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釣りガール、海鮮の旨味で王女を釣る

 ステラ王都はこの世界で最大の都市であり、豊かな森と海を有する広大な大陸の流通の中心地である。

 様々な美味いものの香りが町中に漂っていて、私もカイリちゃんもあっちにふらふらこっちにふらふら。


「ん~! シンプルな肉の香りがたまらないわ!」

「あ~! やっぱり肉も良いなあ!」


 私はもちろん肉も好きだ。むしろ時々ヤマドリとか猪を狩りたいと思う。


 この町には冒険者ギルドもやはり有るようで、情報を得るために四人で寄ってみることに。

 カワヒラ領にも冒険者ギルド設立の打診があった。もちろん了承したのですでに仮設ギルドが出来ている。

 主要な依頼が魚調達だったりするので冒険者でもある私は既に仮A級と言うことになっている。

 ランクの最大はSだが、Sランクはギルド経営に口出しできるので貴族は基本的にSランクになれない。て言うか仕事が忙しくなるからならない。

 しかし、まあ貴族だと聞けばギルドも特別な対応をしてくる。あんまり良くないのだけどね。

 マンサ様が対応する。


「マーリン大陸グラル女王国伯爵、マンサ=アミヤです。この町の情報をいただきたいのですが」

「これは遙々とようこそお越しいただきました、マンサ様。国防に抵触しない情報でしたらどんな情報であれ有料では有りますが供出いたしますよ」


 有料のところで声が小さくなった。受付の女性は二十代で今世のお母さんに似ているから可愛い感じだ。

 マンサ様も迫力を増してきた魅力があるので受付さんはタジタジになっている。


 この町の市場は簡単な登録で露店をだせるらしい。浄化魔法があるお陰で衛生面の問題が無くてこう言った認可は前世より遥かに緩いようだ。

 ちなみにマンサ様とシラサさんはこの町に何度か来ているのでこの情報収集は私とカイリちゃんのためにやっている。


「よし、じゃあ魚売ろうか!」

「売りますっ!」

「料理作るわよっ!」

「食べる」


 シラサさん、売り物です。

 カイリちゃんと二人で計画を練って二種類の料理を出すことに決めた。

 なぜ屋台をやるのかと言えばこの国の王女殿下が凄い食い道楽で、屋台をやっていたら食いつくかららしい。

 王女釣りだ。


 いや、どうなのそれ、と、マンサ様に突っ込んだが、それはある意味この国のルールになっているらしく。

 釣られた王女殿下は無条件にこちらの話を聞いてくれるらしい。

 どんなふっくらした王女殿下だろう。私みたいに筋肉質か?


 カイリちゃんが作る料理は貝のバター醤油焼きとカレーとサラダのセットの二品。

 カレーは海鮮とキノコたっぷりの海鮮インドカレーでお酒やスパイスなんかを絶妙な配合で使っていた。

 私なんかでは何を使っているのかも分からないが、聞いたら赤ワインとかフェネグリークとかいろいろ教えてくれた。

 カレーにフェネグリークを入れると香りがまろやかになるらしい。さすが料理人の称号をもらうだけあって、カイリちゃんのスパイス系の知識は凄い。


「サラダに使うトマトにクミンと塩、黒胡椒はもちろん合うんだけど、バジルかオレガノとオールスパイスに黒胡椒、塩を組み合わせてもマイルドでなかなか美味しいわよ」

「凄いな~、そう言うの自分で研究するの?」

「残念ながら全部独学よ。専門家ならもっと詳しいのかもね」


 いやいや、十分詳しいって。私などただの釣りガールだからね。

 魚を焼く時には下味と別に仕上げのスパイスを使う、とかそう言う私の知らないレシピをバンバン教えてくれるカイリちゃんはちっさい女神である。ちっさいって言うと「シズクがデカいのよ!」と言われるから言わないが。


「貝のバター醤油焼きにオレガノとタイム、クローブ、黒胡椒を使って……」

「うはっ! すっごい香り!」


 クローブやオールスパイスって単独で使うと香りが甘すぎるのだが、他のスパイスを混ぜると柔らかな香りに変わる。

 そのバランスが絶妙で気絶しそうな良い香り!


「アイテムボックスに保管するから一万個ちょうだい~」

「ありません」


 マンサ様もヘロヘロである。「はっ、ノット君と結婚したら毎日こんなのが食べられるかも?!」とか言い出したが私もカイリちゃんもスルーした。

 ノット君はご愁傷様である。


 屋台が物凄く盛り上がる中、ふと人混みがモーセの十戒のごとく割れる。

 見ると、オッドアイの真っ白なドレスを纏った可愛らしい少女がテクテクと歩いてきた。

 釣れた?


 その少女は小さく、細く、可愛らしく。星の女神様と瓜二つの風貌をしていた。


「つか、女神様?」

「いや、あれがこの国の王女様、レイカ様よ」

「女神様そっくりなんですけど……」


 どうやら王女様は星の女神様の生まれ変わりらしい。変に中二な服装をしていないのでびっくりするくらい美少女オーラを放っている。

 思わず息を呑む。


「美味しそうな香りですね」

「あ、あの、並んでくださいますか?」

「ん~」


 なんだろう。まさか女神様みたいにわがま……自由なのだろうか?


「私は最後でよろしいので皆様、お並びください」

「無理無理無理!」

「殿下からどうぞ!」


 民衆は彼女がいくら遠慮しても王女様の前に並ぶのを拒否した。王女様は困惑しているがいつもこんな感じなのだろう、こちらに歩み寄ると「並べなくて申し訳有りません」と謝ってきた。どんだけカリスマなのか。

 呆れるくらい美女だし、以前聞いた話通りなら彼女は星の女神様の聖女だ。

 ……私も前に並ぶの拒否するわ。


 そこまで思い至ったので普通に料理を給仕することにした。


「ん~~~~~~っ!!」


 貝のバター醤油焼きを口に含んだ王女様は物凄い笑みだ。女だけど惚れそう。

 カイリちゃんが「王女様と結婚したい」とか言い出したので全力で止めた。料理人にはお客様の笑顔が最高のスパイスのようだ。


「相変わらずね~、レイカちゃんは王女オーラ有り過ぎ」

「お恥ずかしいですわ」


 これ女神様の生まれ変わりじゃなくて別の魂が入ってるよね!

 目の前の王女様はその細やかな所作に至るまで完璧な淑女だ。前世でもかなりなレベルのお嬢様だったに違いない。


「本当に私は望んでないのですがなぜか王女に生まれ変わってしまいまして。なのであまり遜らないでくださいな」

「無理です」


 可哀想かも知れないが無理だ。オーラでやられてしまう。

 まずは美少女オーラに慣れないとね。そう言うレベルである。


 王女様は「熊でも狩ってきたら王女扱いされないかな?」とか言い出したのでやはり全力で止めた。疲れる人だ。

 しかしやはりレイカ王女は女神様の生まれ変わりらしく、根っこは凶暴な雰囲気が見え隠れしている。

 ともあれ、王女様釣りは一応は成功か。






 料理ネタを書いていると良く分からないんですが、ホッとします。

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