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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第9章・トラック野郎と新しい生活』
104/273

104・トラック野郎、拾う

「ご主人様ご主人様!! すっごくかっこよかった!!」

「お、おお」

『なうなうなうーっ』

 デコトラカイザーからトラックに戻ると、助手席のコハクが興奮した様子で戻っていた。

 コハクだけじゃない。しろ丸も尻尾をブンブン振って興奮してる。どうやら居住ルームのモニターで見てたらしい。

「ありがとな。それじゃ鉱石を探すか」

『ミスリル鉱石は現在地より北西三〇〇メートル先。マップにポイントをマークします』

「よし、じゃあ行くか」

 アダマンロックトータスの残骸は置いておく。

 甲羅は砕け身体はグチャグチャの肉片だしな。放っておけばこの辺りのモンスターが餌代わりに食べてくれるだろう。

『なう、なうなう』

「おっと······ははは、どうしたんだよ、しろ丸」

 甘えてるのか、しろ丸がコハクの手から離れて俺の膝の上でコロコロ転がる。可愛い。

「ご主人様、すごいって」

「わかるのか?」

「なんとなく」

 ま、俺もそんな気がする。

 そして、ミスリル鉱石がある場所に到着した。

「ひと目でわかった。これだな?」

 目の前にあるのは、青白く輝く巨大な岩だった。どうやら発掘はすでに終わり、ユニック車に搭載して運ぶだけみたいだな。

 かなりの大きさでユニック車でもギリギリだ。形は楕円形で表面はゴツゴツしてる。こりゃワイヤーで括るのが大変だ。

 トラックをユニック車に変形させて車から降りる。

「はぁ······どうするか」

 どこから手を付けようか悩んでいると、コハクが降りて俺の隣に並ぶ。

「ご主人様、これを乗せるの?」

「ああ。どうやってワイヤーで括ろうか悩んで······」

「よい、しょっと······けっこう重い」

 コハクは、一トンはありそうな岩の塊を、簡単に持ち上げた。

 唖然としてその光景を見ていると、いつもと変わらない表情のコハクが言う。

「ご主人様、これどうするの?」

「あ、ええと、ユニック車の荷台に置いてくれ」

「うん······えいっ」

 コハクはゆっくり静かにミスリル鉱石を荷台に乗せる。

 見た目は普通の少女で腕も太いわけじゃない。それなのにこの馬鹿げた筋力は何だ?

「ご主人様、役に立った?」

「は、はい」

 思わず敬語で返してしまった。




 ミスリル鉱石の積載は一瞬で終わったが、ワイヤーでの固定に時間が掛かった。コハクと二人掛かりで何とか終えると、コハクのお腹が大きな音を立てた。

「ご主人様、お腹減った」

「そろそろお昼だしな。ミレイナの弁当を食べよう」

 天気もいいし、居住ルームではなく外で食べる事にした。

 ユニック車の近くにシートを敷き、重箱としろ丸の餌入れを設置。ポイントで飲み物を買って準備完了だ。

「じゃ、いただきます」

「いただきます」

『うなーお』

 しろ丸もちゃんと会釈した。

 五段重ねの重箱には、おにぎりと唐揚げ、サラダや卵焼き等がいっぱい入ってる。まるで運動会の弁当だ。

 しろ丸にはドッグフードを与えたが、餌入れにいくつか唐揚げを入れてやる。すると嬉しそうにモグモグ食べていた。

「ご主人様、おいしいね」

「そうだな。今度はみんな連れてピクニックにでも行くか?」

「行きたい」

 おにぎりと唐揚げの組み合わせは最高だ。

 コハクのペースが早く、あっという間に完食した。

「ふー、腹いっぱいだ」

「おいしかった」

『うなー』

 重箱を片付けて少し休憩。

 コハクはしろ丸を抱きしめて昼寝を始めた。

「ふぅ······」

 俺はコハクの頭を撫でながら、ミスリル鉱石を見上げる。

 確か、シャイニーの鎧や剣もミスリル製なんだよな。

『シャイニーブルー様の剣と鎧はハイミスリル製です。ミスリルを体内に取り込んだ危険種の《ミスリルリザード》の骨を加工した装備で、上級冒険者の間では高級品となっています』

「何も言ってないけど説明ありがとう······」

 タマのやつ、何で俺の考えが読めるんだろう。

 それから三〇分ほど休憩し、コハクを起こす。

「そろそろ帰るか」

「·····ん」

 目を擦りながらコハクが立ち上がり、小脇にしろ丸を抱える。

 いい感じに休めたし、さっさと帰ってギルドに報告するか。




それは、帰り道での事だった。

「ご主人様、誰か倒れてるよ」

「え?」

 コハクが指さした場所には誰も居ない。

 道は整備された街道で、ゼニモウケまでは数時間の距離だ。途中で分かれなどがあり、近隣の集落や他国・他都市へ向かう道もいくつかある。帰り道はほぼ一本道なので迷うことは無い。

「どこだ?」

「あそこ」

 あそこと言われても、コハクは真っ直ぐ指さしてるだけ。

 するとタマのフォローが入った。

『前方四五〇メートル先に人体反応アリ。スキャンの結果から疲労困憊による気絶です』

「マジか」

 というか、コハクには四五〇メートル先が見えていたのか。

 そう言えばミレイナが言ってたっけ、魔族はモンスターの血が混ざった種族で、驚異的な身体能力や魔力を持つ者は珍しくないって。コハクの怪力と視力の良さはそこから来てるのか。

「ご主人様、拾う?」

「ああ、見て見ぬふりは出来ないだろ」

 アクセルを踏んで速度を上げると、街道のど真ん中に人が倒れていた。

 全身を外套で覆った旅人スタイルで、うつぶせになって倒れている。

 俺はトラックから降りるとコハクも降りる。何故かコハクの手には武器が装備されていた。

「念のため」

 それだけ言うと、コハクは倒れた人に注意を払う。

 俺もゆっくり近付き、恐る恐る肩に触れた。

「も、もしもし……もしもーし」

 反応なし。

 少し強めに肩を揺さぶっても反応が無い。

「ご主人様、これ、女のニオイする」

「女?……どれ、ちょいと失礼」

 俺は顔を覆っていた布を外し確認した。

「…………え」

「女、若いね………ご主人様?」

「いや、え?……なんで?」

 俺は薄汚れた顔を何度も見て確認した。

 だって、俺の知ってる顔だったから。

「この子………クリスだよな?」

 そう、行き倒れの少女は、キリエの妹のクリスだった。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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