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釣りガール、爵位をもらってしまう

 私が取り出したグレーターデーモンフィッシュは生きている。その場で激しく跳ね、民衆はその迫力に悲鳴さえ上げたが、生き絞めのために私がスキルの麻痺を使うと熱量はそのままに声は落ち着いた。たまに上がる声がその冷めない熱気を感じさせる。

 釣りスキル・麻痺は釣り上げた魚ならいつでも麻痺させられる便利なスキルだ。

 動きを止めた魚に騎士さんに借り受けた大剣、クレイモアを叩き込んだ。その後は日本刀を呼び出し捌いていく。この日本刀はマンサ様に和包丁の代わりにと用意していただいた物だ。

 これくらいは無いとデカすぎる魚を捌けない。……なんで日本刀が有るんだろう……?


 徐々に切り身になり、柵になる魚に都民も大興奮、猫獣人のニャコに至っては立ったまま気絶している。強烈な甘い魚の香りが辺りを満たしているのだ。私も失神しそう。


「これは美味いですよ……。陛下、まずはお刺身でどうぞ」


 私はまず、身の絞まった柵で刺身を作り辛子と魚醤で提供した。


「んくうう……」

「おおお、この魚めっちゃ美味しいよシズちゃん!」


 女王陛下もマンサ様も大満足のようだ。私も食べてみたが旨味の爆弾のようだった。唾液が止まらない。

 一~二トンある魚でも可食部分は五~七割ほどだろうか?

 まあそれだけあれば相当数の人間の口に行き渡る。都民たちは生涯食べる事もなかっただろうお魚を生で味わっている。幾人かは涙をながしているが確かにこの旨味は凄い。

 復活したニャコはロボットのように刺身を口に運んでいる。私は皮付近の身に塩を振り、炭火で炙り始めた。

 香りがヤバい事に。都民の何人かが失神した。


「ふわああ……」

「凶器、いやもはや兵器!」


 女王陛下は涙目になり、マンサ様も良く分からない事を叫んでいる。しかしそれくらいこの焦げた皮の香りがヤバい。原始的な本能に訴えてくる香ばしい香り。

 ……このままここで調理してたら暴動に発展しないか?

 焼いた魚は平民の子供から振る舞う事にした。陛下とアミヤ様にはもちろん提供したが。しばらく提供出来なそうなニャコは立ったまま気絶し、泡を吹いている。


「これはメガヒットですわ……!」

「この魚美味すぎるよね。カイル君に協力してもらわなかったらとても釣れなかったけど」

「くうっ、帰ったらお姉さまの釣り奴隷にしてやりますわ!」


 釣り奴隷? 何その魅惑の響き!

 いくらかの柵はクーラーに仕舞って残りを市民に提供すると私たちはお城に帰った。





「はあ……」

「神、神!」


 女王陛下はため息を吐き、ニャコはウザいストーカーと化した。ナミエよりヤバそうだ。


「恐ろしい物だな、海産物の旨味と言う物は」


 マンサ様の呟きに対し、マンサ様は将来赤い水棲と呼ばれる事になるだろう、とナミエがまた意味の分からない事を呟く。確かに髪も目も赤いけどさ。

 私自身あそこまで美味いとは思わなかった。魔物だし次はいつ釣れるか分からないが、積極的に狙って坊主(一切魚が釣れない状態)が続いても致し方ないと思えるレベルだった。

 と、落ち着いたのか女王様が話し始める。


「毎年魔物魚を提供してもらえないかしら」

「今回のレベルでですか?」


 正直あの魚が釣れたのはまぐれだろう。釣り人は自分の釣った魚を大きく言うものだが、逆に本当に大きいのが釣れたら奇跡かまぐれだと思うものだ。

 しかし毎年提供すると言うのは王室御用達になると言う事だろう。これはつまりカソレ村が、あの寒村が女王陛下に認められると言う事ではないか。

 私は釣り以外ならお爺ちゃんが人生をかけて作ったカソレ村が栄える事を一番に望んでいるのだ。


「承ります!」


 当然のように即答した。

 強くなれば良い。必ずまたあのレベルの魚は釣れる!





「王室御用達兼女神の寵愛かあ」

「まずかったですかね?」


 マンサ様と女王陛下の言葉について相談する。

 あの後女王陛下は私に爵位を与えるとまで言い始めた。

 私がもらった爵位は「釣爵」である。女王陛下自身すら私の釣りを邪魔してはいけないが他は一切普通の下位貴族と言う、この世界どころかどんな世界でも認められていなさそうな、初めての爵位だ。騎士爵の延長程度の権力だと思うが。


「釣爵か……」

「聞いた事無いから対応しようもありませんわ」


 マンサ様もナミエも頭を抱えている。なんだ釣爵って。

 とりあえず釣れと言うなら釣るが。


「きっとそれが正解ですわ」

「だね」


 二人は何か色々諦め始めていた。

 私は次にもまた王都に来るために近場に釣り場が無いかマンサ様に尋ねる。釣り場テレポートについてもこの場で伝えておいた。


「なんと言うか……君が幸せなら良いんだけどね」

「何もかも釣り特化ですわね」


 私の人生は釣りばかりになりそうだ。私はそれで良いけど村を釣りだけで守れるかはいささか不安である。






 物語は書き終わっているのですがまだ色々料理を研究しています。

 このお話を書いてる頃よりは料理も文章も多少マシになっているので全部書き直したくなったりしますね。

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