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釣りガール、女神様を確認する

 アミさんの姿が一瞬ナミエと重なった。いや、あれは完全に女神様のストーカーの目である。

 どうやら酒場にいたお客様が女神降臨の報を真っ先に巫女様のアミさんに伝えたようだ。あの容姿なのに良く女神様だって分かったな。


 そのゴスロリな格好は明らかに神殿の像の清純な姿とは違うがノーパソとか明らかに異世界の物だし、女神様は一目見てわかる美人だからアミさんも疑いも無く彼女を女神様と認識したらしい。


 現在ストーカーっぽいアミさんだが女神様は余裕で、ちょいちょいと手の動きで彼女をテーブルに誘う。それを受けたアミさんはダイブするように女神様に抱きついた。

 怖い。


「ああ、女神様あぁ……」

「よしよし」


 そこに存在したのは飼い主と犬である。アミさんもっとプライドを持って!

 すぐに女神様はアミさんを席に座らせ私のフルコースを食べさせた。


「楽園! ここに楽園が建設されています!」


 ナミエそっくりな発言をするアミさんが非常に残念である。めっちゃ綺麗で聖女可愛い人なのに、どうもアミさんはレズビアンだったようだ。

 アミさんにはもう少しいろいろ話を聞かないといけないな。なんだか身の危険を感じる。


 でも女神様に受け入れられていると言う事はアミさんは悪い人では無いんだろう。……女神様が悪い人の可能性はあるが。


「シズクちゃんは割と心配症?」

「釣りが出来ないと嫌ですし」

「どこまでも釣り人ね!」


 女神様に心を読まれたようだ。これでは迂闊な事を考えられないな。でも釣り人スキルを下さったのは女神様だしそのお陰で前世より釣りが楽しいんだけどね。


「女神が釣り人である事を許したんだから心配しないで良いのよ。シズクちゃんが釣り出来なくなったら大神災起こしても良いわ」


 隣の席でマンサ様が頭を抱えてるのでそれはやめてほしい。しかし釣爵どころか私の釣りは女神様公認なのか。スローライフに磨きがかかりそうだ。……しかし。


「女神様は何故そんなに私を気遣って下さるんですか?」

「幾世か前にはあなたは私の恋人だったからよ。今も愛しているわ」

「ふぇっ?!」


 女神様にも愛されてるとかどんだけ恵まれてるのだろう。

 しかし私は女神様の恋人だったのか……。男なら相当イケメンだったのだろうし、だから私はボーイッシュな生き方を選ぶのかも知れないな。

 女神様の彼氏として相応しく生きるべきか女として生きるべきか……。


「いや、普通に女らしく生きて良いよ。君が幸せになる事が私の幸せなのよ」


 ……なんかすっごい愛されてる。ナミエとは違う性質の愛を感じるな。

 女神様の為にも釣りをしよう。そもそも釣り人スキルをもらった時点で私が釣りをする事は女神様に了承されてるのか。


 女神様は遠い前世で私の恋人でずっと私の事を気にかけているそうだ。

 私は何故か十七歳の時に死ぬ運命を負っているらしい。その事を嘆かれていた。今回の人生でもその運命に飲まれるかも知れないそうだ。……死にたくないな……。

 だが、だからこそ女神様の管理している世界に生まれ変わった今世の私は無敵に近いスキルを頂いているらしい。生き抜いて、幸せになるようにと。

 なんだろう、泣けてきた。

 女神様、貴女の為にも私は絶対幸せに生きます。


 そう頭に浮かべたらそれだけで、女神様に幸せそうな笑顔を向けられた。

 ……アミさんもニッコニコなんだが彼女的にはこの展開は良いんだろうか?


 とにかく釣りをしようか。女神様の為にもシーサーペントに止まらず大物を釣るべきだろう。

 前にナミエに聞いたこの世界最大の魚の名前、なんだっけな?

 そうそう、確かゲームでは最強のドラゴンだったりする奴だ。聖書なんかでは魚として扱われている、あいつの名前は確か……、そう。


 バハムート。





 女神様との濃密な食事会を終え、私は家に帰る事にした。

 その瞬間、確かに強く女神様を愛していた幾世も前の自分の気持ちを自覚した。私は女神様の恋人だったのだとはっきり分かった。

 しかし女神様は私が恋愛しても全く問題がないと言う。浮気に当たらないのかと聞いたら私を敬愛してくれるなら他の誰を愛しても良いと。君の人生で最良の幸せを捕まえて欲しいとまで言われた。

 泣きそうになった。私の忘れた幾世か前の自分は、そんなに女神様を幸せに出来ていたんだろうか?

 なら、今の私も女神様が望む私になりたいものだ。自分自身を裏切らない為にも。


 釣りしよう。


 そう思ってナミエの方を見ると心底呆れすぎて逆に惚れ直しましたわ、とか言われてちょっと怖かった。

 まあ女神様への愛を語りながら釣りの事を考えていたら罰当たりだな。

 でも一番はやっぱり釣りだな。だって今世の私は女だし女神様に愛してと言われても困るし。実際言われてみれば好きなんだけど、それだけだ。


 ふと思ったのは女神様でさえこの世はままならないのだって事。

 世界の運行も魔王の命運も私の寿命も、女神様には変えられずただ見ているしか出来ないのだ。

 そう思ったら女神様が可哀想になって一晩中涙が止まらなかった。女神様の記憶はどれほどの悲しみに満たされているのだろう。


 彼女が破壊神だと言うのなら、私はその眷属でも構わない。反女神とか言う連中は理由が無くても叩きのめしておこう。

 この世界で私が特別な存在に置かれているのは正直余計な事だと思う。恋人に何もかもやらせるなんて私は嫌だし。女神様が愛した私が簡単にヘタレる存在じゃないと、彼女に示していけたらな。

 なんとなくそう思ったら、女神様から『スローライフしなさいよ』と、当然のツッコミをいただいた。






 このお話は主人公がほとんど肉料理をしないのでそこが難しいですね。最後には肉も出ますが。

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