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釣りガール、料理人と遭遇する

 食レポってお好きですか?



 ナミエやカイル君のテーブルに行くと普通にお刺身サラダとかソースに凝った焼き魚を提供していた。手っ取り早く量を用意出来て調理の失敗も少ないからだろう。三百人前に近い量の魚を確保してるのが凄い。皆釣り人になって来たのかな?


 私は二人が予選を抜けてくるだろうと考えて他の人が集まっているテーブルを回ることにした。特に人が集まっているテーブルは三つほどある。

 二つは横並びで競り合っているために私のうどん屋台前より人が集まっていた。


「料理で負けるわけには行かないわよ、ノット!」

「分かってるよ、カイリ!」


 料理をしているのは私と同年代の少年と少女。見た目はまだ十一~三歳と言ったところか。

 どうやら二人は兄弟かなにかのようだ。凄まじい包丁さばきで連携しながら食材を切っていく。

 私もあそこまでの包丁さばきは不可能だ。料理人として完成されてる人たちってここまで速いんだ、と、妙に納得しながら見つめていた。

 ……ひょっとして料理人スキル持ちの人たちなんだろうか?


 二人が作っているのは数が捌けそうなサンドイッチと……お饅頭?


 何か平凡だな、と思いつつサンドイッチの方をいただくと背中に電撃が走った。


「なにこれ、美味しいっ!?」

「ありがとうお客様、ふわあ、凄い美人さんだあ……」

「え、あ、どうも……」


 料理の味にもびっくりしたが急に男の子の方に誉められて照れる。


「このサンドイッチはピクルスにレモン汁を使ってコリアンダーをかけてるんだよ」

「コリアンダーってあるの?」


 どうやら女神の眷属、料理人スキル持ち確定のようだ。


「地球のスパイスを知ってるってことは女神様の寵愛を受けてるんだね?」

「あ、うん、『釣り人』だよ」

「あんたが釣り人!?」


 私が自分の職業スキルを明かすと急に横の女の子が口を挟んできた。何か拙かったかも知れない。


「ふんふん、あんたが釣り人……竹輪とか蒲鉾を撒き散らしてた人ね……」


 少年と同色の茶髪に茶色の目と理知的だけど可愛い感じの容姿の少女に値踏みするように睨まれる。どうやら私に釣られてきた人たちのようだ。


「料理は私たちの領分だからねっ! 絶対あんたなんかに負けないんだからっ!」


 おう、包丁でこちらを指し示しての突然のライバル宣言。ちょっと引いた。ナミエの香りがする。


「お姉さま、何か失礼なこと考えていませんか?」

「ひゅわっ!?」


 呟いた私の後ろに何故かナミエが立っていた。さすがはストーカーである。気配を消すスキルは最早暗殺者レベルではなかろうか。司書のはずなのにおかしい。

 とりあえずナミエは放置し、二人に私たちの素性を明かし、お互いに自己紹介することにした。


「僕はノット、料理人スキルを女神様にもらった双子の兄だよ」

「私はカイリよ! スキル持ちなんだからあんたなんかに負けないわ! 記憶にあるスパイス全部召喚して打ちのめしてあげる!」


 スパイス召喚とか超便利スキルなんですけど。私もオールスパイスとか花椒を召喚したい!

 勝負があるので今回は断られるかも知れないが一応、頼んでみようかな?


「オールスパイスとか花椒とかタイムとかクミンとかベイリーブスとか……」

「もちろん召喚できるよ! この後、一緒に料理してみない?」

「ナンパしてんじゃないわよノット! このままなら勝負は私の勝ちね!」

「な、負けないよ! あとナンパじゃない! 本気だし!」


 二人が兄妹喧嘩を始める。私は顔が赤くなるのを自覚した。

 料理人スキルを持つ人と料理とかとっても魅力的な提案だ。私は食い道楽なのだ。


「は、またお姉さまが恋する乙女モードですわ! カイル君!」

「カイルとカイリって似てるよね」

「あれ?! なんでカイル君もちょっとあっち寄りなんですの!? 顔か?! このナンパ男! ライバルと認めた私がバカでしたわ!!」

「いや、恋とかでは無いね。美味しいの食べたいだけだよ」


 何故かナミエとカイル君が喧嘩をしている。二人が結婚しても多分驚かないな。


「鬼畜! お姉さまの鬼畜!」

「僕らはシズクちゃん一筋なのっ!」


 おう、また怒られた。

 二人とも何故に私なんかに執着するのだろう?

 まあ好かれてるのにただ袖にするのも失礼な話かも知れない。二人とデートくらいそのうちするべきか?

 その辺の機微が分かるなら男女(おとこおんな)やってないが。

 女らしさがいつまでも転生してくれない。


 カイリちゃんのお饅頭もいただいてみた。やっぱり香ばしい、いろんなスパイスの香りが束になって押し寄せる美味しい肉まんだ。いいなあ、スパイス召喚。

 でも私は料理人じゃないからな。魚を穫ることに関しては私も多分彼らが憧れるくらいの力があるはずだし。


 予選は予想通り私、カイル君、ナミエ、双子の料理人カイリちゃんとノット君は通過することが出来たようだ。


 もう一人、人を集めていたテーブルの人はなんだかさえない感じの少年だった。

 料理はサラダ。私も本戦でサラダを出すつもりだがサラダってそんなに人を引きつけられるものだろうか?


 今大会のダークホースかも知れない。






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