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釣りガール、現状について考える

 料理はまだまだです。

 カソレ村は私の今世のお爺ちゃんが、今は戦死された前アミヤ伯爵様から命を受けて、その人生を懸けて作った村である。経営状態はそんなに悪くないのだが通年訪れる事が無かったはずの災害がここ数年で何度か起こってしまい、商人に借金したりした結果若干過疎の状態になっている。カソレ村って名前が悪いんじゃなかろうか。


 お爺ちゃんと言っても私のお爺ちゃんはまだ四十代だったりする。この国の法律だと十五歳で成人だし、私はお父さんが十七歳、お母さんが十六歳の時の子供だ。

 現在お母さんは二十二歳。前世の感覚だとお姉さんと呼びたい若々しさ。

 お父さんは数年前に漁の最中に運悪くシーサーペントと呼ばれる魔物に襲われて亡くなった。

 いつか私はシーサーペントを釣り上げてお父さんの復讐を遂げたい。……スキルなら釣れるよね? まあ思いついたのはついさっきだけどね。


 ハゼを十匹釣った所でレベルが上がったのだが、思った以上に能力が高まったのだ。


名前 シズク

年齢 6

状態 普通

レベル 1→2

生命力 3/5→8

体力 2/5→9

魔力 1/6→12

瞬発力 5→8

持久力 3→7

総戦闘力 5→10


・スキル(釣り人)

C基礎

 →生活魔法 常時身体強化 釣具召喚 釣り経験値獲得

C鑑定・調査

 →魚鑑定

C竿

 →竿強化

C糸・リール

 →糸絡み防止 糸強化

C魔法餌

 →ウェイト操作 練り餌 虫餌

C釣り補助

 →滑り止め

Cクーラー

 →クーラー召喚 容量20(up!) 水筒

C船

 →船酔い防止(new!)


・加護

 星女神加護 漁神加護


・称号

 村長の孫娘 釣り好き 料理好き 前世記憶保持者 女神に愛されし者


・女神から一言

 もっと釣りましょう。



 ほとんど倍になっているのは戦闘力が十になっている事から分かる。体が凄く軽くなって走る速度も倍に。調子に乗って走りすぎたが竿を持っているから躓いても転ばなかった。意外と有り難い滑り止めスキルである。


 記憶を戻した時に転んだからか生命力が下がっていて、走り回ったからか体力が下がった。回復するのにはどれぐらいかかるのかは分からないがヘトヘトだ。

 クーラーの容量が倍になっているし、次はもっと釣れるだろう。幸い召喚した竿は時間が経っても無くならなかった。


 さて、話を戻してカソレ村だが、特産品はオリーブと干し魚、塩、あとは柑橘系の果物などだ。

 魚料理が好きで釣りが好きになった私にとってこれは嬉しい。たくさん塩焼きを食べられる。

 わずかではあるが胡椒も輸入されている。これもシーサーペントのせいなのだが、港は有るのに大型船舶でも大船団でも組まないとそうそう入ってこられない。しかし経済力の無い村に大船団なんか来るわけがない。

 だから海からの輸出入に関しては小型高速船で細々といった感じなのだ。


 カソレ村は現アミヤ伯であるマンサ・アミヤ伯爵様の、その寄子であるネザー・ニッケル騎士爵様の領内にある。この国の法律だと直接の支配者はニッケル様だが実質はアミヤ様の領地となる。騎士爵の爵位はこの国の法では継承出来ないためこのような形になっているのだ。

 この領地の発展度によっては準男爵の爵位に昇進、晴れて継承権を得られる……のだが、これがまあカソレ村を初めとして、上手く行っていない。


 たまにお爺ちゃんに会いに来るニッケル様はとても若々しく、十代後半から二十代前半くらいかな。茶髪で茶色の瞳に丸眼鏡を付けた冴えない容姿なのだが、騎士爵様なので凄く強い人らしい。それなのに凄く優しくて気さくな良い人なのだ。村の子供一人一人まで気にかけてくれるニッケル様のためにも村を発展させたい。

 幼馴染みのアタルは誕生日に銛をもらって凄く喜んでいた。私も綺麗な服をもらったのだがまだ着た事が無い。すぐにサイズが合わなくなりそうなので早めに着たいが借金だらけの我が村ではお祭りなども無さそうでチャンスが無いのだ。

 ……お洒落したいと思うのは女らしさも少しは生まれ変わったからだろうか……。

 ニッケル様のご好意に応えるためにもあの服を着れるうちに借金返済したいものだが……。


 とりあえず出来ることは明日考えるとして、ハゼを食べよう。

 天ぷらも良いのだが手っ取り早く唐揚げにしようかと思う。

 ハゼのウロコを取り、頭を落としてはらわたを抜くと腹開きで開く。調理用の甘くて癖が少ない果実酒と塩胡椒で少し漬けて片栗粉と小麦粉をまぶすと、オリーブオイルであげるのだが……ちなみにこれはカソレ村では植物油よりオリーブオイルが安いため。オリーブオイルがあれば海から海藻も取れるし石鹸も作れるな。私の夢は無人島サバイバルだったので色々な物を自給自足する方法は覚えている。


 さて、この世界は色々技術が進んでいて紙も植物紙が普及している。そして焜炉も火の魔石と呼ばれるマジックアイテムで自在に火力コントロールができる。とても便利だ。


 この村の人たちは最近海に来た人ばかりで魚料理はそんなに上手くない。全体的に見れば料理のレベルも低くはないのだが魚料理はあまりして来なかったらしい。

 なので私の作ったハゼの唐揚げは受けた。六歳児が火を使うものではないと叱られはしたが、もうやるなとは言われなかったので美味しかったんだろう。


 食事が終わるとお爺ちゃんに色々聞かれた。竿のことは女神様にもらったと言った。流石に現代の機械でもあるスピニングロッドの説明なんて出来ない。

 するとお爺ちゃんは目を丸くして「女神の寵愛か……」と呟いた。それからスキルの事を教わる。

 この世界にはまれに職業スキルと呼ばれる力を授かって生まれてくる人が居て、その力を与えられた人は必ず大成するらしい。

 お爺ちゃんはずいぶんはしゃいで「これで村が救われるかも」とか呟いたり「シズクはこれからはやりたい事をやりなさい」と許可してくれた。

 最後に宿で魚料理の指導を、と頼まれる。どうも女神様に愛されている子供はその知恵の一部を授かっている、との伝承が大昔から既にあるらしい。

 人攫いに遭わないように護衛を付けようかとまで言い出したがそれは流石に止めた。レベルが上がれば多分大丈夫だし、しばらくはただ釣りをするつもりだしね。


 明日は何を釣ろうかな?






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