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釣りガールの異世界スローライフ ~釣りスキルで村を大きくします~  作者: いかや☆きいろ
第三章 釣りガール、大陸を釣る。

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閑話・君とさよなら

 恋愛は何故幸せなのに切ないんでしょう?

 僕はカイル、勇者だよ。

 勇者なんてやってられないよ。止めたいって女神様に何度か言ってみたらすっごくバカにされた。


『ばーかばーか』

「子供!?」

『いいのよ、勇者やってれば。中二かっこいい魔法とか考えなさいよ』

「ギガンテックドリルサンダーとか?」

『かっこいい! それそれ!』


 よく分からないけどツッコミ不在と言う言葉が頭をよぎった。

 自分もあんまりセンスは良くないが女神様も相当だと思う。でもこれは仕方がない。僕は女神様の分霊と言える存在らしいから。

 意識は別なのに魂は同じなのだとか。意味が分からないが現実に女神様と僕は考えることが似ている。

 特にシズクちゃんが大好きなところとか。


『やっぱりすらっとしてるのとか一直線なとことか脳筋なとことかが良いのよね』

「分かる」


 僕がシズクちゃんと会ってから今まで、毎日のようにナミエちゃんを含めて三人で遊んだ。

 たくさんご馳走にもなったなあ。最初の頃も上手だったけど、シズクちゃんは料理がずいぶん上手くなったと思う。


 シズクちゃんにこっちを向いてもらうにはどうすれば良いんだろう。前世では勉強しかしてなかったから分からない。

 それで死んじゃうんだから全く何をしていたのか分からないや。

 だから今回の人生では自由に生きたかったんだけどな。


 でも僕は勇者だからやっぱり皆に期待されてしまう。最初は国に秘匿されもした。

 そんな状況で僕をよくからかってくる人がいた。

 クロシ=オナガル伯爵だ。

 彼はエサイルの女神様の寵愛を受けし者で商人なのだけれど、何故女神様に愛されてるのか分からないくらい意地が悪い。


「よお、おチビちゃん、元気かい? 元気じゃないよね? 元気だったら虐める」

「なんで!?」


 よく分からない人なんだ。ただひたすら意地が悪いのだけは分かる。

 僕のことをいつまでもチビとか女顔とか男の娘とか……よく分からないことを言ってくる。


「女装して敵陣に切り込めば壊滅! むしろ星の女神様のファッションで! ハアハア……」


 この人の中身は多分ただの変態だと思う。

 女神様曰わく、ひねくれてて変態だけど根は良い子、らしい。

 ひねくれてて変態って、それもう根が良いくらいじゃ挽回できなくない?


 とは言っても彼にはお世話にもなった。僕に爵位を与える話になった時、十五歳まで自由にさせるように言ってくれた。

 そしてある日、和食を僕に持ってきてくれて、詳細の調査のために旅立つことを許してくれた。

 クロシ伯爵も元日本人だからたぶん自分で調べたいはずなのに。

 まあクロシ伯爵はマンサさんと同じ商人スキル持ちだからいつでもテレポートを使いまくって行けるのかも知れないけど。

 実際その後カソレ村で何度か会った。

 シズクちゃんと仲の良い商人のオシモさんと何度も大量に取り引きしているらしい。しっかりしている。


「カイルももう十五だな。彼女ともお別れか」

「うっ……そうだね」

「ふへへ、泣くな? 泣くだろ? むしろ良い声で鳴けよ?」

「何か発音が不穏! 泣かないよ!」


 でも実際いつまでも遊んではいられない。エサイルにはダンジョンやニウルーク帝国のような脅威がある。

 もしエサイルが崩れればグラルも侵略を受けることになる。

 そうなったらシズクちゃんも穏やかに釣りや料理だけしている訳にはいかないだろう。

 僕がシズクちゃんの平和を守るんだ。真っ直ぐで脳筋なシズクちゃんがそのままでいられる世の中にしないと。


「そう言や我が国では男子が十五歳になれば十二歳以上の娘と自由に婚約出来るんだが……エサイルの貴族にもフリーの娘は何人も余ってるからなあ。貴族になれば毎日のように婚約を申し込まれるだろうなあ。羨ましくなんかねえぞお……」

「それって他国の貴族でも?」

「ちっ、そこに気付くのか。大人しくエサイルの貴族に婿入りしとけば良いのに……」

「しないよっ!」


 そうか……。シズクちゃんとも婚約出来るかも知れない。

 たしかシズクちゃんももうすぐ十二歳。しかも貴族だし女神様の眷族だから大義名分も立つから婚約出来る!


「で、でもいきなり婚約……性急過ぎるかな……」

「けっ、リア充が。王女とでも無理矢理婚約決めてやろうか」

「や、やめてよ」


 本当にクロシさんは禄なことを言わない。まあ本当にはやる気ないだろうけど。

 ……自国の貴族にも狙われてるからさっさと決めろって話だよね?

 クロシさんは親切心が一周ねじ曲がっている人だからたぶんそうだ。

 爵位を得る運びになったらすぐにも、シズクちゃんに……。


 その前にしっかりナミエちゃんと話しておこう。刺されるかも知れないし。


「ナミエちゃん、僕シズクちゃんに婚約を申し込もうかと」

「滅べ! グリモワール!」

「うわあっ!」


 ナミエちゃんはいきなり攻撃してくるけど、なんとなく慣れた。ちゃんと説得しないとね。


「シズクちゃんが十二歳になるとあちこちの国の貴族から婚約の申し込みがあるよ。僕の方がちょっとマシじゃない?」

「むむうっ、筋が通っているような……」

「虫除けだよ、虫除け」

「そのままなし崩し的に結婚までするのでしょうが!」

「それはもちろん……ってグリモワール構えないで!」


 やっぱりこう言う話はナミエちゃんにするべきじゃ無かったか。命がけでシズクちゃんを追いかけてる人だし。


「同性の私じゃ駄目なんですかね……。お姉さまを幸せにするのは、私では……」

「ナミエちゃん……」


 世が世なら同性婚もあるだろうけど、この世界ではね……。幾世生まれ変わるうちにいずれかその日も来るかも知れないけれど。


「遠いですわね……。……お姉さまを不幸にしたら許しませんわよ……?」

「えっと、認めてくれるの?」

「むきーっ!」

「うわわっ!」


 また襲いかかってきた。ずっと命を狙われることにならないよね?

 とにかく話は僕とシズクちゃんのことだ。

 貴族として国に召喚され、君とさよならするその日までに。

 勇者なんだから勇気を出して、告白しよう!






 遂に登場したクロシ=オナガル伯爵のインパクトでシリアス展開が死にました。

 ナミエ? いつもの事なので説明するのも蛇足かと。

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