表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/79

釣りガール、うどんを作る

 午前の釣り大会では参加者の最高記録をダブルスコア、倍以上上回る参考記録をはじき出して無事に終わらせる事が出来た。

 ちなみに大物一位はアタルで数釣り一位はマンサ様だった。何故主催者が参加しているのか?

 まあそれは置いておくとして、アタルは良く頑張った。感動した。

 今回は十位以内を表彰していく。何故かニッケル様やデヒト様、イソーリズ様など貴族がいっぱい来ている。この国の貴族は大陸で一番精強なのにいろいろゆるゆるだな。でも貴族恐るべし、全員十位以内に入ってる。

 上位は我がカソレ村民で独占させていただいたがな!


 それだけにマンサ様の数釣り記録は悔しい。ゴカイも生きた魚も恐れないマンサ様は立派な釣りガールである。

 戦場で心が磨耗してるとかじゃないと良いんだけど本人が楽しそうだから良いのかな?


 釣り大会はこんな調子で終わり、私は料理大会の予選に向かう。

 料理はおまけみたいなものだけど、やっぱり村長一族としては健闘しないとね。





 料理大会は昼を過ぎ、皆がお腹を空かせ始めたタイミングで始まる。

 予選は全員が団体向けの料理を作り配膳し、それを食べた観客の人数と皿の数を競う。

 私はカイル君やナミエと別れて自分のテーブルに向かった。

 カイル君とナミエは今回、ライバルだ。


「美味しいの作るよ~ッ!!」

「男には負けませんわ~ッ!!」


 まあ私は適当にやるつもりなので……二人の気迫に引くばかりだよ!


 とにかく多人数に効率よく提供できる料理を考えないといけない。

 ようするに炊き出し向きの料理がいいんじゃないだろうか?

 そう思って準備を進めていた。


 今回は讃岐うどんで行こう。


 讃岐うどんの特徴は小麦粉の香り、麺の腰、いりこ(煮干し)中心の出汁だろう。

 私が前世勤めていたアルバイト先の、私の料理の師匠でもある女将さんが香川県民だったらしく、親戚のうどん屋さんで年末年越しうどんを作る手伝いをしていた関係で麺から出汁までのレシピを覚えてしまったそうだ(年越しうどんと言えばしっぽくうどんだが普通のメニューも覚えたそうだ)。当時は相当やんちゃしてたらしいのだが……。


 まず讃岐うどんの麺は塩度十二度前後の塩水を使う(気温により塩度は変える)。

 この塩水で小麦粉をしっかり練り込み団子と呼ばれるサッカーボールを半分にしたような球体を作る。

 これをコーンスターチや小麦粉をまぶしながら(打ち粉)麺棒で広げていき、均等に切ることで生麺が出来上がる。


 次に出汁を作る。

 まずは昆布を寸胴に入れて水に浸し、絶対に沸騰させないように加熱、数分で昆布を取り出す。


 ここで本命のいりこ(煮干し)を投入。三十分ほど、やはり沸騰させないように煮込むと火を落とし、鰹節、ソウダ節など数種のけずり節を投入、出汁布で漉す。これにより白出汁と呼ばれるベーシックな出汁の一種ができる。

 ここに返しと呼ばれる醤油やみりんを合わせて火にかけ、アルコールを飛ばしたものを投入するとうどん出汁の出来上がりである。その濃度次第でかけ出汁か、つけ出汁(ザルうどんやぶっかけうどんに使う)が決まる。今回はかけ出汁にした。


 そしてうどんを茹でる。香川県民は町が砂漠化して飲み水に困ってもうどんを茹でると言われるがうどんを茹でるには大量のお湯が必要になる。更に締め、洗い、冷やす際にも大量に水が必要になるのだ。

 何故水不足になりやすい香川県でうどんが発展したのかと言えば、美味しい塩や小麦粉の産地だったからだろう。日本にパンがあったらパンの里になったのかも知れない。


 さて、大量のお湯にうどんを投入した後、竹の棒を使い麺を混ぜる。この際八の字に混ぜるとお湯がかき混ぜられて麺が浮かんでくる。

 麺が浮かんでから網で掬い、十二分から二十分茹でると出来上がりだ。

 麺のゆで時間は気温、麺の太さ、生地を混ぜる時に使った水の塩度で決まる。


 こうして茹でた麺は冷たい水、もしくは流水に浸けて締める。しっかりと冷やした後に打ち粉のぬるつきをしっかり洗って(力を入れすぎると麺の角が取れてしまうので大らかに両手で揉む)玉を取る(麺を一人前毎に分ける)。


 ここまで来たら盛り付けである。私はトッピングに竹輪の天ぷら、かき揚げ、白身魚フライ、蒲鉾などを予め用意していたが、ナミエはキツネうどんが好きだったらしく「来年はお揚げを発明しますわ!」と、意気込んでいた。美味しいよね甘辛く炊いたお揚げ。豆腐があるからすぐできると思うが。


 更にネギ、ショウガ、辛子などの薬味をお好みで取れるように用意し、完成である。


 さて、上手にできただろうか?


 かけ出汁の香りが広がると観客たちが私のテーブルに集まってくる。お母さんに手伝ってもらいながら麺の入った器を配り、かけ出汁はセルフサービスでかけてもらった。

 セルフサービスは人件費削減になる。少ない人員で回せるので大人数を相手にする予選向きな料理となった。


 結果私のテーブルが一番たくさんのお客さんを回し、その回転率で得票数を稼ぎ、なんとか本戦に残れることになった。

 予選終盤では他のライバルたちを見て回るためにお母さんに任せて早めにテーブルを離れた。お母さんは未亡人の魅力全開で近隣の住民の手を借りて一人で乗り切ってしまった。……新しいお父さんとか許しません!

 お母さんが幸せならそれでも良いんだけど。前世のお母さんは病気で亡くなったけど、幸せだっただろうか?


 さて、スパイに行こうか。






 数話は料理のお話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ