Snow2 ゆかさの秘密
彼女——ゆかさは溜息をついた。
「……まあ、話さなければ始まらないわよね」
ゆかさは鉄網に手をついた。
鉄網を、握りしめる。
その時、一瞬僕は、見間違いかと思った。
鉄網が、だんだんと白くなって、凍りついてしまったのだから。
あたりの気温が、すうっと少し下がった気がした。
ゆかさの足元の白い範囲が広がっていく。
「私は、もう死んでいるの」
ゆかさは淡々と口にした。
「でも私は幽霊じゃないわ。
私は——」
次の瞬間、ゆかさは冷たく言い放った。
「——私は雪女なの」
しばらくの間、沈黙が続いた。
沈黙を破ったのは、僕だった。
「……僕はいいと思うな」
「はあ?」
僕は、不思議なことに、ゆかさが雪女であることを、すんなりと受け入れていた。
「君が雪女だってこと。
氷や雪を操れるなんて、素敵だと思うけど」
「……そう、ありがとう」
ゆかさの口調も、少し変わった。
(——孤独な雪女)
そんな言葉が、不意に浮かんだ。
ゆかさは、そんな言葉がしっくりきそうな雰囲気を醸し出していた。
しばらく間が空いて、ゆかさが問いかけて来た。
「私のこと……怖くないの?」
彼女のことを、怖いとも恐ろしいとも思わなかった。
「うん。怖くないよ」
「そう……」
ゆかさはそっぽを向いて、言った。
「……ありがとう」
不意にゆかさが口を開いた。
「——貴方が……」
「……えっ?」
聞き取れなくて、聞き返した。
「——貴方が初めてよ。
私のことを怖くないって言ったのは……」
そして再び、ありがとう、と言った。
「僕、今日はもう帰るけど……またここに来てもいい?
ゆかさに会いに来てもいいかな?」
「——いいわよ。
ただし、ここに私がいることと、私が雪女だってことは、誰にも言わないで欲しいの」
「分かった、ありがとう。
——それじゃ、またね」
「うん」
こうして僕は、雪女であるゆかさと出会って、まだ生き続けることを決めた。
ねぇ。
もしあの日、あそこにゆかさがいなかったら——僕は、どうなっていたんだろうね。




