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湖の都  作者: 妖兎
2/4

近江のダンス

「ふぅ…」

土岐は席について近江の方を見る。

先ほどの騒がしさはどこへやら、先生の話を真剣に聞いているようだ。

(何の話を…?)

近江さんが真剣に聞いている先生の話に耳を傾ける。

「いいかーお前ら、今日はウチに併設された幼稚園にお兄さん・お姉さんとして

面倒見に行くからなー。」

どうやら東京では経験したことのないイベントがあるようだ。

どんなイベントだろう?と不思議に思っていると近江がこちらを見た。

「んー?あっ、そっか!土岐さんまだこっち来たばかりだもんね。

これは滋賀っていうよりこの学校特有なんだけどね。

お隣の幼稚園の子供たちと交流をして、お姉さんとして成長するってイベントがあるんだよ!」

「そ、そのままだね。」

近江のあまり説明になっていない説明にあきれつつも、

経験したことのないイベントに胸を弾ませる土岐。


「転校初日にこんなイベントがあるなんてラッキーだね!」

そういって笑う近江の笑顔に、弾んだ胸がさらに高鳴るのを感じていた。





----------幼稚園との交流会------------

「あ゛あ゛あ゛あ゛ああ゛ああ゛あゆ゛り゛ごぢゃ゛ん゛がう゛わ゛ぐづどっ゛だあ゛゛゛゛」

「キーック!パーンチ!」

「…ふひっ、おだんごきれいになった…ふふっひ…。」

「スカートほしいいいいい、ぼくもはくううう。」


(やっぱり滋賀は地獄だったか…。)

眼前に広がる阿鼻叫喚の地獄絵図に、先ほどの胸の高鳴りはすでに収まっていた。

出来ればもう帰りたい。それが無理ならそっと端の方にいたい。

そう思わずにはいられない光景だった。


「は~~~~い!皆集まって!!!おうみNOダンス!始まるよ~~~~」

地獄にさした光、それは近江の掛け声だった。

それまで好き勝手に暴れていた子供たちが一瞬で大人しくなったのだった。

「よーしいい子達だね!それじゃっダンス!始まるよ!」

「「「「「は~~~~い!」」」」」

先ほどまでとは違い恐ろしい位までにとられた統率。

一体何が起こっているというのか。



「わんっ!つー!わんつーすりふぉー!」


~♪


・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


突然流れる音楽、それに合わせて歌いながら踊る近江と子供たち。

まるで踊っていなければ不自然なまでの空気。

気付けば周りにいたクラスメイト達も踊っていた。

皆が誰一人間違えることなく踊っている。

この踊りはいったい何なの!?と気になって仕方がない。



そうして恐ろしいまでにテンションを上げながら踊るクラスメイト達を眺めていると

しばらくして曲が終わった。


「近江ちゃんすごい!」

土岐は一通り踊り終えた近江に駆け寄る。

「すごいよ!さっきまであんなに暴れまわってた子供たちがこんなに大人しく!」

土岐はあまりの光景に思わず抱き着かんばかりに詰め寄っていた。

先ほどまで暴れていた子供たちは、踊り終わった後も大人しくしており

まるで近江が救世主のように見えたのだ。

「いやいや~そんなことないよ~♪」

近江も褒められて満更ではないのか、嬉しそうににやけている。

「滋賀県民なら誰しもが踊れるダンス、その名もおうみNOダンス!だよ!」

「え、えぇえ!?お、近江ちゃんのダンス??しかもみんなが踊れるの?」

目の前にいる少女の歌とダンスが存在してしかも県民全員が踊れるという事態に驚く土岐。

「あっはっは!そうじゃないよ。滋賀の地方局にね、幼稚園に突撃してこのダンスと踊りをみんなで踊って、番組と番組の間に流してるのがあるんだよ。子供のころにみんな見てるから、滋賀の若者は大体踊れるんだ~!」

「そ、そうだったんだ。びっくりした~、近江ちゃん有名人なのかと思っちゃったよ。有名人って言われても納得するくらい可愛いし。」

先ほどから思っていた言葉がつい口から出てしまう。

「えっ…」

可愛いと言われて、何故か赤くなり俯いてしまう近江。

近江のキャラだったら「ありがとうニャハハ~!」くらい言って受け流しそうなものなのに。

「と、東京のホンマに可愛い人に言われたらあたしも照れるわ~。」

と、ぼそっと呟いて近江は子供たちの方に駆けていった。


「・・・」

近江の以外な一面と予想外の言葉に土岐は照れて、近江の方をしばらく見ることができなかった。

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