釣りガール、ついに釣りをしていないことに気付く
すみません、寝てしまってました。
なんだか最近私の周りがにぎやかで、ついつい釣りを忘れてしまっていたことに気付く。
まあ忘れてたと言いながら毎日釣りはしていたりするのだが。モンスターとか。
それで久し振りに何か変わった魚を狙おうかと思い立った。
近々ナミエと一緒にカイル君に会いに行くので、その時にはカイル君に美味しい魚を食べさせてあげたい。
そこで以前岩喰いを釣っていた時に横から岩喰いをかっさらって行った魚を釣ってみることにした。
まずは岩喰いを十匹ほど釣り上げて餌にする。岩喰い自体が釣って面白い魚なのでカイリちゃんを連れて釣りに行く。
ノット君はお店があるので来れない。たまには誘ってあげないと可哀想かも知れないね。
釣り場の岩場にテレポートすると先に釣っている人がいた。
一人はエルフのシラサさんで、もう一人は村人のケイ君だ。
なぜ二人が釣りをしているのか。
「岩喰いならなんとか釣れるからね。たまに釣ってるんだ」
「なぜか誘われた」
どうやらシラサさんはたまに自分で魚を釣っているらしい。
私が釣る分はカワヒラ領内で流通させているのだがやはり自分で釣った方が安上がりだ。シラサさんは狩人なので釣りもすんなり入れたのかも知れない。
釣りガールがだんだん増えていくな。カイリちゃんも目覚めたようだし、嬉しい。
ケイ君はなぜかシラサさんに無理矢理連れてこられたようだ。やっぱり女神様の寵愛を受けている者同士だと仲良くなりやすいのか。
「シズクちゃん、もしかしたら数年以内にニウルークとの戦争が激しくなるかも知れない。ニウルークは大船団も持っているので直接こちらに来る可能性がある」
「そうなんですか。釣りの邪魔ですね」
「私たちもいるし、大丈夫じゃないの?」
カイリちゃんは料理人スキルで戦えるらしい。千切りスキルや微塵切りスキルで岩をも砕く前衛職だそうな。
女神様が作りそうなスキルだなあ……。
「まあ注意すると良い……おっ、来たな」
「おお、大物ですね」
「……釣れない」
「私たちも釣るわよシズク」
どうやらシラサさんはすでに何本か大物を釣り上げ、逆にケイ君は釣れていないようだ。
カイリちゃんにせっつかれたので釣り竿を出して渡す。餌は小魚で行こう。
「わわっ、すぐに来たわよ! おっきい~! 重た~い!」
ビギナーズラックだろうか、カイリちゃんは入れ食いだ。そう言えば漁の神様は女好きで女の子の方が釣りが得意、なんて話がある。
男性よりも辛抱強く狙うから釣れるのかも知れないが。
潮目が変われば釣れてくることがあるからポイントを移動しないで釣っているとなかなか釣れないのだが、そこに後から魚の群れが回遊してきて釣れ始めたりする。
ポイントを見切るのも大切なのだがじっくり釣るのが正解と言うことは良くある。
「きゃ~っ、おっきい~っ!」
「タモ出すよ~」
「……釣れない」
「お、こっちももう一匹だな!」
地球の漁の神様が女好きかは知らないが、この世界の漁の神様は明らかに女の子に贔屓してる気がする。
マンサ様とか数釣りで勝ってたしね。
「この魚はローストにしようかしら。ムニエルでも美味しそうね」
「煮込んでも美味しいよ。唐揚げもイケるし」
「良いわね! 野菜詰めにしてもイケそうね。ケイもいるし野菜出しなさいよ!」
「……釣れない」
カイリちゃんと釣りをすると料理の話が出来るから楽しいな。
そしてケイ君はまだ釣れないらしい。
さて、私も二、三本釣り上げて本命の岩喰いを食う魚を狙おう。
いったいどんな魚だろうか。未知の魚を釣るのはいつでもワクワクするな。
頭や鰭に針を刺して小さめの岩喰いを泳がせる。
この生き餌を泳がせる釣りの難しいところはすでに魚が釣れている状態なのでアタリが分かり難いところだろう。つまり魚が食らいついた動きか餌が逃げた動きかが分かりづらいのだ。
釣れたと思ったら餌が走っただけだった、とか良くある。
慎重にラインの動きを追う。
熟練の釣り人は水中を見ずとも把握できるのだ。スキルはいらない。
「……」
「シズクが無口なの珍しくない?」
「いつも独り言を言ってるな」
シラサさんが辛辣だ。シラサさんの前世の名前は田中白紗だそうな。キラキラしてる良い名前だね!
まあそれはそれ、この釣りは本当に難しい。下手をしたらルアー釣りより難しいかも。
魚食魚の捕食シーンはなかなか拝めないしね。
シラサさんやカイリちゃんたちが何故か私を野次る中、ついに当たりが!
つかリア充爆発しろと唱えながら踊るシラサさんとカイリちゃんが気になる!
「とりあえず、ヒット!!」
「おお、……俺はまだ釣れない」
あ、うん、頑張れケイ君。
いつもの背景はナミエのダンスだが今回はシラサさんとカイリちゃんの爆発ダンスだ。魚が釣れたら背後でダンスする文化って割と楽しそう。
まあ今釣れてきたのは三十センチオーバーの岩喰いを丸呑みする魚である。かなり手強い。
一本釣りでギリギリ釣れないくらいだ。いつもなら楽勝だが、今回は引きを楽しもう。
ちなみにあんまり釣りが長引くとATP(アデノシン三燐酸)が乳酸に変わって味が落ちるらしい。
ATPは分解していくとイノシン酸と言う旨味成分になる。
以前熟成について考察したが、大切なのはこの旨味成分までタンパク質を分解することだろう。
まあその過程でヒスタミンが発生したりして一筋縄ではいかないのだが。
ヒスタミンは菌由来なので新鮮な状態の時に菌を抑えられるなら問題はない。冷蔵庫での保存、アルコール消毒、塩漬けや酢漬けなどの方法で恐らく抑えられるはずだ。
魚による食中毒は概ね菌由来か寄生虫由来だ。こちらはごく低温で保存し、熱を加えれば大体は回避できる。
しかし河豚毒やシガテラ毒などは専門的な知識が無いなら食べるのを避けるしかない。
まとめると、食べられる魚を釣ったらあんまり抵抗される前に釣り上げて絞めて血を抜いて氷にぶちこんで家で血合いや内臓、うろこを落として良く洗い、冷蔵庫で数日保存すればなかなか旨味も強く熟成できると言うことか。
まあ釣りたての新鮮な魚でも良いや。私は。なんかめんどい。
さて、魚が釣れてきたぞ……!!




