Snow5 居場所
どうしてこんなにあの屋上に行きたいんだろう。
どうしてこんなにゆかさに会いたいんだろう。
そう考えても、いつも答えは出なかった。
出なくても、考えていた。
だけど、答えは見つからなくて。どうしようもなく会いたいって思いが募っていくだけだった。
だからかな、僕は毎日ゆかさに会いに行った。
「ゆかさ、僕だよ」って言って。
いつだったからかな、ゆかさは「今日も来てくれたんだね、嬉しい」って言ってくれるようになった。毎日僕が呼びかけると、欠かさずにね。
ゆかさのその言葉が、嬉しかった。
——ねえ、何であそこに行きたかったのか、今考えると、自分の居場所がそこだけだったんだろうね。
ほら、今は君みたいな友達もいるし、学校がすごく楽しいし、ここが僕の居場所だって思うよ。本当だよ。
でも……前は違ったんだ。学校ではいつも馬鹿にされたり、嫌がらせをされたりで心安らぐ時なんてなかった。家では親が共働きでいないからいつも1人ぼっちで、誰とも話せなくて、やっぱり心安らぐ時は無かったんだ。想像がつきにくいかもしれないけど……ね。
でもあそこには、ゆかさがいた。
ゆかさは僕を馬鹿にすることも、嫌がらせをすることもない。それだけでなく、僕とたわいもない話をしてくれる。本当にくだらない話ばかりだったよ。ゆかさの返事はさばさばとしたものばかりだったけど、それでも嬉しかったんだ。
——僕はきっと、寂しかったんだろうね。
だけどゆかさに出会ってから、寂しさが少しずつ消え始めたんだ。その代わり、楽しみが増えた。
この話をゆかさにしたいな。
この空、見せてあげたいな。
こうして、ゆかさに会うのが日に日に楽しみになっていったんだ。




