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Snow28 後日談

 ……あの後、僕は夢でも見ていたんじゃないかって気分になった。そりゃそうだよね。だって、白い鳩が光を放って消えちゃうし、さっきまで一緒にいたゆかさが消えてしまったんだから。

 でも……どこかで理解していた。

 ゆかさはやっと、本当の死を迎えたんだって。肉体の死は何年も前に迎えていたけれど、魂がようやく、また生まれ変わってくるために死の国で休む期間に入ったんだって。

 ——なんで分かったかって?

 そんなの……勘が働いたとしか言いようがないよ。直感で、そう思ったんだ。


 あの後僕は家に帰って、ゆかさと一緒に撮った写真を印刷しようと思ったんだ。手元に写真を置いておきたかったんだよ。

 だけどね……ゆかさが写った写真は一枚もなかった。いや、正確に言うと……ゆかさが写っているはずの写真から、ゆかさの姿だけが消えていたんだ。

 ゆかさ1人を写した写真には、桜しか写っていなかった。僕とゆかさが写っているはずの写真には、僕しか写っていない。

 ゆかさがいたはずだった桜と僕の間に、不自然な空間ができていた。

 おかしいと思って写真を印刷してみたけど、結果は同じだった。ゆかさはどこにもいない。

 まさかと思って今までに撮った写真も確認した。ゆかさの作った氷の雛人形の写真とかね。氷の雛人形の写真は、ちゃんとあった。氷の雛人形も写ってた。

 本当に、ゆかさだけがいない。

 ゆかさの写真は、残っていないんだ。


 ところでこれはなんの絵かっていう話だけど……多分もう、想像がついてるよね?

 これは、ゆかさの絵なんだ。バックはもちろん、あの日の風景だよ。もうすぐ描き終わるんだ。

 えっ?これが描き終わったらどうするのかって?

 ……どうもしないよ。これは、僕の手元に置いておくんだ。


 ——僕は、あの不思議な日々のことを、忘れない。忘れたくないんだ。

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