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釣りガール、塩作りを見学する

 教会は教会側がお金を出して作っているので人口二百人前後の寒村であるカソレ村に似付かわしくないほど大きい。

 装飾には比較的お金を使っていないが彫刻が見事だ。腕が良い職人がいるんだな。

 中に入ると暗い中にもステンドグラスから明かりが漏れていて荘厳な雰囲気を醸し出している。お金を使わなくても良い物は出来るんだなあ。


 そこで気付いたがこの世界は様々な技術がかなり発展してる。十五~十八世紀くらい発展してるのかな?

 ファンタジーと言えば十~十五世紀が多い気がするけど、私は結構近代的な世界に生まれ変わったらしい。

 ちなみにステンドグラス自体は十世紀より前から存在していたらしいけども。

 だがこの世界なら遠心分離機も作れそうだし、電気も作れるかも知れない。細かい事は追々考えるか。それに私はスローライフの為に生まれ変わったんだ。あんまり発展的な事をやると忙しくなって釣りが出来なくなるかも知れない。それは嫌だし、釣らないガールはただのガールだ。


 教会に入って驕奢なムードの教会内を真ん中まで進むと、牧師様が出てくる。その後ろにはこの世界の神様である、三柱の女神像が置かれている。

 左から、太陽の女神様、星の女神様、月の女神様の順番に決まっているらしい。真ん中の女神誰だ。普通にワンピースを着た清純そうな乙女なんだが。私の知ってる中二神と違う。


 牧師様が舞台脇に頭を下げると星の巫女と呼ばれる女性が出てくる。この教会の宗派、三女神教は女性の方が立場が上になる。前世では珍しい宗教形態だ。日本は天照大神様が女性だからつい普通だと思ってしまうけど。


「三女神様にお祈りを」

「はい」


 巫女様に促されて私と牧師様は頭を下げる。巫女様は私たちに三女神の神話を語って聞かせてくれた。

 ……遥か昔星の女神様は大神災と呼ばれる災いを起こし全ての人から魔法や技術、知識を奪い人を裁いた、とか、あの女神様めちゃくちゃやってた。怖い。


「星の女神様は怖い女神様ですが優しい女神様でもあります。信じて敬っていればシズク様のように女神様の寵愛を受けられますし恐れる事は何も有りませんよ」


 狭い村だからバレバレである。ルアー竿を持ち歩かない訳には行かないし仕方ないね……。

 巫女様はアミ様、牧師様はシルルアーノ様と名乗られた。アミ様は銀の髪に赤い瞳で十四、五歳くらいに見える。シルルアーノ様は六十過ぎのお爺ちゃんだ。

 私は二人にお礼を言って教会を出た。女神様と話せたりはしなかったな。


『教会嫌いだし』

「うわわっ」


 急に女神様に話しかけられてびっくりした。え、女神様だよね? 何か突然に頭の中に声が響いた。


 しかし、その一言を言った後は女神様はなんにも言わなかった。





 塩田にたどり着いた私は塩作り職人さんに話を聞いてみた。入り浜式の塩田で濃くなった海水を煮詰めるやり方だったが、やはり塩分濃度の計り方も知らなかったし、カルシウムやマグネシウムが析出すると苦くなる事など知ろうはずも無かった。


 この世界の海水の塩分濃度などは定かではないが、海水は蒸発していくとまず硫酸カルシウムが析出する。これは少し苦いし食べられない。二十五度から三十度ほどの濃度になるまで塩化ナトリウム、つまり塩が、そこを過ぎると硫酸マグネシウムなどのマグネシウム分が析出する。

 このマグネシウム分が非常に苦い。そもそもこれがにがりの成分である。お豆腐は畑の物のようで海の物でもあるのだ。いつか作ろうと思っている。


 塩度計を木の浮きで作って塩が析出する仕組みを塩田の職人長、オキヤシさんに教えておく。海水に限った話ではないが濃度が高くなれば物は浮きやすいし薄ければ沈みやすくなる。何度か実験してみれば良い塩が出来るようになるはずだ。物理現象は概ね地球と変わらないし多分大丈夫だろう。わざわざ女神様が知識を残してくれたんだから使えって事だと思うし。

 後は天日塩とかだが、そこまでは私がやらなくても良いだろう。釣りの時間が減る。


 さて、次は宿屋に行き、料理を教えないといけない。ここの宿屋はなんと温泉宿である。刺身と魚の焼き方、カルパッチョ、マリネなどの簡単な物を教えておく。一度に教えても身に付かないしね。生物を出させるから衛生についてもしっかり教育しないといけないし。浄化魔法使えば大丈夫なのかな?

 そのうち豆腐や蒲鉾、魚肉ソーセージを作ってもっとメニューを増やしていくつもりだ。魚肉ハンバーグやつみれ汁、マグロステーキとか簡単なメニューはまだまだたくさん有るからね。


 帰りに港に寄り、一釣りする事にした。狙うはイカだ!

 昨日のレベルアップで手に入れたエビ餌を使いイカをばったばった釣りまくろう。

 港に着くと灯台まで進み外海に向かって釣りを始める。召喚したのは気分を出すためにエギングロッドだ。

 エギングとは餌木と呼ばれる特殊な形状のルアーを使いイカを狙う釣り。餌木はエビの形を模しているのだがその尻尾部分には傘のような棘が付いている。イカが餌木を食べようと抱き付いた所で引っ掛けて釣り上げる、結構荒っぽい釣り方だ。


 さて、また魔物が釣れてこないと良いけど。

 しばらく大きめのエビ餌を投げ込んでロッドアクションを加える。気付いたのだが魔法餌は魔力を食わせる事で生きているようにアクションするようだ。虫餌スキルで作ったゴカイにたまたま魔力を加えてしまったところ、うにうに動いてびっくりした。とても気持ち悪くて良く釣れそうなアクションだったので最近は海に投入してから魔力を入れる事にしている。


 と、ガツン、と、当たり!


「イカこいー!」


 エビ餌は色々な魚が好物にしているし魔物魚もいるこの世界だ。狙った獲物を確実に穫るのは難しいだろう。

 案の定釣れてきたのは別の魚のようだ。






 海水を蒸発させただけの塩は苦いです。更に流行りのミネラルたっぷりの天然塩は取りすぎたら勿論体に悪いです。

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