釣りガール、十歳にして竜を釣る
十歳になった。まだまだ子供な私だがマンサ様には中身が既に成人なのはバレてるので社会人として立派に働け、と、使い回されている。
まあ受ける任務は百パーセント釣りなので否やは無いが。
それにしてもマンサ様は私に似ているとは思ったが、先日釣りに連れて行ったらゴカイに手を噛ませたり、私よりこの人女成分少なそうだぞと思ってしまった。見た目は超可愛いから多分嫁のもらい手は多そうだが。伯爵様なので婿を取るんだろうけど。
そんなマンサ様に今回はシャイニングトラウトを依頼されている。どうも辺境伯のオジサンが戦勝を祝う魚と言う事でこの魚が大好きらしい。
グラル湖に飛んで釣りをするので、ついでに女王陛下にお魚を持って行こう。先日釣ったオーガヒラメの大物、四メートルを献上しようと思う。
切り身をムニエルにすると美味しい。
さて、最近は毎日のように大物を狙っているのでレベルもかなり上がった。
名前 シズク
年齢 9→10
状態 普通
レベル 38→45
生命力 179/179→251
体力 195/195→273
魔力 240/240→325
瞬発力 181→244
持久力 201→278
総戦闘力 883→1213
・スキル(釣り人)
C基礎
→生活魔法 水操作 結界 常時身体強化 釣具召喚 道具回復 魔力回復 体力回復 生命力回復 釣り経験値二倍(new!)
C鑑定・調査
→水棲生物全鑑定(new!) 接水千里眼 接水走査(new!) 釣り場テレポート
C竿
→竿強化 遠投援護 竿二本召喚 体力吸収 魔力吸収(new!)
C糸・リール
→糸絡み防止 糸強化 糸延長 自動巻き取り
C魔法餌
→ウェイト操作 練り餌 虫餌 エビ餌 イカ餌 魚餌 貝餌 万能餌 ターゲッティング(new!)
C釣り補助
→滑り止め 雨除け 虫除け 魔物除け 偽装 小魚一荷釣り 一本釣り(new!) 麻痺
Cクーラー
→クーラー召喚 容量450(up!) 水筒 製氷 泥抜き 保温 鮮度維持
C船
→船酔い防止 小舟召喚 漁船
・加護
星女神加護 漁神加護
・称号
村長の孫娘 釣爵(new!) グラル女王国期待の星(new!) 村の指導者(new!) 釣り神(new!) 魔物魚の恐れし者(new!) 伝説喰い(new!) 料理マスター(new!) イケメン少女(new!) ウンディーネ(new!) 前世記憶保持者 女神に愛されし者
・女神から一言
つよっ。
……女神様に力をもらってると思うのだが驚かれた。
まず釣り経験値が二倍になったのでレベルが上がりやすくなった。接水走査は水に触れていれば目的の物の場所が一瞬で分かる。ターゲッティングは狙った物を確実に引っ掛ける。一本釣りはヒットした瞬間に釣り上げる。獲物から魔力吸収も出来る。
……うん、スキルを使うと釣りがつまらなくなるレベルに達してしまった。これ以上はスキルいらないよ、女神様。もう既に釣りにおいては無敵なレベルだしね……。
力をもらっておいてなんだが、女神様はいろいろやり過ぎじゃなかろうか。スローライフに必要な物には「適度な苦労」だってあると思うのだが。
なんの苦労も無い人生なんてつまらない。だから私はサバイバル好きだと言うのに。
『やりすぎちゃった。てへっ』
……この女神様は実はわざとやってるんじゃなかろうか。やはり私が死んだ時には大笑いしてたし、この人は邪神なのかも知れないな。
まあスキルオフにして釣れば良いんだけどね。実際三メートルを超えるような大物だと一本釣りスキルは働かなかったし、これなら楽しめるか。
……イケメン少女ってなんだ。いいや、釣りしよう。
ちなみにウンディーネの称号が付いた事で水中に一時間ほど潜れるようになった。
他の称号はほとんど魅力や運勢に係わるものらしいが数字がでるものでもないので特に気にしない事にしよう。
シャイニングトラウト釣りを始めようか。ここ、グラル湖は例の中二病な名前のバスがいるのでなかなか他の魚に出会えないのだがじっくり釣っていくしかないだろう。
ナミエとカイル君も付いてきているので竿を出しておく。二人ともバスくらいなら釣り上げられる力を得ているので私が釣具を強化するだけで次々に釣り上げていく。
漁神加護もあるので既にシャイニングトラウトは何匹も釣り上がっている。
「よし、また来た」
「こっちもですわ!」
「おっと、デッカいの……あれ?」
皆が次々と釣り上げる中、私の竿には何か今までと違う大魚が釣れてきた。一本釣りが効かないので大型魔物魚だと分かる。淡水では初めての超大物だ。
「おおおっ」
「速いな!」
「大物ですわーっ!」
高速で横走りするラインが水飛沫を上げる。久し振りの強敵だ。ぐんぐんとしなるロッドにギリギリと悲鳴を上げるドラグ、そしてビリビリとした強い魔物が持つ気配を感じる。……これ本当に魚かな、と心配になってくる気配だ。
「お姉さまに強化の魔法をかけますわ!」
「あ、僕も!」
「大丈夫、行けそう!」
レベルアップによって強化された肢体と竿により、ググッとラインを抜き上げ、竿を戻しつつ素早くラインを巻き取る。魔力や身体能力が高まった事で私の戦闘力は千を超えている。もう五メートル前後の魔物魚とでも十分戦えるのだ。
魚が上がってくる……魚?
それは長大な身体を鱗に覆った厳めしい顔の、二本の角に髭を蓄えた……。
「ど、ドラゴン?」
「とうとうドラゴンまで釣りましたわね……」
「まさかドラゴンが湖にいるとは思わなかった……」
一応鑑定を掛けてみると魔竜魚となっている。面構えだけなら荒い鱗にヒゲと竜そのものだ。カイル君がまた魔法の銛で突いた。
「これはまた大物だな」
「鑑定によると美味しいらしいよ」
「何でも食べられますわねこの世界」
まあこれで女王陛下に、より大きい魚を献上出来るので良かった。
章題はコソコソ変えてますが気にしないで下さい。