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釣りガール、勇者と再会する

 敵はどんどん強くなっている。

 らしい。

 らしいと言うのはオークだろうがオーガだろうが狼だろうが虫だろうが一発で釣り上げてクーラーに叩き込んで解体する作業しかしていないからだ。

 相手が五メートルとかあるヒュドラでもスルッと釣り上げて解体の繰り返し。十メートルは無いと苦戦はしないだろう。

 ダンジョンがそんなに大きくないのだから苦戦なんてしようが無い。


「釣りのっぽちゃん強過ぎ~」


 クロシさんは道案内だけしてくるくる踊っている。

 ナミエなら可愛いけど薬物依存患者みたいなクロシさんなのでひたすらに気持ち悪い。たまに抱きついてこようとするので途中で何回か殴った。

 そんなこんなしながらもなんとかダンジョン十五階まで降りる。本当にここまでの道をクロシさんは覚えていた。

 言動はどこまでも気持ち悪いが馬鹿ではないらしい。


「勇者カイル君発見~。待ってた?」

「うわ……オナガル伯爵……」


 カイル君と再会出来た。出来たけどクロシさんと一緒なのでいろいろと台無しだ。


「カイル君!」

「し、シズクちゃん!」


 カイル君は子犬のようにこちらに走ってくると私を抱きしめた。……抱きしめられた。


「はわわわあっ!」

「会いたかったよ!」


 うん、まあ私も会いたかったんだけどね。

 胸が熱い。これが好きってこと?


「はいは~い、リア充爆発しろ! ダンジョンでいちゃいちゃしな~い、さっさとテレポートして帰ろうぞよ~」


 クロシさんの言っていることは正論なのだが抱き合っている私たちの間に顔を出して来るのでやはりウザい。


 とにかくまずはカイル君の用事を済ませてから脱出する事にしたが、私が協力すると一瞬だった。

 カイル君もひたすら強くて、剣を振りながら戦っている姿は凄く格好良かった。

 顔だけの男じゃないよ、カイル君。


「チッ、世界中のリア充の靴下に穴が空く呪いをかけてやる……」


 なんて地味な嫌がらせの呪いをかけるのか。と、言うか私はリア充だったのか。

 いつの間にリア充になったんだろう。

 ……カイル君が婚約してくれたからだが。

 ……こ、こんにゃく……。


「シズクちゃん、顔が真っ赤」

「う、うん。カイル君と婚約してたんだなあって思い出して」

「う、うん。愛してるよシズクちゃん」

「あ、有り難う。私も……好き」

「チッ、チッ、チッ、チッ……」


 クロシさんがウザいので帰ってからいちゃいちゃする事にした。

 と、言うか無茶をやめるように言いに来たはずが私がここまで無茶な速さで来てしまったので、実はカイル君の実力なら楽勝なのではないかと言う疑いが出てきた。

 ここまで連れてきてくれたクロシさんには感謝しているけれど。

 結構お節介な人なのかも知れない。


「チッ、チッ、チッ……」


 時計か。親切さの評価よりウザいのが勝る。残念な人物だ。

 私たちはクロシさんを迷宮に置いてカイル君の拠点テレポートで帰ることにした。


「置いていかないでえええ……」


 何か言っていたが放置してカイル君はさっさとテレポートした。





「じゃあ、無茶はしてないんだね?」

「うん、なんだか物凄く強くなってて楽勝だよ。神器召喚したらボスも一撃だし……」

「それはそれでなんだかつまらなそうだね……」


 いつも思うがあの女神様はやりすぎである。ちょっと楽しい戦いとかしたかったらスキル無しで戦わないと駄目だろう。


「でも早くシズクちゃんに会いたかったからスキルは全開気味でやってたから……」

「そしたらクロシさんが心配するほど稼いじゃったんだね。なるほど」


 やはり女神様のスキルが強すぎる。私みたいなとても冒険に不向きな存在でもあそこまで簡単にダンジョンを潜れたし。もちろんクロシさんの案内が有ったからこそだが。


「心配させてごめんね。でも会えて嬉しいよ」


 また抱きしめられたが、今いるのは宿屋の一室である。非常に恥ずかしい。

 人前の方がもっと恥ずかしいけど。


 でもこうやって触れ合っていると幸せにも感じる。

 ああ、好きなんだなって思える。


 今日はたくさんモンスター釣りをしたから、良いかな。ゆっくりしても。


 まあ十二歳なので抱き合う以上のことは無かった。軽くキスして、帰ることにする。


「次はいつ会えるかな?」

「またカソレ領に行くよ」

「カソレ領の名前ね、今度カワヒラに変えることになったから」

「カワヒラ領か、良いね」


 カソレのままだとシズク・カソレ子爵、釣爵になってしまう。なんか嫌だ。

 なので女王陛下にお願いして変えることに。

 気軽に女王陛下に会えるのも凄いな。グラルは平和な国だ。

 ちょっと名残惜しいけれど、また会える時を楽しみにしよう。


 今日はもう遅いが釣り場テレポートですぐ帰れるので帰還した。

 それにしてもとても濃い一日だった……。





 家に帰るとマンサ様が待っていた。私の左手を見て呟く。


「行き遅れた」

「マンサ様まだ十九ですよね、全然行き遅れて無いですよ」

「この世界はだいたいの国が十五で成人二十で行き遅れ」


 マンサ様は可愛いし若々しいのだが、周りに良い男がいないらしい。お爺ちゃんが多いしね。


「話はいろいろ来てはいるんだけど」

「じゃあ大丈夫じゃないですか?」

「十歳とか五十歳とかでも?」


 貴族は政略結婚が多い。グラルは小国で数も多くないためにどうしても年の差婚になるらしい。


「そう言えばボンズ帝国のリッツ様は結婚されてるみたいですね」

「そうなの?!」

「行商に行くと早く子供を作れと上からせっつかれる、とか愚痴ってました」

「う、うらやましい……」


 マンサ様の近くで一番合いそうなのはニッケル様だけどわざわざ格下の貴族のニッケル様とマンサ様が結婚する意味はあんまり無さそうだ。そもそも寄り子だしね。


「ニッケル様とかも駄目ですかね」

「ニッケルねえ……悪くはないんだけど」

「失礼だけど……パッとしませんね」

「パッとしないのよ~……」


 その後私のノロケとマンサ様の愚痴が響く食堂で、サービスで料理を作りに来てくれたカイリちゃんの美味しい料理を楽しんだ。


 マンサ様のお酒の量が増えたのは言うまでもない。






 時計ネタ分かってくれたら嬉しいですw

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