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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第9章・トラック野郎と新しい生活』
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103・トラック野郎、新ウェポン

 冒険者ギルドの依頼で、ガチガチ岩石地帯に鉱石採取に出かける事になった。

「じゃ、行ってくる」

「いってくる」

『なうなーう』

 って、しろ丸も行くのか。

 コハクが脇に抱えるようにして抱っこしてる。抱っこというかボールを小脇に抱えてるみたいだ。

「コウタさん、これお弁当です」

「お、やったぜ」

「ミレイナ、ありがとう」

 しろ丸のドッグフードはコハクのカバンの中に入ってる。弁当も重箱みたいな特別製の弁当箱だ。きっとコハクが食べる量を計算してるんだろう。

 俺とコハクはトラックに乗り込み、コハクはしろ丸を膝に乗せる。

「いってらっしゃい、コウタさん、コハク」

「こっちは心配しなくていいわよ」

「道中、お気をつけて」

 ミレイナ達に見送られ、俺とコハクは出発した。




「ご主人様、おやつ食べたい」

「はいはい。何が食べたい?」

「甘いの」

 甘いのか······かなりあるぞ。

 どれ、久しぶりにじっくり見てみるか。

 俺はトラックを街道の路肩に停め、タマに言う。

「タマ、ドライブインを表示」

『畏まりました。項目の増大に伴い画面を整理しました。対象の項目をタッチして下さい』


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【ドライブイン】〜いらっしゃいませ〜

[ドリンク類][フルーツ類][駄菓子類][デザート類]

[パン類][お弁当類][サラダ類][ラーメン類]

[お土産類][ペット類][文具類][日用品類]

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 すごいな、ドライブインってかコンビニみたいだ。

「甘いの······とりあえずデザートかな」

 俺は[デザート類]をタッチする。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【デザート】

[ショートケーキ][チョコケーキ][モンブラン]

[シュークリーム][プリン][バームクーヘン]

[フルーツゼリー][クリーム大福][アイスクリーム]

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「おお、こりゃすごいな」

「甘いの、いっぱい?」

「ああ。そうだな······シュークリームなんてどうだ?」

「うん」

 トラック内でケーキは食べにくいしな。こかは無難にシュークリームでいいだろう。

 俺はシュークリームを三つ購入する。するとダッシュボードからいつものビニール袋が現れた。

 ビニールに包まれたシュークリームを一つコハクに渡し、もう一つの袋を破いてしろ丸の口元へ。

『なうなうー』

「ほら、美味いぞ」

『うなー』

 コハクの膝上から俺の膝上に移動させ、頭をフカフカ撫でながらシュークリームを食べさせる。すると美味しそうにモグモグ食べ始めた。かわいいな。

「ご主人様、これおいしい‼」

「そうか。じゃあ俺の分もやるよ」

「え、でも」

「いいから。遠慮するなって」

「······ありがと、ご主人様」

 コハクはにっこり笑うとシュークリームをモグモグ食べる。

 しろ丸もシュークリームを完食し、俺の膝上でスヤスヤ眠り始めた。

「ご主人様、だいすき」

「お、おお」

 頬にクリームを付けたコハクは、可愛らしく微笑んだ。




 のんびり進みながらガチガチ岩石地帯へ向かう。

 街道も緑が少なくなり、岩場や砂っぽい風景に切り替わっていく。

「………ご主人様、いやな気を感じる」

「え?」

『なうなうなう!!』

「しろ丸も感じてる……何か、いるよ」

 しろ丸が起きて尻尾を振りまくり鳴く。

 どうやら威嚇みたいだが、なんとも可愛らしい。

「おいおい、まさか……モンスターか?」

「たぶん。でも大丈夫、ご主人様はわたしが守る」

『なうーっ』

「しろ丸もご主人様を守るって」

 俺は未だに膝の上にいるしろ丸をフカフカ撫でる。

 こういう場合のイヤな予感は間違いなく的中する。

『社長。前方二五〇メートル先ガチガチ岩石地帯入口です。更にその先一八〇メートル北東に超危険種『アダマンロックトータス』を感知しました。デコトラカイザーの変形を推奨します』

「ほらな、やっぱ来たよ……」

「ご主人様?」

 トータスって事は亀の化物だろうか。

 そういえば最近全くトラックを弄っていない。武装の設定もおざなりだし、ロボットに変形してばかりで機銃も殆ど使ってないな。

 そういえば……レベル六〇に到達したのに、新しい変形を獲得してないな。

 ああ、考えれば考えるほど戦闘に関して俺は消極的だ。だってそうだろ、俺がやりたいのは戦闘じゃなくて配達だ。ハラハラドキドキの要素は全く必要ない。

 でも、身を守る武装が必要なのは理解してる。

 帰ったらトラックの武装を弄るか……はぁ、やれやれ。

「コハク、ここは俺に任せてくれ」

「え、でも」

「大丈夫。こう見えて俺は強いからな」

「そうなの?」

「まぁ、俺ってかトラックだけどな」

 トラックはガチガチ岩石地帯へ到着した。

 岩石地帯というだけあって、大きな岩石がたくさんある。

 岩の隙間を縫うようにトラックを走らせる。

 鉱石を採掘するには、超危険種モンスターを排除しなくてはならない。つまり、強制バトルが発生って事だ。

「ご主人様、近い」

『なうー………』

 コハクとしろ丸が警戒してる。

『社長。左前方二〇メートル。超危険種モンスターの存在を感知しました』

「え」

 次の瞬間、轟音が響いた。




 轟音の正体は、左前方にあった巨大な岩が動いた音だった。

「な、まさか……擬態か!?」

『シャガァァァァァッ!!』

 巨大な岩から手足を頭が生え、トラック睨み付けた。

 大きさは二〇メートル以上ある。見た目は岩の甲羅を持つカメだが、甲羅の盛り上がりがハンパじゃない。

 甲羅の高さだけで一〇メートルはありそうな、パースの狂った化物亀だ。

『社長。現在設定されてる武装ではアダマンロックトータスの装甲にダメージを与えることは出来ません。デコトラカイザーへの変形を』

「わかってるよ!! デコトラ・フュージョン!!」

「おお?」

『なう?』

 俺の叫びと同時に、助手席のコハクと抱っこされたしろ丸は居住ルームに消えていった。

 運転席が上昇し視界が広がり、ガチャガチャと音を立ててトラックが人型へ変形する。

「デコトラカイザー、配送開始!!」

 カッコいいポーズを取り変形が終了した。

 さて、さっさとやっつけるか。

「来い、ドライビングバスター!!」

『ドライビングバスター転送』

 デコトラカイザーの必殺武器、大剣と大砲モードの切り替えが可能な特殊武器を握り構える。

「よーし、行くぞ!!」

 俺はコントローラーのアナログスティックを前に倒し、デコトラカイザーを走らせる。

 アクションボタンである『赤』ボタンを押し、ドライビングバスターを振りかぶった。

「ドライビングスラーッシュッ!!」

『警告。そのような技はありません』

 やかましい、気分だ気分。

 ガキィッ!!っと派手な音が響き、ドライビングバスターの刀身はカメの甲羅を両断……しなかった。

「あれ?」

『警告。アダマンロックトータスの甲羅の強度は、トラックの車体強度レベルに換算するとレベル八五。ドライビングバスターでの攻撃は無効化されます』

「いや早く言えよ……お、おぉぉぉっ!?」

『シャガァァァァァッ!!』

 カメの怒りを買ったのか、口からブレスを吐いた。

 車体に振動が走り、ブレスの勢いでデコトラカイザーが吹き飛ばされる。

『車体ダメージ小。行動に支障はありません』

「いてて……椅子に後頭部をぶつけた」

『シャガァァァァァッ!!』

「うわわわっ!?」

 倒れたデコトラカイザーのマウントを取ろうとしたのか、カメとは思えないスピードで迫って来た。

「やべぇやべぇっ!!」

 『黄』ボタンを連打して立ち上がり、アナログスティックと合わせてバックステップで距離を取る。

「だったら、こいつでどうだ」

 エルボタンを押してドライビングバスターをキャノンモードへ変形させ、アールボタンを押して標準を合わせる。

『社長。ドライビングバスターでの攻撃は無効化されると言いましたが』

「え、キャノンもダメなの?」

『はい』

『シャガァァァァァッ!!』

 再びのブレス攻撃をサイドステップで躱す。

 ふふふ、避ける事に関しては得意になってきたぜ。情けないとか言うなよ。

「えーと、じゃあ……ブルデコトラカイザーに変形だ!!」

『それも一つの案ですが、提案をします』

「え?」

『トラックフォーム専用デコトラウェポンの召喚を推奨します。現在選択可能なのは軽ワゴン・エブリーです」

 そう言えば、従車はデコトラカイザーの武器に変形するんだっけ。

 ピンチの状況でぶっつけ本番はイヤだけど、ここで使って確認しておくのも悪くない。

「……わかった。じゃあエブリーを使うぞ」

『畏まりました。それでは認証コードをお願いします』

「また叫ぶのか……」

 この仕様はなんとかしたい。

 ぶっちゃけ恥ずかしい。誰も聞いてないのが救いだぜ。

「カモンオーライ!! エブリストライカー!!」

 くっそ恥ずかしい。何がカモンオーライだよ。

 すると上空に幾何学模様の魔方陣が現れ、白いボディのエブリーが現れた。

 誰も乗ってないのにデコトラカイザーの周りをグルグル走ってる。

「ウェポンシフト!!」

『了解。デコトラウェポンドッキング』

 エブリーが変形を始める。

 縦に真っ二つに割れ、バラバラのパーツがデコトラカイザーの左腕に合体していく。

「デコトラカイザー・エブリストライク!!………って、なんじゃこりゃ」

『社長、ノリノリでしたね』

「やかましい」

 変わったのは左腕。

 分解したエブリーが左腕にくっつき、まるでハンマーのような姿になった。

『左腕部攻撃力大上昇。アダマンロックトータスの甲羅を破壊出来るレベルに達しました』

「よ、よーし。親切に待っててくれた所で悪いが、ここで決めさせて貰うぜ」

 まぁ変形から合体まで一〇秒も掛かっていない。

 俺はコントローラーを握りしめ、改めてカメの化物を見据える。

『シャガァァァァァッ!!』

「甘いっ!!」

 ブレスはもう喰らわない。ってかこいつブレスしか吐かないな。

『アダマンロックトータスの最大の特徴は防御力にあります』

「なるほど」

 デコトラカイザーを接近させ、ハンマーで甲羅をぶん殴ってみた。

「だっしゃァァァっ!!」

 すると、岩が砕けるような音が響き渡る。

『ギャシャァァァッ!?』

「おぉっ、砕けた」

 甲羅は砕け緑色の血が流れる。こうかはばつぐんだ!!

『社長。必殺技のコマンド入力をお願いします』

「あいよ」

 画面に表示されるコマンドを入力する。

 落ち着いてやればこんなの簡単だ。

『入力確認。《エブリトールハンマー》発動します』

「よーし、お前の命、あの世に配達してやる」

 左手のハンマーが紫電を帯び、デコトラカイザーが構えを取る。

『ギシャァァァァッ!!』

「やかましいっ!!」

 イタチの最後っ屁のブレスをジャンプで躱し、そのままの勢いで雷ハンマーを叩き付けた。

『グッギャァァァァッ!!』

 甲羅が砕け散り、生身の部分も叩き潰した。 

 緑色の血がドバッと溢れ、カメの身体は完全に動きを止めた。

『生命反応消失。お疲れ様でした』

「ふー……」

 やべ、なんかバトルが楽しくなってきたかも。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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