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湖の都  作者: 妖兎
3/4

滋賀県のママ

転校初日のイベントである幼稚園との交流会を終え、

その他の授業もつつがなく終了した。 


(ふぅ、疲れたけど思ったより楽しい所かも。滋賀県って。)

土岐は、一日で滋賀に対する印象がすっかり変えられていた。

特に陰湿さを感じなかったクラスメイト達…ではなく、近江という少女によって。

(近江ちゃん、素敵だなぁ…。)

クラスの中心的存在である近江。

彼女が教師の手伝いに向かえば、クラスの男女数人がついていき手伝う。

休み時間には彼女の周りに人だかりができており、とてもじゃないが近づけないレベルであった。

(もう少し話したかったなぁ。あれ、近江さんそういえばどこだろう?)

HRも終わり、あとは帰るだけのはず。

教室には既にいないようでもう帰ってしまったのかもしれない。

「太郎、お前部活今日行く~?」

「え~タツキが行くなら行こうかなぁ。」

「俺は今日はアレ見に行くからな~~。」

「あぁ、アレかぁ…俺もアレみてオギャるわ。」

と、男子たちが部活について話している。

(そっか、部活って言う可能性もあるのか。)

「ねぇねぇ太郎君、近江さんの部活って知らないかしら?」

取り合えず近くにいた太郎という男の子に声をかける。

「知ってるよ。案内するか?」

「わ、ありがとう!お願い!」

「いいよいいよ、丁度オギャりに行くところだったし。」

(お、オギャ…?)

良くわからないが案内してくれるらしい。

取りあえず教室を出ていく太郎について行くのであった。




ざーーーーーーー、ざーーーーー。

まるで海辺にいるかのような波の音。

厳かな空気が漂い、あたりは沈黙が包み込んでいる。

部活には似つかわしくない神聖な雰囲気だ。

連れてこられたのはおそらく琵琶湖の畔。

海のような雰囲気だが、対岸に一部建物が見えるし、潮の匂いがしない。

何故こんな所へ…?

あのあと太郎について教室を出ていくと、何故か校外に連れて行かれた。

最初は訝しんだものの、今時校外で部活をする学校というのも珍しくはない。


「あの、ここに近江ちゃんがいるの?」

「しっ、静かに。あっちを見てごらん。」

太郎の指さす先を見ると、琵琶湖の水に腰まで浸かっている近江の姿があった。

「…何を、しているの?」

この場よりもさらに不可侵性を感じる雰囲気に、土岐は思わず生唾を飲み込む。

「禊かな。」

「禊…」

禊といわれ、納得してしまう光景。

朝から近江に感じていたよりも、さらに清らかな印象を受けるようになっていた。

だから知りたいのは禊の意味ではなく

「何で禊を?」

先ほどまで答えてくれていた太郎が黙り込む。

そして少し躊躇っていたがようやく口を開いた。


「彼女が、俺たちのママを呼べる唯一の存在だからだよ。」


”ママ”??????

「ママァ!?!?」

意味が分からない。太郎君と近江ちゃんは実は兄弟だった?

でも我々のママだともっといる??

土岐は大混乱に陥った。

「そうだよ、俺たちのママ…母なる湖である琵琶湖、その化身にね。」

太郎は真剣な表情だ。

そして一心不乱に近江を、いや、近江の方を見つめている。

その先に、何かが見えると言わんばかりに。

(やややややばいよ、滋賀県の人やっぱりやばかったよ。え、ママ?湖の化身?

宗教か何か???もうわけわかんないいいぃぃぃ!!!)

土岐のパニックがピークに達したその時


ざっぱあああああん。


ひときわ大きな水のうねる音。

そして気付けば近江の近くに、一人の少女がいた。


「おん…なのこ…?」

深く深く澄んだ青く長い髪。

背丈は私達と同じ位だろうか少し小さい。

瞳は覗き込むと不安にさえ思える透き通った碧眼。

そんな非現実的な存在が、近江の横に佇んでいた。

「土岐!ママに失礼だぞ!」

「え゛…もしかして太郎君ってロリコン」

「ちっがーーーう。あのお方が湖の化身”みわこ様”だ!!!」

「いやそんなこと言われても。」


確かに普通の女の子ではないだろうとは思う。

あんな髪の色をした人は、コスプレ少女か古いギャル位な物だろう。

しかもどことなく、近江ににた神聖さを漂わせている。


「ふふふ、いいんですよ。」

と、少女はこちらをみて微笑んでいる。

「私がこの琵琶湖から滋賀を見守っている神の美和子です。

こう見えて、それなりにおばさんなんですよ?」


初めてであった神様は、琵琶湖の様に深い心を持っているような

安らかな安心感を周囲に与えていた。


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