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Snow26 舟咲川

 花咲川沿いを、2人で歩き始めた。

 川沿いに咲く桜は、調べた通り満開だった。優しい風が吹くと、それはひらひらと舞って、落ちていく。

 屋台が川ぞいに並んでいて、色々なものを売っていた。まるでお祭りみたいだったなぁ。

「あ、わたあめがあるよ。あれ食べたいな」

「わたあめ、美味しいよね!でも僕はりんご飴の方が好きかな。取り敢えずわたあめ、買ってくるね」

 僕はわたあめ屋さんに向かって歩いた。ゆかさはそれについてくる。

「わたあめ1つ、ください」

「はいよ!今なら2人連れの人達にはサービスで小さいわたあめを1つあげているんだけど、いるかい?」

 おじさんは砂糖を機械の中央にさらさらと入れながら訊いてきた。

「お願いします」

 僕がいうと、おじさんは手際よくわたあめを作って「はい、まずは普通のわたあめね」と言って渡してくださった。そして今度はさっきよりも少なめの砂糖をさらさらと機械に入れて、小さめのわたあめを作ってくださった。僕はわたあめのお金をおじさんに渡す。

「はい、100円ね。ありがとう!」

 おじさんは笑顔でそう行って、その場を離れようとする僕らに手を振った。僕らはおじさんに小さく会釈をして、その場を離れた。


 そのあと、僕はりんご飴を1つ買ってそれを食べながら、ゆかさはわたあめを食べながら、川沿いを歩いていった。途中で焼きそばを買ったのは、あとで高台に着いた時、晩ご飯にするためだった。


 桜の花びらが舞っている。

「綺麗だね」

「うん」

 ふわり、と目の前に、桜の花そのものが落ちてきた。

 僕はそれを拾い上げて、ゆかさの髪に飾る。

「なあに?」

「桜の花が落ちてきたから、飾ってみた」

 ゆかさは嬉しそうに笑う。

「ありがとう」


「そうだ。写真撮らない?」

「写真?」

 僕はうなづく。

「舟咲川をバックにしてさ。綺麗だと思うんだ」

「うーん……いいよ。撮るなら可愛く撮ってね」

 ゆかさはそう言っていたずらっ子ぽく笑う。

「分かった。……うーん、もう少しこっちに寄って」

「こっち?」

「うん、そこ。いい?撮るよ!

 ——はい、チーズ」

 カシャ、と音を立ててシャッターを切る。

 僕はゆかさの元へと駆けて行く。

「どうかな?」

「いいんじゃない?

 あ、そうだ。せっかくだから悠太も写りなよ。私が撮ってあげる」

「いいの?」

 ゆかさはうなづいた。

「さ、早く早く!」

 僕はうなづいて桜の木の下に戻ろうとすると、ゆかさが「あっ、待って」と僕を呼び止めた。

「撮ってあげるって言ったはいいものの……操作方法が分かんないや」

 困ったように、でも楽しそうに笑うゆかさに僕はスマホのカメラモードの使い方を説明する。

「こうやって持って、この白い丸かここのボタンを押すんだ」

「ここだね、分かった!」

 ゆかさが笑顔でそう言ったから、今度こそ僕は桜の木の下、さっきまでゆかさがいたところに立つ。

「いくよ!はい、チーズ」

 僕はゆかさに写真を見せてもらった。初めてにしては上手く撮れていると思う。

「うん、いいんじゃないかな」

 僕らが写真を撮りあっているのを見たのだろうか、観光客らしき人が「写真撮りましょうか?」と声をかけてくださった。

「お願いします」

 2人で声を揃えてそう答え、僕はその人にスマホを渡す。

「お姉さんは携帯はいいんですか?」

「ええ。もらいますから」

 さらりとそう答えるゆかさ。主語を抜いたのはたまたまだと思うけど、主語を抜いたおかげで携帯を持っていないことがばれなかったみたいだ。——いや、別にばれたっていいんだけど、僕と同じぐらいの年代で今時携帯を持っていない人の方が珍しいだろ?

 観光客らしき人は元気がいい人だった。

「それじゃあ行きますよ!あ、お兄さんもう少しこっち寄ってください。そう、そこです。行きますよー!はい、チーズ」

 2、3枚写真を撮ってもらった。

「ありがとうございます!」

 2人で声を揃えて言うと、観光客らしき人はいえいえ、と言いながら去っていった。

 去り際に、お幸せに、と言われた気がして、カップルと勘違いされたのかなと思った。


「行こっか、今日の予定の最終目的地に」

「うん」

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