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釣りガール、エルフに出会う

 オーガヒラメをウシオさんやオキヤシさんたちと捌きながらちらちらと観客の方を見てしまう。


 薄いクリーム色の髪に緑の目、すらっとした長身に胸鎧とスカート、細身の長剣を腰に履き足元はロングブーツ。顔立ちも細く色白で穏やかな微笑みをたたえている。はっきり言って超美人だ。

 余所見をしながらもオーガヒラメから柵をいくつか取って縁側も剥ぎ取り、肝なども分けていく。

 その場で料理人を名乗る旅人さんが柵を切り取り串焼きにして行った。私は縁側を手鞠寿司にしていこう。

 ウシオさんはお刺身を作って食べ方を説明している。

 人数が多いのでとても手が足りないと言うことで旅人の中で自炊出来る人が適当にソテーにしたりして配り始める。

 その中にエルフさんがいた。サバイバルナイフのような物で器用に魚を捌いている。

 さすがに人数が多いのでオーガヒラメ一匹では足りず、ストックしている魚を調理出来る人に配った。エルフさんが受け取りにきたので初めましてと挨拶をしてみたら、彼女はにっこりと微笑んで語りかけてきた。


「君は小さいのに凄いんだな」

「女神様のお陰です」

「そうか、君も女神様の眷属か」


 マンサ様も言っていたが、眷属……なのか?

 まあお世話にはなってるので眷属でも良いのかも知れない。女神様にもらったスキルが無かったら今頃は体も出来ていない力の無い時に間違って魔物魚を釣って水中に引きずり込まれていたんじゃないだろうか。


「エルフさんも女神の寵愛を受けているんですか?」

「一応狩人のスキルを授かっている」


 見た目は剣士にしか見えないのだが接近戦が出来ないと単独で行動するのが難しいのかも知れない。

 私はそのエルフさん、シラサさんと自己紹介しあい握手した。手鞠寿司をあげたら魚醤をつけて嬉しそうに食べていた。


「お刺身とか寿司とか実に懐かしい」

「シラサさんはこちらにこられて長いんですか?」


 年を聞くのは不味いかと思ったが遠まわしに聞いてみた。私の意図には気付いたのだろう、にっこりと笑って教えてくれた。


「今年で三十九年になるか」

「長いですね。お疲れ様です」


 やはりこの世界のエルフも例に漏れず長寿のようだ。それにしても美しいエルフさんである。仲良く話をしているとお邪魔虫が現れた。


「ちょっと待ったですわぁ~!」

「ん?」

「ナミエ、何の用?」


 せっかく美人のエルフさんと話していたのに。シラサさんは胸は無いしお尻は小さいが身長が高く格好良い。

こんなタイプの女性は好きだ。可愛い子も愛でたくなるし好きだが美人も実に良い。嫌いなのはストーカーだけだった。嫌いって言うか。


「私の事が嫌いですの?」

「つか苦手」

「非道いですわ、こんなにお慕い申していますのに!」

「あっははは……!」


 シラサさんは思い切り笑い出した。それを皆が何事かと見つめる。そして人の海を割ってマンサ様がやってきた。


「おや、誰かと思えばシラサか」

「おお、マンサ殿」


 二人は知り合いのようだ。前にマンサ様が言ってたもう一人の女神の寵愛を受けし者がシラサさんなのかも知れない。これでこの領地の主戦力がこの場に揃ってしまった。


「それにしてもこれはお祭り? 呼んでくれたら良かったのに」

「今日釣った魚が大物でしてお祭り騒ぎになっちゃいまして」

「今日始まったのか。ならラッキーだね」


 マンサ様も美人だしシラサさんも美人だし、両手に花だな。やっぱり美人といると女でも気分は良いものだ。


「お姉さま……私の事忘れていませんか?」

「忘れてはないが視界には入れてない」

「非道いですわ!」

「あははっ、あはははっ!」

「相変わらずの笑い上戸だな」


 なんだか楽しくなってきたな、異世界スローライフ。スローライフの割りに過剰戦力だが。ちなみにナミエもグリモワール召喚と言う反則じみた攻撃スキルを持っている。

 この四人のパーティーなら前衛が釣り人と商人で後衛が狩人と司書。バランスが良いのやら悪いのやら分からないパーティーだ。若干後衛よりか。まあ冒険をする気は無いのだけどね。

 しかしこれだけの戦力がヒラメの骨を囲んで談笑している構図は面白すぎる。釣りをやっていて良かったな。


「これだけ女神の寵愛を受けし者が密集していると戦争になってもこの村は安泰だな」

「戦争って起こってるんですか?」


 マンサ様の戦争と言う言葉に反応してしまうのは日本人の性だろうか。戦争なんか起こったら釣りが出来なくなるじゃないか。


「この国は小国だから常に他国に狙われているよ。まあ何故か昔から負けた事がないんだが」

「わざわざこれだけ女神の寵愛を受けし者が集まってるのは女神様もこの国を守りたいと言う事なのかも知れないな」


 マンサ様の話にシラサさんが答える。釣りをする為なら戦争を終わらせても良いよね。


「ま、あと数年は小競り合いを繰り返すだけだろう。どこかで生まれた勇者が今十一歳くらいであと四年もすれば成人だから大きく戦局が傾くかも知れない、と言う話だが」


 勇者もいるのか。やはり女神様の寵愛を受けてるのかな?


「確かに女神の寵愛を受けてはいるが……日本人で勇者となると……」

「ああ、ナルシストになったり奴隷ハーレム作ったりしそうだな」


 二人の話は辛うじて理解できる。日本人の一部には勇者なんかになったら天狗になる者がいるだろう。火を見るより明らかだ。女神様から主人公に選ばれたと言う事だからね。あの女神様がそんな人物を選ぶとも思えないが。

 ちなみに日本人ばかりなのは女神様が元日本人だかららしい。


「調子に乗ってるようなら私が絞めますわ」

「無理はしちゃ駄目だよ?」


 ナミエは過激だ。気持ちは分からなくも無いけどね。


「それでな、どうせなら女神の寵愛を受けし者を一荷釣りしてしまおうかと思っている」


 マンサ様はわざと一荷釣りと言う言葉を使ったような気がする。私が食いつくと思ったのだろうがもちろん食いつく。私は釣りが餌ならピラニア以上に食いつく少女だから。


「どんな釣りですか?」

「名付けて、和食を撒き餌に日本人を集めちゃおう作戦」


 うわ、思った以上にシンプル。

 しかし村の発展には寄与しそうな作戦なので反対もし辛かった。






 眠いけど頑張ります。

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