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このボス戦には、制限時間が設けられていた。そのせいか俺達は幾度か焦り、ミスも多かった。
何よりも、ガガが死んだことによる混乱が大きく、サラに至ってはボス戦に全然集中できていなかった。
ーー死んだ人間は、そのボスモンスターが超低確率で落とす「生命の小瓶」をその戦いで入手し、使わなければ生き返ることはない。
要するに、ガガが生き返る可能性は極わずかということだ。
そんなことをずっと考えながら漂っている内に、ボスモンスターのヒットポイントがゼロになって、ボスモンスターは全身を真っ赤にして燃え尽きた。
ボスモンスターを倒しても、何のドロップ音も出なかった。全員が静寂に包まれてサラは肩を震わせている。
そんな最悪の雰囲気の中、ロクだけがボスモンスターがいたところを見つめていた。その目は、とても戦いを終えた戦士のものだとは思えない、まだ戦っている目だった。
俺はそんなロクを見ていた。
「おい、まだガガはしんじゃいない」
突然言ったロクの一言の意味を、俺だけが理解した。
サラとサナは、瞳孔を大きく開けている。
「まだボスはしんじゃいない!」
俺が叫ぶ。もう床は揺れていた。砂浜の砂が空中を漂い始めた。
ボスが、復活する。
正確に言うと、このボスモンスターには第二体型があるということだ。
それに理解したサラとサナも、その砂の塊を睨み付ける。
結果、このボスモンスターには第二体型があった。
先ほどの姿と、あまり違いはなく、簡単に言うと「色違い」だった。先ほどが黒と白だとすると、こちらは紫と赤だ。
ボスモンスターコード[The Remaining Homework]
ボスモンスターレベル「魔王 第二体型」
ロクが武器を振り回して、そのボスモンスターに当たりにいく。
第一体型よりも少ない制限時間の中、俺達はよくやったと思う。
今回は、ロクが倒れた。
でも、良いこともあった。
アイテム「生命の小瓶」がたったひとつだけドロップしたのだ。
そして、残された三人は沈黙する。
本来、ボスモンスターを倒すとダンジョンから出るための通路が現れる。
しかし先ほどから見るに、この辺りの変化は全くない。
ーー第三体型があるボスモンスターなんて聞いたことがない。きっとスタート地点かどこかにダンジョンの出口が出てきているはずだ。
そんなことを半分願いながら確信していた俺は、もうガガとロクの問題を忘れていた。
そんな俺に、サラの叫びが突き刺さる。
「どうするのよ……これ……。……。……選べられる?こんなの!なんとかならないの!」
手に「小瓶」を持って、サラはヒステリックになっている。そのサラをなだめようとサナがするものの、一向に解決しそうもない。
弱い俺は、何も言うことができなかった。
サラとサナは、もうダンジョンから出ることを考えていなかった。
だから俺はひとり、無情にもダンジョンの出口を探しに出かけたのだった。
ひとりで歩く内に、遠くに地面が光っているところを見つけた。もしや、と思って近づいてみると、見るからに神々しい光を放っている地面があった。
はじめの方こそ、ダンジョンの出口かと信じていたけれど、その思いはだんだんと溢れ出る不安がつぶしていった。
俺はひとりで絶望の彼方に陥り、今頃になってガガとロクのことを考えた。
勇敢な二人と、俺。死ぬべきは俺の方だったんじゃないかとさえ思う。
ーーなんで、お前は生きている。
地面から発せられる光がそう言っている気がして、俺はもうこのダンジョンから抜け出さなくてもいいと思った。
ーー物語はここで終わる。




