142・トラック野郎、マジで大喜び
クリスやキリエの件が片付き、俺達はゼニモウケに帰ってきた。
一日休んだ後に仕事を再開し、忙しい毎日を送っている。
今日も朝からお客様の荷物を受け取り、トラックとエブリーに積み込んでいる最中だ。
「ご主人様、重い物は私に任せて」
「ああ、じゃあこの木箱を頼む」
コハクが軽々と木箱を持ち上げトラックに搬入し、俺とシャイニーは小さい荷物をせっせと運ぶ。
するとシャイニーが荷物を眺めて言う。どうやら木箱がやたら多いのが気になってるようだ、ありゃたぶん果物が満載の木箱だ。
「そっか、そろそろ『ゼニモウケ・フードフェスタ』の時期ね」
「なんだそりゃ? どこかで聞いたような……」
俺が思い出そうとしていると、シャイニーが説明してくれる。
「その名の通り、ゼニモウケで開催される食の祭典よ。様々な地域の料理の出店が並んだり、ゼニモウケ内の飲食店がスペシャルメニューを出したりする、町を挙げてのイベントなの。商人にとって稼ぎ時だし、観光客も普段の何倍も集まるし……何より、いろんな地域の料理がいっぱいあるからすっごく楽しいしお腹も膨れるサイコーなイベントよ」
「ごはん!!」
「うおっ」
コハクが目を輝かせてシャイニーに詰め寄り、シャイニーはコハクを押しのけようと頭をグイグイ押す。だが効果はないようだ。
「木箱が多いからそろそろだと思ってたわ。たぶん、町中の飲食店が新作料理を作ってるのね。フードフェスタで宣伝すれば、お店の知名度もあがるし」
「へぇ……フードフェスタか」
「食べ歩きできる料理はもちろん、デザートや珍味、ステーキ食べ放題や大食い大会なんてのも開催されたわね」
「おぉぉぉぉ……」
コハクが更にシャイニーに詰め寄るが、いい加減うっとうしくなったシャイニーは押しのけるのを止めてヘッドロックに切り替えた。
「そのうち運営委員会からチラシが届くと思うわよ」
コハクはバタバタ暴れ始めた。
一人で配達に向かい、半分ほど終わらせたところで小休憩。
お茶を飲みながら煎餅を齧っていると、何気なく思い出す。
「そういえば、最近全然アップグレードしてねぇや」
パチンコ筐体やゲーム筐体、コンビニを入れたりしてみたい。仕事が忙しくて禄にイジってないや。まぁトラックは仕事用だし、最近はモンスターとの戦闘もないし(それが普通)
休みの日にパチンコをやる······ヤバい、やっぱ筐体欲しい。
くそ、一台くらい、一台くらいは入れていいよね?
代わりにコンビニを入れてミレイナ達に利用してもらおう。うん、そうしよう。
「タマ、確か【コンビニエンスストア】は入れてなかったよな」
『肯定です』
「じゃあ入れてくれ」
ポイントは結構残ってたしな、問題ないはずだ。
『畏まりました·········設置完了』
よし、後で確認しよう。
さてさて、お次はいよいよパチンコ筐体だ。その前にポイントを確認しておくか
「へへへ、タマ、まずはポイント確認だ」
『畏まりました。ポイント表示』
「············へ?」
フロントガラスに表示されたポイントを見て、俺は驚いた。
最初に言っておく、俺のテンションは最高潮だ。
何故なら、何気なく確認したポイントがとんでもない事になっていたからである。
「ははは………ははははは」
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【通常ポイント】《1958300》
【ポイント貯金】《600000》
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こんなに増えてるのは何故か?
簡単だ、ホーリーシット軍の戦車がモンスターとしてカウントされ、二〇〇台討伐した事により莫大なポイントが入ってきたのだ。しかも一台が超危険種並のポイントだし超ウハウハだ。
やったぜ、最近は厄介事ばかりでついてなかったけど、神様は俺を見放していなかった。いい機会だ、遊戯ルームを充実させよう。
「むふふ、タマちゃんや、【遊戯ルーム】の購入画面を開いておくれ」
『畏まりました』
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【遊戯ルーム】
《ギャンブル台》
○パチンコ筐体[50000] ○スロット筐体[50000]
○ポーカー台[20000] ○ルーレット台[20000]
《スポーツ台》
○ビリヤード台[8000] ○卓球台[5000]
《ゲーム台》
○格闘ゲーム筐体[35000] ○レースゲーム筐体[35000]
○クレーンゲーム筐体[38000] ○コインゲーム筐体[25000]
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いつ見ても素晴らしいラインナップだ。神様ホントにありがとう。
まず外せないのがパチンコとスロット筐体、ゲーム台も欲しいな。ポーカーやルーレットは要らない、スポーツ台はみんなで遊べるし、卓球なら楽しめるだろう。ビリヤードはルールがよくわからん。
「よーし、パチンコ、スロット筐体と卓球台、ゲーム台全部を購入だ‼」
『畏まりました·········購入完了』
「うおっしゃぁっ‼」
ガッツポーズをかまし、急いで居住ルームへ向かう。
リビング奥の通路沿いにある透明なガラスドアを開けると、そこは天国だった。
「おぉ、おおぉ、おぉぉぉぉ······」
そこは、ゲームセンターだった。
一台かと思ったパチンコ、スロット筐体は向かい合わせに十台ほど並び、ぬいぐるみやお菓子のクレーンゲームに昔流行った格闘ゲーム各種、部屋の隅に専用の囲いが設けられ、中に卓球台や道具置き場などが設置されていた。
しかも店内はポップな音楽が流れ、いかにもなゲーセンに迷い込んだ錯覚に陥る。ここってトラックの中だからね?
「あ、あれ······涙が」
あまりの懐かしさに俺は涙を流していた。どんだけー。
帰ったらみんなに報告アンド体験してみよう。
「よっしゃァァァァァっ‼」
俺はハイテンションで残りの配達を終えた。
配達を終え会社に戻り、午後は書類整理をする。
俺はずっとハイテンションだったので、ミレイナ達が不審者を見る目で見ていたが気にならない。
「ふんふんふ〜ん、し〜ろ〜ま〜る〜っ」
『なう?』
俺のデスクの上にクッションを置き、その上でしろ丸はお昼寝をしていた。だが俺がなで回すので起こしてしまった、すまんな。
「コウタさん、どうしたんでしょうか?」
「ふん、どーせ碌でもない事よ。配達先の若妻が屈んだ瞬間に胸の谷間が見えたとか、若い冒険者のパンチラを見たとか」
「確かに、社長は飢えてるのかも知れませんね。ここは一つ私が服を脱いで······」
「わたしも、ご主人様のために手伝うよ」
「ちょ、なにバカ言ってんのよ‼」
ベイビー達、聞こえてるぜ。
確かに自分でも不審者みたいに感じる。ちゃんと話しておくか。
「いやー実はな、トラックの遊戯ルームを充実させたんだ。夕食が終わったらみんなで遊ぼうぜ」
「遊戯ルームって、確かあの透明なドアの部屋ですよね?」
「ああ、ホーリーシット軍の戦車を破壊したら破格のポイントが入ってな。おかげでいろいろなゲームを入れる事が出来た」
「戦車もモンスター扱いなのですね。ふむ、あの戦車には【龍核】が使われていました······興味深いですね」
「んな事よりゲーム? なんか面白そうね」
「卓球台もあるし、身体を動かすのにピッタリだぞ」
「たっきゅう? ご主人様、なにそれ?」
「ま、見てのお楽しみだ」
俺はしろ丸をなで回しながらみんなに言う。
みんなでゲーセン、実に楽しみだ。
夕食を終わらせ、さっさくみんなでトラックへやって来た。
ゲーセンもいいけど、まずはコンビニから確認するか。
「まずはコンビニから行くぞ」
リビングを抜けた先にある通路には、武器庫とコンビニとゲーセンがある。まずは新たに出来たガラス製自動ドアへ。
「お、これだ」
「な、なんですかこれ?」
ミレイナの疑問はさておき、俺は自動ドアの前に立つ。
自動ドアが開き中へ入ると、ピンポーンと入店の合図音が鳴り響く。
「な、なにこれ······」
「すっご······」
「明るい光、それにこの商品の数、見た事のない魔導冷蔵庫······これは、本でしょうか? ペラペラですね、それにこれは?」
「くんくん、いいニオイする」
驚いてる驚いてる。
中身はまんまコンビニ。飲食コーナーからデザート、パンやカップラーメン、お菓子にドリンク、おでんや肉まんなんかもある。何故か雑誌も取り扱ってるな、しかもトラック関係の雑誌ばかりだ。
よし、試しに買い物してみるか。
俺は入口にあったカゴを取り、缶コーヒーを何本かと煎餅の袋を入れて会計へ。
当然だが店員はいない、どうするのか。
『商品スキャン······お会計五四〇コインとなります』
「え、タマ? お前が店員なのか?」
『肯定です。お客様、カウンターの上に代金をお支払い下さい』
とりあえず千コイン札を置くと、カウンターの一部がスライドして千コイン札が飲み込まれ、再び開くとお釣りのコインが現れた。まるで銀行のATMだな。
『袋詰はセルフサービスとなっております。ありがとうございました』
すげぇ、マジですげぇよこれ。
恐ろしいチートスキルだ。まさかコンビニトラックとは。
「えー、つまり、現金があれば買い物が自由にできる。長旅でお菓子が食べたかったら好きに利用してくれ。ただし、お金は自分で出すことな」
ミレイナ達は頷くと、さっそく買い物を始めた。
ミレイナは夜食のクッキーやポテチ、シャイニーはカゴに山盛りのポッキーとカフェオレ、キリエはワインを数本とおつまみ、コハクはシュークリームとおでんと肉まんを買っていた。
俺はしろ丸用にビーフジャーキーを買う。ドッグフードばかりだと飽きるしな。
さて、お次はゲーセンと行きますか。