表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/79

釣りガール、料理でも奮闘する

 後は一話でこの章も終わりです。

 私のサラダとケイくんのサラダが出揃った。審査員たちは次々に皿に手を伸ばす。


「くわああっ、こんな料理あるならもっと早く食べたかったなあっ!」

「どちらもサラダなのにボリューム有りすぎですね!」


 マンサ様とニッケル様はどちらの料理にも満足しているようだ。


「うむうっ、美味いな!」

「ふほほっ、口の中が幸せだな!」


 デヒト様、イソーリズ様も同様だ。接戦なのかまだどちらが美味しいとは言い出さない。


「シズク、これ作ってくれたことないぞっ!」


 あ、うん、お爺ちゃんのダイエットメニューで作っても良かったんだけどね。サラダなのに手が込んでるから他のメニューに迷うんだよね、これ。単純に唐揚げとかと食べると美味しいんだけど。

 どちらの料理も審査員大絶賛のようだ。勝てるのかな……。


「うむ、野菜はどちらも美味いな。ケイのオーロラソースも自家製のマヨネーズとケチャップを合わせていて絶品だ」


 マンサ様はケイくんよりか。負けそう。


「しかしシズクちゃんのサラダ。赤身とチーズ、トマトの酸味とマリネの酸味が全く喧嘩していない」

「レタスでくるんで口に入れると口の中が洪水になるな」

「ほほっ、魚のタタキとやらが実に満足感がある」

「ワシはこっちのベーコンとオーロラソースとやらを絡めたのも好きじゃなあ」


 接戦だ。やっぱり農家のエキスパートとサラダ対決は無理があったか?

 マンサ様たちはしばらく五人だけで話し合い、やがてマンサ様が代表として勝利者の名を告げる。


「判定の結果……勝利者は……」


 うわああっ、めちゃくちゃドキドキだあ……。ケイくんも同じようで胸を抑えてこちらを見ている。


「勝利者は……シズク卿だ!」


 か、勝てたああっ!


 一斉に沸く会場。マンサ様は私の勝利した理由として全体のまとまりの良さと不思議な香味があったと告げる。


 実はタタキにクミンパウダーと粗塩をかけてたんだよね。トマトや玉ねぎとカレーの風味を司るクミンの相性は抜群だ。

 トマトとスパイスをくれたカイリちゃんにマジ感謝!


 そのカイリちゃんは……。やっぱり双子のお兄さんノット君と戦うのは厳しそうだ。


「ノットになんか負けないわよ!」

「僕もカイリに負けるわけにはいかないね!」


 二人はパスタ対決のようだ。


「この土地に来たんだから海鮮パスタでしょ!」


 カイリちゃんの作っているのは私があげたクラーケン幼体を使った海鮮パスタだ。実に盛り付けが美しい。

 対するノット君は夏野菜のパスタだ。ナスやトマトをみじん切りにしたソースが美味しそう。最後に半熟卵でまとめている。反則だあっ、そんなの美味しいに決まってる!


「……得意技で来たわね……!」

「半熟卵と夏野菜のパスタ、名付けてなつたまパスタだよ!」


 ……そのネーミングはどうかと思う。でも味は関係ないようだ。


「ううっ」

「よしっ!」

「勝者、料理人ノット!」


 わあっ、と歓声が上がる。決勝はノット君か。

 ナミエとカイリちゃんの仇を討たないとね!





 さて、いよいよ決勝戦。決勝戦のメニューについてはカイリちゃんから提案があった。彼女が海鮮パスタを作った際に残った「アラ」を使う。

 さすがにカイリちゃんは料理人だ。このアイデアをいただこう。


「決勝はスープで行くよ!」

「あ、私もスープみたいな料理だね」

「おお、どんな料理ができるんだろうね~。じゃあ、料理大会決勝戦、はじめ~!」


 マンサ様の宣言と共に、さっそく玉ねぎを炒める。もう一つの鍋でアラとトマトを炒めていく。

 玉ねぎを炒めている鍋にキノコやクラーケン幼体の予め出汁で煮込んで柔らかくしたものを入れる。お酒と少しの牛乳で煮込みながら。

 別のフライパンで、用意していた魚の加工品を低温でじっくりと焼く。

 トマトとアラを煮込んでいた物を漉して玉ねぎの鍋に移し……。


 そこで試合を見ているカイリちゃんの歯がキラリと光った。二人で考えた料理……。

 カイリちゃんが召喚、更に合成したカレールーを投入!


「か、カレー!? 反則だあっ!!」

「ただのカレーではないよ!」


 用意していた加工品とは、海老ミンチと海老味噌、サバミンチを練り合わせて牛脂を混ぜて卵、パン粉と予め炒めて冷ましておいた玉ねぎ微塵切りを混ぜ合わせて固めて焼いた海老ハンバーグだ。


 それと、海老のアラとトマト、にんにくすりおろし、各種スパイスを煮込んだ後、漉して作ったアメリケーヌソースを使った……。


「私とカイリちゃんの合体料理、海鮮ハンバーグカレーライスだよ!」

「もう勝てる気がしない!」


 カレーの香りだけで観客たちは腰砕けである。更にアメリケーヌソースを使ったカレーは海鮮の香りが凄い。

 観客たちのムードは私たちの勝利に傾いている。

 ほとんどカイリちゃんのお陰だけどね。ノット君に負けたのが悔しかったらしい。


 ノット君はそれでも料理を作り上げた。

 ノット君の料理は魚のアラやトマトで取ったソースは同じ。あとは小麦粉をつけてバターとオリーブ油で香ばしく焼いた魚とエビ、さらに貝を加えてから先のソースで煮込んだ野菜のスープ、乾煎りして潰したサフランにスープを混ぜて溶かした物を足し、魚を炒めたフライパンに流し入れて更に軽く煮込む。


「僕の一番自信がある料理……だったんだけどね……。イタリア版ブイヤベース、ズッパ・ディ・ペッシェだよ!」

「おお、なんかおしゃれ!」


 先ほどカレーの匂いに打ちのめされた観客もまた沸いている。この料理もすごい美味しそう!


 しかし結果はほとんど試食前に決まってしまっていた。


「カレーは無いわよシズちゃん……」

「許し難い……ですね……」

「ぐぬう……反則だ……」

「ほふっ、確かに、これは殺人的だな……」

「カレー美味すぎるうううううっ!!」


 一瞬皆が私の負けを宣言したのかと思ったらお爺ちゃんが締めた。

 マンサ様はカレーってだけで懐かしさの前に撃沈。そしてカレーの香りで他の審査員も陥落した。

 辛いのが苦手な人がいたらズッパ・ディ・ペッシェには勝てなかったかも知れないけど、香りで勝ったようだ。


 こうして私たちの初めての料理大会は料理人カイリちゃんの力を借りた私の優勝で終わった。ずるい?






 なつたまパスタは私の得意なオリジナルのレシピなんですが、本来は温玉じゃなくて生卵とケチャップを混ぜ合わせたものを茄子とトマトのみじん切りに混ぜて、若干火を通したらパスタに絡めて出来ます。

 美味しすぎて腰が抜けますよ? 抜けませんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ