Snow19 日取り
その日、悠太にチャーハンを作ってから、お出かけの計画を立てたの。
「いつがいいかなぁ」
「うーん……春休みに入ったらいつでも暇にはなるかな。あ、でも日曜は避けたいな。お母さんの仕事も日曜は休みだからね」
「そうだね、なるべく一緒に過ごしたいよね。
あ、そうだ。桜前線は?銀河街で桜が満開になるのはいつだろう?」
「そうか!満開の時に行きたいよね。調べてみるね」
悠太がそう言ったけど、桜前線なんてどう調べたらいいのかなんて知らなくて。
「え?どうやって調べるの?」
「これで調べるんだ」
悠太が取り出したのは、「今」の携帯電話だった。ボタンも全然ない、画面に触れて操作するやつ。
「私も見ていい?」
どうやって文字を打つのか、想像もつかなかった。
「いいよ」
悠太は私に画面を見せてくれた。
悠太が画面上にある方位磁針みたいなマークを触ると画面が変わる。その画面の上に、細長い四角があって、そこに触ると下からしゅっ、ってキーが画面上に現れたの!
「えーっと……さくらぜんせん、っと」
悠太はキーを押すだけじゃなく、指を画面上でスライドさせたりしながら文字を打った。
その慣れた手つきに驚きながら、聞いた。
「今って、高校生でも携帯を持ってるの?」
「うん。下手すると小学生でも子供用の携帯を持ってたりするよ」
「えっ⁉︎」
高校生が持ってるっていうだけで驚きなのに、小学生が携帯を持ってるなんて……信じられなかったなぁ。——今時それが普通だって?いや、そうだとしてもびっくりだよ、本当に!
「あったよ!28日に満開だって!」
「本当だ!28日にしない?」
「そうしようか」
——3月28日、桜が満開になる日に私達は銀河街に行く。
そう考えただけでわくわくしたな。
悠太がふと思いついたように言った。
「行動予定表とかもあったらいいよね」
「うん。どうしようか」
「まずはざっくり決めちゃおう。午前中に集まって『ベーカリー モナット』に行こうよ。そこでお昼ご飯のパンを買えばいい。あ、朝ご飯でもいいけど」
「お昼ご飯でいいよ。モナットを出たら夜見月駅に行ってあたりを歩けばいいでしょ?それで夜になったら舟咲川沿いを歩こうよ」
「そうだね、そうしよう。それで美味しい屋台のご飯を食べるんだ」
「そして高台から夜景と星を楽しむの。まさに銀河街と呼べる景色が広がってるはず」
「うん。28日が楽しみだね」
そんな話をして、その日はあのビルの屋上に帰ったの。28日を楽しみにしながらね。




