Snow20 氷遊び
その日はご飯を食べた後にゆかさのところに行った。
「ゆかさ、僕だよ」
「あ、悠太。きてくれて嬉しい。
ねえ見てよ、これ」
ひな祭りの翌日に作った雛人形はいつの間にかなくなっていた。毎日ここに来ていたのに、どうして気付かなかったんだろう、なんて思いながら、ゆかさが指差した方を見る。
「……これ、なに?」
「何でしょーか?」
ゆかさは、ふふ、と笑う。
指差す先には、積み木のように積み上げられた氷の棒があった。それはビルみたいに積み上がっていて……。
「あっ、ジェンガだ!」
「そう、あたり!」
ゆかさは嬉しそうに笑う。
「今日はジェンガで遊ぶのも面白いかなあって思ってさ、作ってみちゃった」
「楽しそう!」
「早速やろうよ。じゃんけんして勝った方から抜くことにしよう」
「うん」
じゃんけんぽん、と2人で言って、僕はチョキを出した。一方、ゆかさが出したのは、パーだ。
「私の負けだね。悠太からどうぞ」
「ありがとう」
僕は答えて、氷のジェンガを見つめる。
さて、どこから抜こうかな?
迷いに迷って、結局1番上の真ん中の棒を取って、真ん中に乗せた。
「え?それじゃ何も起こらないでしょ」
「まあ、安全策をとってみたよ」
「つまんないのー。次は私ね」
そう言ってゆかさは一段下の真ん中を抜いて僕の棒の隣に置いた。僕からみて奥側の隣だ。
ジェンガは動かない。
「よし、じゃあ僕は……」
さっきゆかさが抜いた棒をとって、さっき僕が載せた棒の上に乗せる。
「なにそれ!本当につまんない!」
「ごめんごめん。次はゆかさだよ」
「はいはい」
——結果を言うとね、勝ったのはゆかさだった。
ゆかさのあの時の嬉しそうな顔といったら!悔しかったなぁ。
2回目もやりたかったけど、時間が遅くなって断念した。
「明日また、ジェンガやろうよ」
「うん。明日は負けないからね」
そんなことを言って、別れたんだっけ。




