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釣りガールの異世界スローライフ ~釣りスキルで村を大きくします~  作者: いかや☆きいろ
第三章 釣りガール、大陸を釣る。

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釣りガール、貴族と喧嘩する

 女王陛下に魔竜魚を提供する為にお城までナミエのブックマークで飛んでくると兵士たちが眉を八の字にして私を見た。


「釣爵様、真ん前にテレポートするのはやめてください」


 後ろに飛ぶのも駄目だが前も駄目らしい。兵士さんを困らせるつもりは無いのでナミエにブックマークの場所をずらさせた。

 それにしても既に何度も城に来ているために私を釣爵と知ってる人がかなり増えた。身分以上に名声は高くなってると思う。


 城に入ると髪型のおかしい太ったオジサンがいる。たぶんヅラだ。私は居酒屋でバイトしてた関係もあってこう言うオジサンが割と嫌いじゃない。


「こんにちは!」

「……ふん、村人が女神様の寵愛を受けたからと受爵していい気になっておるようだな」


 あ、なんかこのオジサン可愛い。今度お刺身ご馳走しよう。


「今度私の料理食べて下さいね!」

「……くっ!」


 私の魚料理は去年のグレーターデーモンフィッシュを捌いた一件から絶品であると話題になっている。その後も何度か納品しているのでこの太った貴族の人なら食べたいと思っていても不思議は無い。魚ラブ人口を増やす為なら他の事は一切気にならない私である。

 私がオッサンに気軽な口を利いていると隣の騎士が忌々しげに叫ぶ。


「無礼者! この御方はイソーリズ侯爵様なるぞ!」

「魚を勧めたら無礼者だと?」


 こいつ今釣りの事馬鹿にしたよね? そうに違いない。


「お姉さまは魚の話を遮られるとブチギレますわ……勇者殿」

「うん、いざとなったらあの騎士ぶちのめす」

「正解ですわ!」


 ナミエとカイル君本当に仲良くなったなあ。まあいいや。


「で、女王陛下に認められた釣爵が魚の話をして何が拙いのかな?」

「うぐっ……」


 威勢が良いのは最初だけだった。私はクーラーボックスに保存している食料を取り出す。太った貴族さんがよだれをこぼしそうになって慌てて拭った。

 私が取り出したのは岩喰いを串焼きにした物だ。


「ビールとつまんでくださいな」

「う……うむ」


 串焼きにすると岩喰いは凄い旨味の強い香りを放つ。鮮度維持の力でその香りの百パーセントの破壊力を二人に浴びせかけた。……私は釣りなら上手なんだ。


「いただこう」

「イソーリズ様!」


 太った貴族さんは片手をヒラヒラさせて騎士を退けると串焼きにその場で食らいついた。


「おほーーーッ!!」


 相当美味しかったらしい。さっきまでのしかつめらしい態度が嘘のように消えた。


「釣爵! この魚を売ってくれ!」

「あ、はい」


 凄い食いつきようだ。やはり魚は世界を救うな。間違いない。後ろでナミエが「チョロインですわ!」とか騒いでるが意味は分からない。


「保存法はお持ちでしょうか?」

「アイテムポーチがある!」

「ではこれを」


 やはり一般に使えるアイテムボックスのような物も有るようだ。イソーリズ侯爵の持っているのは十個も物が入ると自慢されていた。金貨で二百枚ほどの値段らしい。田舎村なら十年以上遊んで暮らせる金額だ。

 ……クーラーボックスの収容量を思い出してはいけない。女神様に愛されてるから可能なのだから。

 私が取り出した岩喰いは五十五センチの大物で非常に肉付きが良い。


「ふほほほほ、では金貨一枚で良いな?」

「金片貨一枚が今の相場ですよ」


 皆が普通に釣りをするようになって魚の価格は落ち気味だ。まあ売るための量を確保出来るようになったから構わないのだが。


「料理の分と今後の付き合いも考えてだ! また魚を頼む!」


 あ、じゃああのダブってる魚出そうかな?

 私はオーガヒラメを壁に立てかけて取り出した。


「デカっ!」

「なんじゃこりゃあああっ!」


 侯爵様も騎士もビビった。流石にいきなり城の通路で四メートルの魚を取り出したら驚くか。


「これなら金貨一枚じゃちょっと買えませんが」

「五百枚出そう」

「ほえっ!」


 思いもかけない商談が成立した。元は女王陛下への献上品なので五百枚でも安いかも知れないが処分に困っていた品なのでかまわないだろう。これで大魚を買ってくれる人が増えれば私はまたたくさん釣れる。悪い事は無い。


「お前もこれを食ってみろ」

「はっ……うまっ!?」


 侯爵様は遂に隣の騎士も取り込み始めた。魚の宣伝をしてくれるとは有り難い限りだ。


「くう……、これでは例の話もマンサ卿に付かねばならぬか……」

「しかしイソーリズ様……」

「しかしも案山子もあの程度の譲歩を渋ってこの魚が食えなくなる方が痛い」


 何の話かは分からないがイソーリズ様は魚が好きになったようだ。私の戦いは現時点で勝利である。


「釣爵、たしかシズク殿だったか?」

「はい、シズクです」

「今後とも仲良くやろうではないか、良いかな?」

「はい!」


 お魚好きは皆友達である。ふと後ろを見るとナミエとカイル君が死んだような目をしているが気にはするまい。


「お姉さま……お酒やお魚を美味しそうに食べるオジサマが大好きなんでした……」

「……あんなオッサンと戦わないと駄目なのか……?」


 なんの話だろう。今仲間になってくれたのに。

 いやあ、この調子で世界がお魚で一つになれば異世界スローライフも絶好調なんだけどな!


 話し合った結果イソーリズ侯爵様と一緒に女王陛下に謁見し、時々岩喰い釣りに誘う約束まで取り付けた。釣り好きは皆親友だ。


「くっ、なんかあんな太ったオッサンに並ばれるとかストーカーとして不甲斐ないですわ!」

「な、並ばれてるの?」

「釣り好きは皆兄弟ですよー」

「わははっ!」

「はあ……」


 なんだか周りの空気が重いが私はイソーリズ様とすっかり意気投合していた。お爺ちゃんにたくさん食べさせると怒られるけどイソーリズ様なら良いよね?

 私は魚を釣るのも大好きだが食べさせるのも大好きだった。






 魔物料理には魔力が宿っているのです。美味しそうです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魚喰わせるだけで世界征服できそうだな。スローライフだからしないけど。
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