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釣りガール、魔物魚釣り大会を開催する

 いよいよ、この魚のシーズンです!

 さて、魔物魚釣り大会の日が来た。季節は秋の始め、色々美味しくなるシーズンだ。

 いやあ、秋って好きなシーズンだから久々に魚料理以外も試してみたくなるね。

 秋はなんと言っても秋刀魚。それ以外にもスズキや太刀魚、チヌなんかも釣れやすいシーズンだ。秋の荒食いと言って魚のほとんどは大食し脂が乗り始める、この時期が一番魚が美味いのだ。食欲の秋は水の中にも訪れるのである。

 ちなみにゴカイなどがバチヌケと言って交配のために海面を漂うのがこの時期で、ゴカイが生息する汽水域の魚であるスズキやチヌが活発に捕食活動をする。


 さて、まず午前は釣り大会。そして午後は料理大会なのだが調理時間は一時間近くあるので今日は予選、明日にトーナメント形式の本戦となる。

 お祭りは三日くらいはやりたいな。そんな事を呟いたらマンサ様の一存で三日目に料理を皆に振る舞う祭りを開く事が決まった。

 今回は屋台でお金をもらっても良いらしい。いっぱいお金を稼いでお爺ちゃんを楽にしてあげなきゃ!

 今回の人生では本当にお爺ちゃんっ子の私である。


「ではこれより、カソレ村釣り大会を開催する。ニッケル、ルールの説明を」

「はい、今回も前回の魔物狩り大会と同じく、獲物の大きさと数でそれぞれ競っていただきます。なお、参考記録は釣爵シズク卿の記録になりますが、この記録を万が一上回った場合、マンサ様から多大な賞金をいただけます。皆様奮ってご参加下さい!」


 他の事では一切自慢出来る事は無いが釣りだけは私が一番だ。女神様に認められ、女王陛下に認められた釣り人なのだ。


 余談だが釣りガールは意外にもほとんど日焼けしていなかったり料理も化粧も上手い女子力が極めて高い人が多い。私は女子力は料理以外は極めて低かったが。いや、私も結構肌は白かったんだけどね。UVカットの化粧品を無意識に選んでいたからか。

 ちなみにナミエは今はUVカットの化粧品を研究しているそうな。私的には褐色の肌も好きなのだが、ナミエは白いから日焼けしたくないのだろうね。今世は地黒の私には関係の無い話だ。

 閑話休題。


 今回の魔物魚釣り大会だが、実は魔力供給が行き過ぎた事もあって魔物魚が増えすぎた事も開催の理由となった。あれから毎日のようにエサイル沖に釣りに行きまくって村民に魚を振る舞いまくった。

 魚は飽きたと村民に言われなかったのは私の料理の腕が称号の効果で上がったからかも知れない。

 魚介類は加工品の方が割安だが、竹輪や蒲鉾などは調理すればとても美味しい食材だ。

 それを調理しまくった。うどんも作ったしパスタも作った。その苦労は料理大会の時に爆発するだろう。


 とにかく今は釣りだ。沖合に船を出し、ナブラを探す。以前説明したがナブラとは魚食魚に追われた小魚が水面を波立たせる現象である。このナブラを探すのに一番良い手段は鳥山を探す事だ。

 海鳥は視力がとても良い。その視力でナブラを見つけ小魚を取るために群がる、それが鳥山だ。

 それを知っている私はあっさりと魚の群れを見いだして魔力で自在に動く漁船をナブラに向かわせた。


 今回の同乗者はカイル君とナミエとアタル、トマンだ。

 アタルとトマンはけっこう大きくなった。アタルは私より一つ上だがもう身長百七十あるし、トマンは横幅がダイエット前のお爺ちゃん以上に広がっている。おデブちゃんは嫌いじゃないが体に悪いからダイエットさせようかな?

 対抗するように船を出したのはエルフのシラサさんと、何故か王都から出てきた獣人のニャコ、更に女王陛下である。今回の釣り大会はなかなかに厳しそうだ。

 女王陛下が平民に混じって釣り出来る時点でこの国の貴族がゆるゆるなのが分かるな。だからこの国が強いのかも知れないが。


 さて、今回狙う魚であるが、……秋である。

 そう、秋の名を冠する魚、秋刀魚、その魔物魚を狙う。

 毎年釣りたいと思っていたのだが手を控えていた理由がある。デカいのだ。

 この世界の魔物魚は冗談みたいに大きい物が多いが、サイズが大きくても魔力のせいか味が落ちない。大味と言われるように大物は本来味が落ちるのだが、この世界ではむしろ大物の方が魔力が強くて美味しい。この世界の人には魔力味と言う味覚が存在するのかも知れない。


 また余談だが味覚には五味、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味が有る。

 それ以外には辛みと言う痛みを味覚と感じる部分があるのだが、最近ではこれらに追加されてカルシウム味や脂味などの味覚が有るのではないかと言われている。

 そこに魔力味が加わるこの世界の味の世界はとても豊かだと言う事だ。

 何が言いたいかと言えば、旨味と脂味たっぷりの秋刀魚に更に魔力味も籠もりまくった魔物魚秋刀魚のその美味さ、それは如何許りか。そう言う話だ。


 とびきり美味い魔物魚を釣り上げ、料理大会でも圧倒的な勝利を納める、それがこの祭りでの私の計画なのだ。見よ、脳釣りの知能。脳釣りは馬鹿ではない。釣りしか考えないだけである! それを釣りバカと言うのだが。


 まあ私が勝たなくても構わない。料理大会の勝利は観光客釣りだからね。

 さ、釣るか。





 秋刀魚と言う魚は料理としては人気があるのに何故か釣りのターゲットとしては名前が上がらない。これは何故かと言えば釣れにくい事と網を使った漁なら取れやすい事が上げられるだろう。わざわざ船を出してまで釣ろうと言う人がいないのだ。

 しかし実は秋刀魚は陸からの釣り、陸っぱりの釣りでも釣れる事がある回遊魚なのだ。釣った人の話を聞くと秋刀魚はサヨリのように海面を泳いでいたと言う。鰺のように球体を作って泳ぐとも聞いた。

 そう言った前世のデータから私は計画し、ナブラを見つけ、海面を泳ぐ魔物秋刀魚を釣り上げる、その為に船を走らせた。


 ターゲットはすぐに私たちの前に現れた、しかし。


「なんかスッゴい海が荒れてるんだが」


 アタルが絶句するが他のメンバーも似たような感じだ。トマンなどあわあわ言っている。

 私の考えが甘かったのだ。そんな巨大な魔物魚がナブラを作るとはどう言う状況か、分かるだろうか?

 本来数十センチの魚が十メートルを超えると言う事は。

 すなわちそれを食う一メートルを超える魚は……二十メートルを超えると言う事。

 そしてその生物こそ我が宿命の敵、シーサーペント!






 狙ったわけではないですがドンピシャリですね。

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