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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第10章・トラック野郎と様々な事情』
124/273

124・トラック野郎、勝てない

 しろ丸が、この赤い豹の弟。

 意味がわからん、だってしろ丸はこんなに可愛いし、目の前の凶悪な赤豹とは似ても似つかない。

 でも、この豹が俺に嘘を付く理由もない。

 すると赤豹は聞いてもないのに楽しそうに語りだす。

『教えてやろう。ヴァルナガンドはオレの命令を無視し、人間を喰らう事が出来なかった。だからこのオレ自ら処刑してやったのよ』

「え······マジで?」

『さらに情けない事に······人間を守るためにオレに襲い掛かったのだ。昔から甘い出来損ないと思っていたがここまでだったとは、我が弟ながら情けない』

『なうなうっ‼ なうなうっ‼』

 しろ丸は画面越しの赤豹に向かって吠えている。

 どうやらこの赤豹の話は真実みたいだ。つまりそれって、しろ丸も災害級危険種って事なのか?

『さて、話は終わりだ。これから近くの集落で食事にするのでな······ここで終わりだ』

「く·······」

 不味い、赤豹は終わらせるつもりだ。

 ダメージは少ないがこっちの攻撃が全然当たらない。タマの言う通り脚にダメージがあるならいずれは動けなくなるだろうけど、そのチャンスがあるまで向こうは待ってくれない。

 それに『牙飛ばし』以外にも強力な攻撃があるとしたらヤバい。

『少しは楽しめたぞ人間、ヴァルナガンドと共に散れ』

「ちょちょ、ちょっと待った、待った‼」

 赤豹は大口を開ける。

 そして、デコトラカイザーのセンサーでも捉えられないくらいのスピードで縦横無尽に駆け回る。

 いや、センサーには反応してるが俺の技量じゃなにも出来ない。

「おいおいおいヤベーって‼」

『警告。攻撃回避困難。防御体制での待機を推奨します』

「待機って、この体育座りかよ⁉」

 デコトラカイザーは身体を丸めるように体育座りをする。

 情けない姿だが方法はない、とにかく生き残る事を優先する。

『無駄だ‼ 貴様の位置は把握した、この《牙突槍》で突き刺してくれるわ‼』

 そんな声が聞こえる。

 そしてセンサーカメラは見た。赤豹の口から長い牙が突撃槍のように突き出しているのを。

 位置を把握した、つまりあの槍でコックピットを突き刺す·········うっそーん。

『死ねっ‼』

「うわぁぁぁぁぁっ⁉」

 俺は迫りくる恐怖から叫んでしまった。

 コントローラーを握ったまま目を瞑る。

『なうーーーーーっ‼』

『何ィィィッ⁉』

 だから見ていなかった。

 しろ丸が叫んだ瞬間デコトラカイザーを『風』が包み込み、鎌鼬が赤豹を斬り刻んだ瞬間を。

『社長、好機です。アクションボタンを』

「え?」

 俺は無意識に赤ボタンを押す。

 するとデコトラカイザーが立ち上がり、右拳を振り上げた。

『ブッガァァッ⁉』

「あ、当たった」

 振り上げた拳はなぜかデコトラカイザーの真上にいた赤豹の顔面に命中した。

 赤豹はそのまま地面に叩き付けられゴロゴロ転がる。

「な、何が起きたんだ?」

『説明します。デコトラカイザーの真上から豹帝オセロトルが飛来。しろ丸様の起こした風と鎌鼬が豹帝オセロトルの動きを乱し、その瞬間にデコトラカイザーの拳が命中しました』

「おお、マジかよ?」

『なうなうっ』

 俺はしろ丸を抱っこしてモフモフする。

「よくわからんけどありがとうな、しろ丸」

『うなーお』

 しろ丸は尻尾をフリフリしてる。

 どうやら助けられたみたいだな。

『グ······お、オノレ人間、ヴァルナガンドッ‼』

 すると、寝転んでいた赤豹が起き上がる。

 鎌鼬によって身体は刻まれ、口からは血が流れてる。

 めっちゃ怒ってる。それはもうかなり。

『グゥ······覚えていろ‼』

 そう言って、赤豹は姿を消した。 

 とりあえず、危機は去った。




 ポイントを使用して車体を修復し、俺は居住ルームへ入る。

 やはりと言うか案の定と言うか、ミレイナとシャイニーとキリエとコハク神妙な表情をしていた。

 ちなみにクリスはソファで昼寝してる。呑気なもんだ。

「あの、コウタさん······あのモンスター、しろ丸の事を」

 ミレイナが緊張気味に言う。やはりこっちで見てたのか。

 と言うことは全部知ってるんだな。

「ああ······説明する」

 これまでの情報を整理する。

 まず、しろ丸はあの災害級の赤豹の弟。つまりしろ丸も災害級モンスターである可能性がある。

 そして、しろ丸は人間を守るために兄である赤豹に襲い掛かった。

 するとコハクが何かに気が付いたように言う。

「そういえば、しろ丸と初めて出会った場所は血塗れの集落だった。もしかしてあの集落を守るために戦ったのかも」

「血塗れ? どういうことよ?」

「集落、誰もいなかった。建物はボロボロに崩れて、まるで巨大なモンスターが争ったみたいだった」

「まさか、人間は······」

「たぶん、あの赤豹に食べられたのかも」

 コハクは淡々と言う。

 事情はなんとなくわかったが、これからどうするか。

「待てよ? そういえばあいつ、近くの集落で食事にするとか言ってたよな?」

「まさか、人間を食べるんじゃ······」

 シャイニーが青い顔で言う。

 俺は慌ててタマに確認した。

「た、タマ‼ 近くに集落はあるか⁉」

『現在地より最短距離の集落は『ヒダリの集落』があります。更にその先に不特定多数の大型熱源を探知』

「は? 何だよそれ」

『詳細不明。接近し情報取得を推奨します』

 くそ、クリスを勇者パーティーに送るだけなのに面倒な事になった。

 面倒事が嫌いな俺も、集落を放って先に進むなんて出来ない。

 戦う力がある以上、罪のない人を放って行くなんて出来ないぜ。

 デコトラカイザーなら相性が悪いけど戦える。

 よし、こうなりゃやってやる。俺だってたまにはやるぜ。

「よし、集落へ行こう。あの豹を迎え撃つぞ」

 俺の決意、見せてやる。

 するとシャイニーとコハクが言い出した。

「集落へ行くのは大賛成。でもアンタが戦うのは反対」

「うん、ご主人様はクリスを勇者パーティーに届けてあげて」

「······は?」

「あの豹はアタシとコハクで抑えるから、アンタはクリスを勇者パーティーに届けて、ついでにここまで連れてきて」

 えーと、何言ってんだシャイニーは?

 コハクもやる気だし、どういう事?




 シャイニーは言う。

「中のモニターで見てたけど、アンタの操縦じゃあの豹は捉えられない、ぶっちゃけ最悪の相性よ。でもアタシとコハクならついて行ける」

「小回りの効くわたしとシャイニーなら、連携して戦える。倒せるかはわからないけど、時間は稼げる」

「その間にアンタはクリスを勇者パーティーに届けて、ついでにここまで連れて来なさい。癪だけど勇者パーティーの装備ならあの豹と戦える。アタシとコハクで脚の一本くらいはもぎ取って、あとは勇者に任せるわ」

「いやでも、危険過ぎだろ⁉」

「そ、そうですよシャイニー、コハク‼」

「·········」

「キリエ、お前からも何か」

「いえ、ここはシャイニーとコハクに任せるべきかと」

「はぁ⁉」

 俺とミレイナの反対をよそに、キリエは賛成した。

「社長、二人を信じましょう。我々は最速で勇者を迎えに行くべきです」

「へぇ、アンタがそんな事を言うとはね」

「はい。シャイニーとコハクを信じてますから」

「······そ、そう」

 シャイニーが顔を赤くしてそっぽ向く。

 俺はミレイナを見た。

「······信じる、ですか」

「おいミレイナ、まさか」

「わかりました。ここはシャイニー達に任せましょう、コウタさん」

「·········」

 やっぱそうなるのね。

 でも、あの赤豹を倒せるか倒せないかで言えば、倒せない可能性が高い。

 デコトラカイザーは完全なマニュアル操作、俺が反応できない速度で動き回られたらなす術がない。

 でも、シャイニーとコハクなら反応出来る。

 俺に出来るのは、勇者パーティーを連れてくる事だけ。

「······わかった。二人を信じよう」

『なう‼』

「ん?」

『なう、なうなうっ‼』

「そうか、お前も残るのか」

『うなっ‼』

 俺はしろ丸を抱きかかえ、シャイニーに渡す。

 こうして、俺達はパーティーを分断した。

 俺、ミレイナ、キリエ、クリスの勇者パーティー合流チーム。

 シャイニー、コハク、しろ丸の赤豹迎え撃ちチーム。

 よくわからん大型熱源ってものあるし、考える事が多すぎる。

「よし、集落へ行こう」

 とにかく、ヒダリの集落へ急ごう。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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