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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第11章・トラック野郎と神話の歌声』
139/273

139・トラック野郎、迎えに行く

*****《キリエ視点》*****




 キリエとクリスは、エクテニア大聖堂へ連れられ、グレゴリオ聖王と謁見していた。

 キリエがあるがままの報告をすると、グレゴリオ聖王の表情は何とも言えない複雑な物となる。

「つまり、ホーリーシットに伝わる神話魔術を発動させたら、我が軍の『竜甲丸』を壊滅させ、両軍の兵士全員を戦闘不能にさせた、と」

「はい。その通りでございます」

「ほぉぉ、こりゃ興味深いですねぇぇ」

 国王の傍に、ブルクマンと呼ばれる科学者がいた。

 彼は頭をボリボリ掻きニヤニヤしながらキリエの話を聞いていた。

「む……話はわかった。ご苦労だった」

「お待ち下さい、重要な話があります」

「……何だ?」

「クリスの身体の事です」

「……何だと?」

 グレゴリオ聖王は、意味がわからなかった。

 クリスに視線を移すと、どこかうつろな表情で視線を彷徨わせている。まるで幽鬼のような、心ここにあらずと言った表情に、今更ながら気が付いた。

 キリエは淡々と説明する。

「クリスは、聖王としての力を全て失いました。恐らく神話魔術による副作用と考えられます」

「な………何だと!?」

 グレゴリオ聖王は、思わず玉座から立ち上がる。

 キリエは構わず続けた。

「魔術を発動させ暫くしたあと、徐々に感情や反応が失われて行きました。クリスが最後に呟いた言葉が、『新たな聖王を、グレゴリオ聖王に』と。恐らく、新たな跡継ぎをグレゴリオ聖王と妻達に産み育てて貰えと言うことでしょう……』

 キリエは俯き、表情を見せないようにした。

 姉である故、妹がここまでの覚悟で魔術を使用した事に気が付かず、止められなかった事を後悔してるのだろうとグレゴリオ聖王は解釈した。

「何という事だ……」

「ふぅぅむ、こりゃ大変ですねぇぇ……グレゴリオ聖王サマには、まだまだ頑張っていただかないと。あぁもちろん仕事も夜もって事ですね、なははははっ!!」

 ブルクマンの低俗なギャグは、謁見の間に空しく響いた。




 頭を抱えるグレゴリオに、キリエはあるアイデアを出す。

「一つ、提案がございます」

「………何だ」

「幸いなことに、力を失ってもクリスの膨大な魔力はそのまま残っています。それに、感情こそ失われていますが、こちらの命令には忠実に従います。聖王としてこの国を統治するのは不可能でも、勇者パーティーの仲間としての活躍なら望めるかと」

「………ほう」

「勇者パーティーとの繋がりは、ホーリーシットにとっても益に繋がるかと」

「………」

 グレゴリオ聖王は考えた。

 聖王の資格を失ったクリスに使い道はない。だがキリエの言う通り、勇者パーティーやオレサンジョウ王国との繋がりを残しておくのは悪くない。

「よし、その案を採用する。勇者パーティーが戻り次第、クリスを預けておこう」

「は、畏まりました」

 ここでグレゴリオ聖王は、疑問に思っていた事を聞く。

「して、キリエよ。お前はどうするのだ」

「は、私はクリスの姉であります。行くべき場所は決まっておりますので」

「そうか、では好きにするがよい」

 グレゴリオ聖王は、特にキリエに興味は無かった。

 聖王の力を失ったクリスが利用できればそれでよし、勇者パーティーとの旅で死亡しても特に問題はない。問題は、高齢である自分の子作りだった。体力も精力も衰え始めている事を自覚しているので、急ぎ子を作ろうと決める。

「報告は以上です。それでは、勇者パーティーが戻り次第、クリスを」

「任せる」

 キリエの言葉を遮り、グレゴリオは立ち上がり謁見の間を後にした。

 その後をブルクマンが追い、キリエに向かってニヤリと微笑む。

「いやぁぁ……流石ですな、むふふ」

「…………」

「陛下は今夜から忙しくなりそうですねぇぇ、コックに精の付く物を作らせないとねぇぇ」

 ブルクマンは、手をヒラヒラさせて退室した。

 キリエも、クリスの手を引いて謁見の間を後にした。




*****《コウタ視点》*****




 俺は現在、ミレイナと一緒にヒダリの集落を目指してる。

 キリエはホーリーシットへ向かったので、先にシャイニー達を回収してからホーリーシットへ向かう事に決めた。それに、もしかしたらどこかで太陽達に会えるかも知れないしな。

「あの、コウタさん」

「ん?」

「その······私、なんの役にも立ってないですよね······」

 うわぉ、ミレイナが落ち込んでる。

 確かに今回は影がかなり薄かったけど、そんな事はない。

「じゃあさ、ミレイナには美味しい料理をたっぷり作ってもらおう。シャイニーとコハクやしろ丸も腹空かしてるだろうし、みんな揃ったらパーティーでもしようぜ」

 今回は直接的な戦闘こそ無かったけど、まさか戦争にこっそり介入する事になるとは思わなかった。

 災害級危険種はどうなったかな。心配だけどシャイニー達ならなんとかしてそうな気がする。それにしろ丸もいるしな。

「わかりました。では、腕によりをかけて作りますね。まずはコウタさんのお昼から作ります‼」

 ミレイナはガッツポーズをして、居住ルームへ入って行く。

 お昼ご飯は、もちろん絶品だった。




 それから数日後、ミレイナと二人きりのトラック旅をしながらヒダリの集落へ到着した。もちろん甘いロマンスなんて無かったけどな。

「うわ······もしかしてこれ」

「酷い戦闘痕ですね······」

 集落の入口近くは酷く荒らされていた。

 まるで巨大な獣が争ったような。木は何本も倒れ、地面は抉られてる。ここで戦闘があったのは間違いない、やっぱり災害級はここを狙って来たんだ。

「シャイニー、コハク、しろ丸······」

「急ごう、確かシャイニー達が間借りしてる家は······」

 一度来たから集落にはスムーズに入れた。

 本来なら集落の長に挨拶するべきだとか、集落の人達が普通に暮らしてるから災害級は退けたとか、村の人にいろいろ聞くとかあったはずだが、それらを無視してシャイニー達が間借りしてる家に向かう。

 そして到着した。集落のやや外れにある、今は誰も住んでない小屋だ。

 俺とミレイナはトラックから降り、小屋のドアを開けた。

「シャイニー、コハク、しろ丸、無事·········」

「え?」

「あ、ご主人様」

『なうー』

 ドアを開けた俺を待っていたのは、シャイニーの裸体だった。

「え、あ、え?」

「え、ええと······無事、か?」

 両手を広げてるおかげで、上半身を余すことなく観察出来た。

 慎ましい乳房に桃色の先端、手のひらサイズでとても柔らかそうだ。どうやらコハクに包帯を替えてもらってる最中らしい。

 コハクはシャイニーの後ろで包帯を持ち俺を見て、しろ丸は机の上でコロコロ転がっていた。

「こ、コウタ·······」

「·············」

 俺の視線はシャイニーの胸に釘付けだ。

 すると俺の後ろから、ミレイナ現れシャイニーに駆け寄る。

「シャイニーっ‼ ああ、無事でよかったぁ······」

「ミレイナ······」

「シャイニーもコハクも、こんなに傷だらけで······」

「わたしは平気、しろ丸も平気、でもシャイニーはダメっぽい」

「ちょ、アタシも平気に決まってるでしょ‼」

『なうー』

 ミレイナは涙を拭い、しろ丸を抱きしめてコハクを抱きしめる。 

「コハク、無事でよかった·······」

「ミレイナも、よしよし」

 美しい光景に目を奪われ、俺は部屋の中へ。

 するとミレイナに開放されたコハクが俺に抱き着いて来た。

「ご主人様ご主人様、わたし約束守った、強くなった」

「そうか、偉いぞ」

「うにゃ」

 コハクの頭を撫でながら、ミレイナが抱えるしろ丸に手を伸ばす。

「しろ丸も、おつかれさん」

『うなー』

 こうして、俺達は再会した。

 全員の無事を確認出来たし、とりあえず一安心。

「ま、とりあえずいろいろ話すわ」

「············おう」

「シャイニー、おっぱい」

「え、あ、あぁぁぁぁぁっ⁉」

 俺の視線を感じたシャイニーが慌てて胸を隠す。

 そう、シャイニーはミレイナに抱きつかれて一時的に羞恥を忘れたのだ‼ そこに俺やコハクの感動の再会が加わり、自分が上半身裸という事実を忘却した‼ 甘いぜシャイニー、お前のおっぱいをたっぷりと堪能させてもらったぜ。

「忘れろぉぉぉぉぉぉーーーーーッ‼」

「ぐひぇぇぇっ⁉」

 俺は鳩尾に強烈な蹴りを喰らい、小屋の外まで吹っ飛んだ。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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