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釣りガール、海釣りに戻る

 カソレ内湾よ、私は帰ってきた!

 ナミエに言えと言われたが意味が分からん。帰ってきたのは確かだけど。しかし基本的に私はナミエの言う事には逆らわないようにしている。怖いし、思ってくれてるのは間違いないし、色々やってもらってるからね。


「カソレ内湾で釣りをしていたらとても過疎れないわん~」


 ナミエがダジャレを言いながらクルクル回る。可愛いんだが時々オッサンだな、ナミエ。


 レベルは三つほど上がったがステータスは一年ごとに見ようと思う。なかなか上がらないしね。

 今日はサヨリか太刀魚を狙おうかな、と思っている。これだけ色々釣っているのにまだまだこの世界で釣ってない魚がいっぱいいる。カワハギやフグもだしカツオやマグロだって自分で釣ってみたい。タコや大型の貝類、海老など、魚以外でも釣りたいものが沢山あるし、本当に海とは宝の山である。

 今日はマンサ様が釣りに来ている。……この人仕事してるんだろうか、とは思うが、彼女の異常なまでのフットワークの軽さなら仕事が少ないくらいなのかも知れない。


「ナミちゃん、サヨリと太刀魚の魔物魚っているの?」

「太刀魚の方はムラマサって言う魔物魚がいますわ」

「な、なんか呪われそうな名前だね」

「まあ今日はサヨリにしましょう」


 サヨリはカジキを小さくしたような角がある魚だ。その角は実は下顎なのだが、お刺身にしても美味しいし一夜干しにも向いている。とにかくたくさん釣れるので楽しいターゲットだ。

 魚体が細長く綺麗な魚でもあり、休日には家族で釣ってるのを見かける事も。


「あれ? 浮きの下こんなに短くて良いの?」

「サヨリはトップを泳ぐ魚ですからね。長くしたら別の魚が釣れてきます」

「そうなんだ?」

「懐かしいですわね、オキアミ臭くなりながらお姉さまとたくさん釣りましたわ」

「美味しい?」

「うん、狙って釣る価値はある魚だよ」


 カイル君食べるの好きなんだな。サヨリは栄養価は低いらしいけど食べやすい魚だ。

 撒き餌をしつつ待つ。この釣りは潮が動いてサヨリが回遊してくるのを待たないと駄目だ。釣れない時は少し時間がかかるが釣れ始めたら入れ食い。初心者向けの釣りの一つだ。


「中級者向けにもチャレンジしてみたいわね」

「結構中級者向けも釣ってますよマンサ様。メジナとか」

「あの真っ黒な鯛ね」


 メジナはグレとも呼ばれる釣りやすいけど大きい、獲物としては美味しい魚だ。サヨリ釣りをしているとメジナがその下を泳いでいてターゲットを変えたくなる事がある。

 逆にメジナを釣りながらサヨリの回遊を待つ釣り方もある。


「潮目は悪くないし多分すぐに回遊してきますよ」

「釣りはハードな戦いだけではないのね」

「トレジャーハントの方が有ってますよ。ファイトも楽しいですがね」


 そうだ、マンサ様にリッツ様の事を話しておかないとね。

 そう思いリッツ様との遭遇から冥王ドジョウを振る舞った所までマンサ様に話しておいた。


「お手柄ね。私もリッツ・ブラックの事は聞いてるわ。帝国の赤、リッツと女王国の赤、私って感じでね」

「凄い人なんですか?」

「戦闘は私たち女神様の眷属にはもちろん及ばないけど政治力も領地経営能力もかなり確かな人物と聞いてるわ。帝国にいるのが惜しい人物ね。繋がりを持てるようなら持ちたいわ」

「どこか場所を用意してお会いしてみますの」

「うん、それが良いかもね」


 皆で釣り出来たら楽しいだろうなあ、と、思ったらナミエが難しい顔をしている。


「繋がりを持つのは構いませんがどちらかが裏切り者扱いされては困りますわ」

「うん、時期は見ないとね。先日の戦闘でこちら側がかなり有利になってきているし、そんなに遠い日では無さそうよ」

「……あれか……」

「お姉さま突撃……」

「ん?」


 何故かカイル君とナミエが遠くを見ている。ナブラでもあるのかな?

 ナブラとは大きな魚に追われた小魚の群れが海面を激しく波立たせる現象で釣りのターゲットを探すポイントの一つである。


「あ、ナブラが立ってますわお姉さま」

「本当だ。スズキでもいるのかな?」

「釣らないの?」

「釣ってみますかね?」


 仕掛けを魔力で変更するとロッドも強力な十三フィートに持ち替える。ナブラの脇を狙うように、出来るだけ静かにルアーを落とす。今回万能餌で作ったのはミノーと呼ばれる小魚の形をしたルアーである。泳ぎが綺麗で如何にも小魚が泳いでいるように動かせる、一番ロッドワークの技量が試されるルアーだ。


「こいこい、来たーっ!」


 ガツン、と、当たりが来た。何が来たのかな、と、バシャンと魚がジャンプする。


「……カジキ?」

「こんな内湾にですか……?」

「魔物魚では?」

「そっか、鑑定かけてみよう」


 ターゲットの名前はカソレマカジキだ。カソレ湾でかなり釣りをしてるのに初めて見たが普通に住み着いているらしい。大きさは八メートル程だが引きは滅茶苦茶に強い。ドラグがギュンギュン音を立てている。


「つよっ!」

「デカいし速いですわっ!」

「祝福かけるよ!」

「おおっ、凄いジャンプだね。シズちゃん頑張って!」


 カイル君やナミエに協力を受けてカジキをどんどん引き寄せる。カジキなんて釣るのはもちろん初めてだ。漁神様の加護は本当に有り難い。


「……よしっ」

「引っ張り上げますわっ!」

「トドメを刺すよ!」


 ナミエとカイル君は派手な魔法でカジキに止めを刺した。

 ふう、なんとか釣り上げたけど最初の目的に戻ろう。


「じゃあサヨリ釣りを続けましょう」

「なんかね」

「カジキの後にサヨリなんだ……」

「お姉さまには同じ釣りですわ」


 皆は何かぶつぶつ言いながらも釣りを再開した。さて、サヨリはどんな料理にしようかなあ?

 一夜干しは外せないけどすぐ食べるにはお刺身……焼いても良いし……。


「もう聞こえてないみたいね」

「釣ろうか」

「釣りましょう、あ、魚影ですわっ!」

「おお、青い。綺麗じゃないの」


 サヨリはかなり浅い所を泳ぐからその見た目だけでも楽しいんだよね。水と魚が織りなす美しい景色に浸る、これが釣りの醍醐味だよね!






 海際に住んでたら毎日魚が釣れるのに……!

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