミスしたら一ポイントでサーブ交換」
ま、こんなルールでいいだろう。
シャイニーは最初こそぎこちないが、運動神経は抜群なのですぐにラリーが出来るようになった。
「ご主人様ご主人様、わたしもやりたい」
「いいぞ、ほら」
俺はラケットをコハクに渡す。
当然だが、自然とシャイニー対コハクになる。
「くくく、コハク······勝負よ」
「いいよ。動きは見たからもうわかった」
見ただけでわかるのかよ。
まずはシャイニーのサーブ。
「しゃあっ‼」
「えい」
「んなっ⁉」
コハクは、いとも簡単にシャイニーのサーブを打ち返した。
しかもドヤ顔······ヤバいなこりゃ。
「じょ、上等‼ ぶっ潰す‼」
「シャイニー、わたしには勝てないよ」
こうして、激戦が始まった。
ミレイナとキリエはクレーンに夢中、シャイニーとコハクは卓球に夢中になっていた。
くくく、俺は念願のパチンコ筐体へ行きますかね。
『なおー』
「おっとそうだ、待ってろよ」
でもその前に、コンビニで買ったビーフジャーキーをしろ丸にあげよう。
俺はしろ丸を抱えて壁際の椅子に座り、コンビニ袋からビーフジャーキーを取り出す。
「ほら、美味いぞ」
『なうなう』
俺の膝上でビーフジャーキーを食べるしろ丸は可愛いね。
思わず頭をフカフカ撫でてしまう。あぁ癒やされる。
「よし、行くぞしろ丸」
『なう?』
しろ丸を抱え、いよいよパチンコ筐体へ。
アニメ物や特撮系の筐体に有名人系の筐体などが並んでる。待て待て、落ち着け落ち着け。ニヤニヤするのはまだ早い。
とりあえずアニメ物の筐体に座り、様子見で千コイン札を入れる。すると玉がジャラジャラ出てきた。
懐かしい、休日の楽しみの一つであるパチンコがトラック内で出来るなんて。
俺は右手をコキコキ鳴らし、ハンドルに手を添えた。
気が付くと、サイフの中の札は消えていた。
ミレイナとキリエはしろ丸クッションを抱き締め、シャイニーとコハクは肩で息をして床に突っ伏している。
俺は大負けしていた。
久しぶりのパチンコなのにそりゃないぜ。
「今日はこれくらいにするか」
「はい、うふふ、ふかふかです」
「ここは欲望に負けると恐ろしい事になりますね······気を付けましょう」
「こ、コハク、明日、明日もう一度勝負よ······」
「いいよ、はふぅ、疲れた」
「せっかくだし、みんなで温泉にでも入ったらどうだ? シャイニーとコハクは汗も掻いたしな」
我ながらナイスアイデアだ、別に変な意味はない。
すると女性陣は頷き、着替えを取って温泉へ向かった。ちなみにコハクはしろ丸を連れて行った。
俺は背伸びをしてトラック内のソファに寝転がる。
「やっぱミサイルとかレーザーとかより、こういう施設を充実させるのがいいな」
戦闘ではデコトラカイザーに変形すれば負けはない。
新しく獲得したクレーンジャケットも強いし、油断さえしなければ超危険種でも災害級危険種でも相手に出来る。
それに、シャイニーやコハクもいるし、実はとんでもない魔術の使い手のキリエもいる。はっきり言って勇者パーティーに匹敵する強さじゃね? ま、本業は運送屋だから関係ないけどな。
『なうなうなうーっ』
「こらしろ丸、待って」
「ん?·········え」
しろ丸とコハクの声が聞こえたと思った瞬間、真っ裸のコハクが俺の前を横切った。
『なうーっ』
「ダメ、ちゃんと洗う」
ナマ乳がぶるぶる揺れ、水滴がポタポタ落ちる。
上も下も丸見え、しろ丸を捕まえ小脇に抱えた。
「あ、ご主人様······ごめんなさい、床が濡れちゃった」
「え·········うん」
羞恥心が薄いのか、コハクは身体を隠そうとしていない。
濡れた琥珀色の髪に短い黄色のツノ、肩から胸の先端にかけて流れる水滴、お腹を伝って下半身に水滴が·········。
「コハクっ‼ タオルタオルっ‼ コウタさん見ちゃダメですっ‼」
タオルを巻いたミレイナの言葉にハッとなり、両手で顔を隠しソファに顔を埋めた。
「もう、ダメですよコハク。女の子がむやみに身体を見せちゃ」
「でもご主人様だよ?」
「ダメなのはダメです!!」
「んー、わかった」
「もう······ほら、戻りますよ」
「はーい」
『なーう』
二人と一匹は風呂場へ戻って行った。
「·········おぉう」
とんでもないモノを見てしまった。
コハク、とんでもないボディの持ち主だ。鍛えてるからだろうか、しなやかだけど柔らかいところは柔らかそうで······し、しまった。
「··········俺って奴は」
『社長。下半身に血液が集中』
「やめろ!! てゆーかいきなり喋んな!!」
タマを黙らせ、俺は深呼吸を繰り返した。
さっきの続きだが、忘れちゃいけない事がある。
強いのはあくまでもデコトラカイザーであり、俺自身は何の力もない一般人だ。
最初に言っておく。
今回、俺はマジで命の危機を感じた。
トラックのいない場所で、マジで死にかけた。
しかも、原因が······勇者太陽のせいでな。