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釣りガールの異世界スローライフ ~釣りスキルで村を大きくします~  作者: いかや☆きいろ
第三章 釣りガール、大陸を釣る。

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閑話・神話

 やあやあ、星の女神だよ。

 今日も死んだ人間をあっちの世界にこっちの世界に飛ばしては観察して、たまに降臨したりして遊んでいるよ。


 さて、今日も空からいろんな子ども達を眺めている。スキルとかはノーパソの形をした神の計算仕事をサポートする存在に予め入力してある。

 入力し忘れていて慌ててスキルを追加したりもするが、まあ私はこの程度の神様だ。

 世界の全ての知識にアクセス出来るし、世界中の誰が出来ることでも同じようにできるから全知全能って言えばそうなんだろう。

 しかし私の魂自体は酷く平凡だ。間違いもするし、失敗もする。無力に打ちひしがれもする。

 世界の運命にはどうしても手入れが出来ない部分がある。

 破滅や死を予見出来ていても回避は出来ない。悲しみが待ち受けているのを知っていても、眺めることしか出来ない。

 神だからなんでも許される訳でもない。私は低級神だしね。元は人間だし。

 私が神の座に就いたのは千年ほど前だけど、この世界は不思議にもどれだけ手を入れてもファンタジーのままだ。特に私が変えたいと思っていないのを反映してるのかも知れないが。


 さて、今日もシズクちゃんを見てみよう。近未来は見えているがどのタイミングで介入するべきか。

 ……またご飯食べに行きたいし。今はノットとカイリもいるし、美味しい物が食べられそうだ。


 さて、問題なのはカイルだ。コイツはちっとも私の思うように動かない。

 記憶を一部封じてるから仕方ないんだけどね。

 クロシの奴や別大陸にいる私の分霊をカソレ村に遣わせないとダメかもね。刺激を与えないと。

 まあなんとかやるでしょ。私だし。

 これはもう見てるしかないか。自分のもう一つの人生「カイル」を楽しもう。


 それよりも配下を使って計算を進めないといけない。幾つかの回避不能な問題を打ち砕くために。

 あの子達のために平和で素敵な未来を私は作る。そのためにも計算は進めないといけない。


 この魂の世界には時間が無い。だけど無限に時間をかけられない理由がある。

 それは世界に干渉できるレベルが決まっていることや、世界に干渉する計算はその世界の時間軸に乗せて行わないといけないからだ。

 ……何が全知全能やら。全くの無能な下級神だ、私は。



 少し昔話をしよう。あの子の後輩ちゃんは元の世界で数年後に死亡することになっている。

 その後、彼女は今から三百年ほど前のこの世界に生まれてきている。

 時間軸が違っている世界への介入は斯くも複雑だ。まだ死んでいない魂が死後に次の世界に生まれ変わっている。

 しかしこれは魂界から私がアクセス出来る限界だ。本人の魂はちゃんと命を終えてから生き返っている。

 私に分かるのはその大まかな人生の流れだけだし、それが個人の努力で変わることがある。死の運命だけは先に延びることはあっても変わらないが。

 まあ人は必ず死ぬからね。


 だから少し期待している。二百年前に確定した運命が本当は少しズレる可能性が有るからだ。

 そしてそれはシズクちゃんの運命を変えるかも知れない。ほんの少し、たかだか百年程度寿命を延ばせるかも知れない。

 大いなる運命とやらが歪むかも知れない。それは後輩ちゃんの働き次第だろう。

 そう、シズクちゃんの後輩ちゃん※※※※ちゃんは、魔王ちゃんだ。

 本当に大切なあの子だが、私は故に余り手を貸すことはしなかった。

 運命を変えられるのは本人だけだ。私は不確定な世界を、ただ眺めているのが一番良い。

 神が介入すれば、運命は決まってしまうから。もし本当に運命が変わるなら、その時には私が手を貸そう。

 後輩ちゃんはもう死んだ。と、されている。

 私は後輩ちゃんが戦争に巻き込まれたことをきっかけに大破壊を行ったが、それは後輩ちゃんの死を理由にしていない。

 私は世界を改変するだけだ。命たちはどんな世界でも自分たちで運命を変える。

 そう、神たる私の手すら潜り抜け、運命は変わっていく。まるで未完成の物語のように。

 シズクちゃんはやはりいずれ死ぬ。神の私から見れば瞬間的な人生を楽しみ、悲しみ、苦しみ、喜び、怒り。

 私はただ見つめるだけ……あ、シズクちゃんが美味しそうな魚釣った。食べに行こ。





「つまり神様をやるのも大変なのよ。何億何兆の魂の流れを管理観察しないと駄目なのよ。疲れてるのよ」

「そ、そうですか」


 私の愚痴を聞いてもシズクちゃんは戸惑うだけだ。当たり前だけど。

 神と人間じゃ物事の見え方が全く違うしね。


「今日は何を作ってくれるの?」

「今日はですね、良いイサキ型魔物魚が釣れたんで」

「フォーリングスター・ブルーアイズね」


 私が魔王ちゃんに言って付けた名前だ。かっこいいだろう、ふふん。

 何故かシズクちゃんの表情が苦虫を噛み潰したみたいだけど。


「そんな中二な名前付けて恥ずかしくないですか?」

「なにが?」


 え、かっこいいよね? かっこいいよな?

 あれ?


「中二病何百年癒えてないんですか」

「千年は変わってない。え、かっこいいよね……?」

「ダサいです、かなり」


 なんと言うことだ。千年もかっこいいと思っていたのに。

 次はエクストリームドラゴンフレイムフィッシュとか付けるべきか……。


「確実に更に中二な名前考えてませんか?」

「だってかっこいいしさ……」

「ダサいです」


 なんと言うことだ。私はやっぱり全知全能では無いらしい。

 この下級神の魂が憎い。


「じゃあコスモスブルーホールスーパーノヴァ……」

「どうしてそれをかっこいいと思ったんですか!」


 神になって千年、どうやら私のネーミングセンスは進歩を封じる呪いに囚われているようだ。これは多分古代神の呪いだな。


「個人的にノーセンスなんでしょ、女神様は」

「そ、そんなことないもん」


 ついつい子供口調になってしまった。外見を子供に設定しているから受肉するとその間は子供口調になったりする。

 この体は私のじゃないからな。引きずられてしまう。

 まあ私の分霊の体だから良いんだが。

 ちなみに私の分霊はかなりたくさん存在している。記憶は封じていることが多いから私のようには考えないし、動かないが。


 ところでシズクちゃんの顔が赤いのは何故だろう。舐めて良いだろうか。


「可愛いですね、女神様は」

「有り難う、シズクちゃんも可愛いわよ」

「か、可愛く無いし!」


 シズクちゃんの今世の外見はほんの少し弄くってるから間違い無く可愛いんだけど、魂に釣られてスレンダーな体型になるのはどうにもならないんだよね。

 これも運命だ。貧乳は運命だ。


「可愛いから、自信持ちなさい」

「あ、有り難うございます」


 自信を持っていれば運命は変えられる。きっと信じて、頑張って、楽しんで生きて欲しい。

 女神様からのお願いだ。






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