Snow7 ふたりぼっち
「ゆかさ、僕だよ」
「あ、悠太。今日も来てくれたんだね。嬉しい」
ゆかさはそういうと、くんくんと匂いを嗅ぎ、ビニール袋を指差して笑った。
「美味しそうな匂いがするね」
「あ、これ、僕の晩ご飯。コンビニでうどんを買ったんだ」
その時には、うどんの存在をすっかり忘れていてさ、うどんが冷めてしまうところだったよ。
「ここで食べてもいい?
……家だと1人で、寂しくて」
「いいよ」
うどんを取り出し、割り箸を割って、いただきます、とつぶやいた。
「——うん、美味しい」
「いいなぁ、美味しそう」
僕のうどんを覗き込んだゆかさがあんまりにも羨ましそうに言うもんだから、聞いていた。
「一口いる?」
「えっ?」
ゆかさは驚いたように言って、目を丸くした。
「……いいんなら……欲しい」
僕は笑った。
「はい」
割り箸とうどんの器を手渡す。
「ありがとう、悠太」
ゆかさは嬉しそうに受け取り、うどんを一口すすった。
「——本当だ!美味しい!」
「でしょ?」
僕も、ゆかさも、笑った。
「——ありがとね、悠太」
ゆかさに器と箸を返されて、僕はそれを受け取った。そして再びうどんを食べ始めたんだ。
あまり会話はしなかったけど、1人じゃないって、こんなにあったかいんだと思った。
胸の奥が、じんわりあったかくなってね。
「寂しかったら、いつでもここにおいでよ」
不意に、ゆかさにそう言われたんだ。
「私はいつでも、ここにいるから」
「分かった。ありがとう」
僕は本当に、その言葉が嬉しかったな。




