116・トラック野郎、状況整理
【お知らせ】
トラックの武装の仕様が変わります。
今までは取得した武装をそのまま使用していましたが、これからは【トラックカスタマイズ】で武装を設定し、武装に応じてパーツがデコトラ化する仕様に変更します。
わかりにくいかもですが、お付き合い下さい。
ゼニモウケを出発して数時間、馬車とは比較にならないスピードで走っている。
ちょっとだけ一時停止。さて、ここでトラックの武装を確認しておこう。
「タマ、【トラックカスタマイズ】を見せて」
『畏まりました』
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【トラックカスタマイズ】~パーツリスト~
《外装武装》
○フロントデッキ[小型ミサイル]○サイドミラー[機銃]○バイザー[神経ガス]
○フロントバンパー[レーザーカッター]○サイドバンパー[高周波ブレード]
○リアバンパー[まきびし]○ハシゴ[種類選択]○電飾[種類選択]
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相変わらずとんでもないな。
最近はデコトラカイザーで戦ってたから武装は殆ど使ってない。デコトラカイザーならコントローラーで操作できるし、武装はいちいちガンコンを握ったり面倒だしな。
「社長、何をするのですか?」
「いや、グリーン平原は危険種しか出ないっていうし、モンスターが出ても変形しないで済むかなって。だから念のため武装を確認しておこうかと思って」
「なるほど」
助手席に座るのはキリエ。
しろ丸を膝にのせ、フカフカを堪能している。
「さて、どうするか……」
『グリーン平原に生息するウルフ系モンスターは素早さがあります。【フロントデッキ】項目のミサイルを追尾ミサイルに変更する事をお勧めします』
「追尾ミサイル……」
物騒……いや、もういい。
このトラックが物騒なのはとっくにわかってる。
「じゃあ【フロントデッキ】項目を見せて」
『畏まりました』
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【フロントデッキ】
○[小型ミサイル] ○[グレネード弾] ○[レールガン]
○[火炎弾] ○[硫酸弾] ○[焼夷弾] ○[冷凍弾]
○[追尾ミサイル] ○[電撃ミサイル] ○[チャフ弾]
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「お、追尾ミサイルだ。じゃあミサイルを追尾ミサイルに変更」
『畏まりました』
「っていうかチャフって、確か電気信号を狂わせるヤツだよな?……異世界で役に立つのか?」
素朴な疑問だ。
まぁいいや。とりあえずグリーン平原対策は出来たかな?
「とりあえずこんなもんか。グリーン平原でモンスターが出たらミサイルをおみまいしてやる」
俺は再びトラックを走らせた。
いつもの配達で通る道を進み、途中の分岐路でグリーン平原へ向かう道に進む。
ホーリーシットまで二週間ほど。往復で一ヶ月……遠いなぁ。
「社長、少しいいですか?」
「ん? どうしたキリエ」
『うなー』
しろ丸をフカフカしてるキリエが話しかけてきた。
おいしろ丸、メッチャ気持ちよさそうだな。
「クリスの事と、私の事なのですが……」
「ああ、聖王国ホーリーシットの事か?」
「はい。クリスの故郷、つまり私の故郷でもありますから」
そりゃそうだ。
クリスが聖王だの聖女だの言われてるが、俺たちが注目すべきはそっちだ。
「つまり、キリエとクリスの両親が居る国か」
「はい。恐らくですが、聖王国ホーリーシットの国王グレゴリオが私達の親なのでしょう。だからと言って今更どうにかしたいなど微塵も思いませんが」
ドライっすねキリエさん。
「どうする、会いに行くか? 王様だし、謁見しようと思えば出来るだろ? 名乗らなくても顔を見るくらいならいいんじゃないか?」
「それもいいかもしれませんね。もちろんクリスを送り届けた後でですが」
確かに、クリスを連れて会いに行けば面倒な事になる。
まずは勇者パーティーにクリスを預けてからだな。
それから更に数時間。
「………社長、お話しておく事が」
「ん?」
キリエの声のトーンが下がった気がする。
「勇者パーティーにクリスを返還した後、クリスを勇者に任せるとの事でしたが……万が一の場合、私はクリスのために動きます」
「はい?」
「ホーリーシットとオーマイゴット、そしてオレサンジョウ王国……クリスを狙う国は多いです。流石の勇者パーティー……いや、勇者タイヨウでもクリスを守り切れないかも知れません」
「おいおい、何を考えてるんだよ……?」
「勇者パーティーは信用出来ます。ですが、タイヨウ以外のメンバーはどこまでクリスを守ってくれるかわかりません。特にツクヨ……彼女はクリスよりオレサンジョウ王国を優先するかも」
うぐ、否定できない。
確かに月詠ならそうするかも。
「勇者パーティーにクリスを託した後は私達に関係ありません、それこそホーリーシットとオーマイゴットが戦争になろうと、ゼニモウケには被害が出ることはないでしょう。ですがクリスは危険に晒されます、ホーリーシットとオーマイゴットどちらに付いても戦争に関わる事になるかもしれません」
「………」
「ホーリーシットの事情はわかりませんが、オーマイゴットは恐らく戦争を仕掛けるでしょう。どちらも因縁のある国同士ですし、クリスを返還しないという結論を出したなら、ホーリーシットが軍事的措置を取ると踏んで戦争の準備をしてるはず」
「いや、でもよ……」
「いえ、ナタナエル大司祭なら間違いありません。彼はホーリーシットを憎んでいましたから」
誰やねん。大司祭って事はオーマイゴットの関係者なんだろうけど。
「で、でもどうするんだよ。お前一人で出来る事は……」
「あります」
きっぱりと言い切った。
驚いた俺は視線をキリエに移す。
「手はあります。私の切り札ですが、クリスの為なら惜しくありません。お願いします社長、クリスの安全が保証されるまで、どうかお付き合いいただけませんか」
「え……つまり、クリスを太陽達に返した後も一緒に居るってか?」
「はい。少なくとも、ホーリーシットとオーマイゴットがクリスを利用する事を諦めるまで……」
「おいおい、そんなのムリだろ。だって両国は戦争寸前まで来てるんだぞ、勇者パーティーは戦争に関われないけどクリスは違う。クリスは両国に取って重要人物だし関わるなって言うのがムリだ。それこそ太陽達がクリスを守れればいいんだけど」
「勇者パーティーがクリスを守れればそれでいいのですが……万が一もありますので」
「ホントに何をする気なんだよ……」
「まだ言えません。ですが信じて下さい」
つまり、クリスを太陽に預けた後も一緒に居る。
クリスの安全が確保できるまで見守る。
「先が見えないな……」
「お願いします社長、私に出来る事なら何でもします。社長が望むのでしたら、この身体を好きにして頂いて構いません」
「え」
「勇者パーティーが信用出来て、彼らだけでクリスの安全が確保されるなら構いません。私達はあくまでも裏方として、クリスを守りたいのです」
「あー……」
どうしたもんか。
これってもしかして、戦争云々に関わる事になるのか?
「よし、状況を整理しよう」
クリスがくれた情報と現在の状況。
クリスはオーマイゴットの聖女じゃなくてホーリーシットの『聖王』かもしれない。昔、ホーリーシットからキリエと共に誘拐され、敵対国であるオーマイゴットの大聖堂に放置された。
クリスは『聖王』の力に覚醒し、それを『聖女』の力と勘違いしたオーマイゴットの司祭達はクリスを聖女と崇める。
クリスは勇者パーティーにスカウトされ、太陽達と出会う。
ここでホーリーシットはクリスが過去に誘拐された王族と確信、オーマイゴットにクリスを返すように言うがオーマイゴットは受け入れず。
これに対してホーリーシットは軍事的措置を持ってクリスを取り返すと宣言。オーマイゴット側も宣戦布告にビビる事無く戦争の準備に入る。
当のクリスは行方不明、っていうか俺たちと一緒。
俺たちの目的は、クリスを勇者パーティーに返し太陽達に守って貰う事。
戦争云々に関してはノータッチ、だけど勇者パーティーの動き次第ではクリスが危険に晒されるかも。
なので、クリスが真の安全を確保するまで一緒に居たい。
「……って感じか」
「流石です社長」
クリスの情報はオレサンジョウ王国の諜報部が得たものだ。
一緒に生活してる内にその情報は共有していた。
「社長、お願いします。クリスのために力を貸して下さい」
「…………」
ここで断れば、キリエは会社を辞めるだろうな。
俺に出来る事なんてトラックを運転してロボットを操縦するくらいだが。
「わかったよ、ただし……危険な事はナシだ」
「ありがとうございます、それで構いません」
仕方ない、キリエの為にやるしかないか。
念のため【武器庫】をチェックしておこう、拳銃だけじゃ不安だしな。
『社長。間もなくグリーン平原です』
「わかった」
はぁ……またまた厄介事になりそうだ。