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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第11章・トラック野郎と神話の歌声』
141/273

141・トラック野郎、聖なる王国にさよなら

*****《コウタ視点》*****




 ヒダリの集落を出て数日後、俺達は再び聖王国へ到着した。

 ちなみに、助手席にはシャイニーが座っている。

「コウタ、この辺でいいわ」

「わかった。タマ、エブリーを出してくれ」

『畏まりました』

 聖王国入口近くの街道にトラックを止めると、その近くにエブリーが現れる。

 なんでも、壊れた武器防具の代わりを買いに行きたいらしい。キリエを迎えに行った後でもいいと思ったが、どうやら武器がないのが落ち着かない、キリエならわかってくれるだろうし、すぐに合流するからと、シャイニーに押し切られた。

 ちなみに運転はシャイニーで、相方にコハクを連れて行くらしい。なんでもゼニモウケ周辺配達時にコハクから手ほどきしてもらい、そこそこ運転出来るようになったそうだ。

「悪いわね、剣士として武器が無いのは落ち着かないのよ。キリエならわかってくれると思う」

「ああ、じゃあ後で合流するから」

「ええ」

 シャイニーが降りるとコハクも居住ルームから降りて来た。そして入れ替わりでしろ丸を抱いたミレイナが助手席へ座る。

 シャイニーが運転するエブリーは、以前のノッキングが嘘みたいに滑らかに発進した。

「武器がないと落ち着かないとはね」

「シャイニーは根っからの剣士ですからね。少しだけわかります」

 俺にはよくわからんな。

 ともかく、キリエを迎えに行くとしますかね。




 キリエには小型イヤホンを渡してるので連絡が取れる。

 タマにキリエを呼び出してもらうと驚きの情報が入った。

『現在、勇者パーティーと共に居ます。場所は······』

 なんと、太陽達と一緒らしい。

 まぁ、クリスと一緒にいるなら自然な流れだろう。

 場所は近場の宿屋で、ここ数日一緒に町を観光していたらしい。なんでも俺に礼を言いたいから留まってるとか。律儀な奴らだな、俺は何もしてないのに。

 キリエの宿泊してる宿屋へ向かい、受付で部屋の場所を聞いてドアの前へ。言うまでもないが、メンバーは俺とミレイナとしろ丸だ。

 何故か緊張しつつドアをノックする。

「キリエ、俺だ」

「どうぞ、社長、ミレイナ」

 ドアを開けると、そこはダブルルームの広い部屋だ。

 ベッドに転がるクリス、窓際の椅子に座る月詠と煌星、部屋の中央にあるソファに太陽が腰掛け、見たことの無い少女が立ち上がり俺に向かって一礼した。

「お久しぶりです社長、ミレイナ、しろ丸。すぐにお茶を淹れ」

「おっさん‼ 久しぶり‼」

 キリエの声に被せるように太陽が来た。当然ながらキリエは苛立ち太陽をジロっと見る。

「す、スンマセン」

「ま、まぁまぁキリエ。久しぶりだな太陽、元気か?」

「モチよモチ、おっさんこそどーなんだよ?」

 普通の会話だが、男同士だと気が楽だ。

 太陽もそう思ってるのか、どこか嬉しそうに見える。

「太陽、入口で喋ってないで、コウタさん達を席に案内くらいしなさいよ」

「さ、おじ様、ミレイナさん、こちらへどうぞ」

 月詠が太陽にボヤき、煌星がソファに案内してくれる。

 するとキリエが紅茶を淹れてくれた。

『なうなうー』

「あ、しろ丸、こっちおいで」

『なうー』

 しろ丸はクリスの元へちょこちょこ走り、ベッドの上に飛び乗るとクリスに甘えだす。

 それを見た月詠と煌星が目を光らせた。

「ちょ、クリス、何よその子」

「まぁまぁ、なんとまぁ可愛いらしい······」

「んふふ、すっごくフカフカして気持ちいいよー」

『うなー』

 月詠と煌星はクリスのベッドへ移動し、しろ丸に構い始めた。

 俺とミレイナは温かくその光景を見つめる。

 すると太陽が、隣にいた少女の肩に手を載せた。

「あ、そうだ紹介するぜ。この子はウィンク、オレたち勇者パーティーの新しい仲間だ」

「初めまして、ウツクシー王国主席槍士ウィンクブルーと申します。どうか私の事はウィンクとお呼び下さい」 

「ど、どうも」

「初めまして、私はミレイナです」

 蒼い髪に瞳、もしかして王族か?

 きっちりと背筋を伸ばしてソファに座る姿はなんとも凛々しい。新しいメンバーはやはり女の子だったか、太陽らしいな。

 すると、太陽が俺に聞く。

「あれ、シャイニーさんと新しい従業員の女の子は?」

「ああ、武器が壊れたとかで、新しい剣を買いに行ったよ」

 何気ない質問だが、ウィンクは敏感に反応した。

 おっと、災害級とやりあった事は内緒だっけ。しろ丸が災害級危険種だってバレるかも知れないし、バレたらどんな扱いを受けるかわからないからな。

「ふーん、まぁ仕方ねぇか。おい」

 でもまぁ、太陽はアホだから気づかないな。

 すると、月詠と煌星とクリスが集まりソファに横一列に座ると、真面目な顔で頭を下げた。

「改めて、クリスを助けてくれてありがとうございました‼」

「コウタさんがいなければ、クリスは間違いなく死んでいました」

「わたくし達、この御恩は忘れません」

「おにーさん、ミレイナさん、ホントにホントにありがとう」

「騎士として、貴方の行動に敬意と感謝を」

 一斉にお礼攻撃だ。

 流石に照れるし恥ずい、やめてくれよ。

 ミレイナも照れてるし、俺も顔が熱くなる。

「いや、やめろって、ほらよせよ」

「へへ、なんだよおっさん、顔赤いぞ?」

 くっそこの野郎、ぶん殴ってやろうか。

 すると月詠が言う。

「あたし達、これからオレサンジョウ王国に帰還します。どうしてもお礼が言いたくて······」

「え、今日?」

「はい。災害級討伐の情報も入っているかもしれないし、早く帰還しないと」

「真面目だなー、あと一日くらいいいじゃんか」

「駄目よ」

「ちぇー、ツクヨは相変わらず硬いよー」

「まぁまぁ太陽くん、クリスちゃんも」

 太陽達は立ち上がり、荷物を掴む。

「じゃあおっさん、ミレイナさん、また今度な。約束するぜ、必ず『お礼』するからよ」

「ああ、わかったよ」

 そう言って、太陽達は部屋を出て行った。

 すると、蒼髪蒼目のウィンクが立ち止まり、言い辛そうにモゴモゴしてる。

「あの·······」

「ん? どうした?」

「その、シャイニーブルー······さんに、よろしくお伝え下さい」

「ああ、わかった」

 こうして、勇者パーティーと別れた。

 ちなみに太陽が言った『お礼』でとんでもない目に合う事になるんだが、それはまた今度のお話。




 その後、鉄の双剣を持ったシャイニーとコハクが合流し、久しぶりにアガツマ運送会社のメンバーが全員揃った。

「シャイニー、コハク、ありがとうございました」

「別にいいわ、あんたにはウツクシー王国でも世話になったし、借りは返したからね」

 そっぽ向いたシャイニーは素直じゃない。なんか可愛いと思ってしまった。

「わたし、初めての旅行、すっごく楽しかった。お礼を言うのはわたしの方だよ」

 旅行じゃないけどな。なーんかコハクのペースはつかみにくい。

 俺は改めてみんなを見る。

 ミレイナ、シャイニー、キリエ、コハク、しろ丸。

 こうして誰も欠けることなく帰るべき場所へ帰れる。

「さぁ、ゼニモウケに帰るか」

「はい、コウタさん」

「帰ったらまた仕事の日々ね」

「ですが、とても楽しみです」

「わたし、運転する」

『なうなうっ‼』

 さぁて、俺達の家に帰るとしますかね。




*****《?????》*****




 ここは、ホーリーシットのとある森。

 人気もモンスターの気配もない森の中、一人の女性がゆったりと歩き立ち止まる。

「········」

「おーやおやぁ、時間ピッタリですねぇぇ」

「そういう貴方も」

 一人は、オーマイゴッド軍副官のイクシス。

 一人は、ホーリーシット技術顧問のブルクマン。

 何の接点も無さそうな二人の男女が、人気の無い森で密会をしていた。

「やーれやれぇ、戦争は起こらずしかも『竜甲丸』のデータも取れず、つまんないですよぉ」

「こちらもだ。わざわざ人間の軍に潜り込み、戦争の準備を進めていたが、大した事は出来なかった。それに勇者を巻き込む事も考えたが、オセロトルが簡単に始末されてしまったからな」

「かっかっか、勇者の持つ聖剣技術を確認するためには、強者を当てるのが確実ですからねぇぇ、モンスターや人間に対してどのようなデータが取れるのか興味がありましたがねぇぇ」

「仕方ない。元々聖剣技術は我々の技術を過去の勇者が強奪し、それを人間達が昇華させた物だ」

 すると、イクシスとブルクマンに変化が訪れる。

 イクシスの背中から羽が生え服を破り、手足は人間とは似ても似つかない、まるで鳥のような姿に変化する。

 ブルクマンの皮膚は緑に変色し、目は飛び出でカエルのような姿に変わる。

「我々の任務は勇者の持つ聖剣のデータ収集、人間やモンスターと戦わせた場合、どのような力を発揮するか調べる事······」

「戦争が起きて巻き込まれれば、イヤでも戦わざるを得ませんからねぇぇ、しかもオセロトルをぶつければ更にいいデータが取れると思ったんですがねぇぇ」

 イクシスとブルクマン、ニ人の正体は魔族。

 任務は勇者の持つ聖剣のデータ収集。だからこそ人間の姿に化けて、聖王と聖女の事情を利用し、オセロトルをけしかけて勇者が介入するように仕向けたのだ。

 ブルクマンはスゲーダロから提供された情報を元に『竜甲丸』を作り上げ、イクシスはオーマイゴッド軍に潜入して可能な限り戦争に持っていけるように動いた。

 だが作戦は失敗。任務失敗の報告をするために魔王城へ戻らなくてはならない。

 本来なら処罰は免れないが、その心配はなかった。

「だが、いい情報が手に入った」

「えぇぇ、こちらもです」

 イクシスとブルクマンの手から白い炎が吹き出し、そこには映像が写っていた。

 

 ブルクマンの手には白金の髪を持つ少女。

 イクシスの手には変形したデコトラカイザー。


 二人の魔族は、ニヤリと微笑んだ。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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