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釣りガール、苦戦する

 最近料理を作り疲れてしまった。適当に唐揚げや天ぷらを作るとお母さんからダメ出しがあり、お爺ちゃんが太らないメニューを考えさせられる。

 鯛のカルパッチョとかアジの酢漬けとかなます、炭火で炙って脂を落としたスズキに大根おろしを乗せたりとか……。


「うおお……。そうだ、ヒラメを釣ろう!」


 私はサーフ(砂浜)でヒラメを釣るために遂に前世にて一生懸命お金を貯めて手に入れた十三フィートのシーバスロッドを召喚する。

 なんでヒラメを釣ろうと思ったかと言えばヒラメを釣るのはかなり難しいが釣れたらとても嬉しいからだ。

 寿司ネタでヒラメの縁側が高くなるのは希少価値が高いからだが、それが釣りで手に入るのだ。

 釣れた時の感動は他の魚よりずっと強い、公式ギャンブルなんか目じゃない、釣りは世界で唯一ローリスクハイリターンな最高のギャンブルだと思う。


「私は自由だーっ!」


 釣りに関しては全くもって自由な今世の私である。サーフから魔力で強化した超ロングロッドを大きく振りかぶり、二キロほどのジグに変形させた万能餌を数百メートルは遠投する。


着水時に一旦重さをゼロにして再び数百グラムに増やす。ジャーク(魚を誘うロッドアクションの一つ)でルアーを小魚のように踊らせ、魚を誘う。


「フィィーーーッシュ!!」


 獰猛なフィッシュイーター(小魚を食べる魚)であるヒラメはゆっくり小魚のようなアクションをするルアーを見つけて食らいついてくる。

 あっさりフッキング(魚を針に掛けること)まで持っていったが引きが恐ろしく強い。前世のお父さんに拝借した十万円を超える高級リールのドラグがギリギリと鳴る。少しでも攻めに行けばラインを切られてしまいそうだ。

 格闘していると塩田から塩田を管理しているオキヤシさんが見にくる。


「やってんな嬢ちゃん」

「なんか凄い大物が来た!」

「おお、オーガヒラメかも知れんな?」


 オーガヒラメってどんな魚だろう?

 私は足が波に触れるように前に進み、接水千里眼を発動、魚の顔を拝ませてもらう。

 三メートルくらいあるお化けヒラメが釣れている……。釣り上げられるのだろうか。

 これだけ大きいと調理が凄く大変そうだな、と、思いつつ身体強化、ライン強化、竿強化と魔力を込めていく。引き上げるまでが既に大変だ。

 ちなみに地球にもオヒョウと言う大魚がいるが、カレイの仲間である。

 魔物魚は美味しいから楽しみだ、が、釣れてからの話か。


「やたらデカいのが釣れたみたいだなあ」

「うん、タモお願いして良いかな?」

「おう、任せろ!」


 オキヤシさんにタモを持ってもらう。しかしオーガヒラメはガンガン沖に逃げていく。ロッドで頭を振らせるが重たい。

 子供が戦える魔物ではないが、しかし自分の最強装備で負ける訳にはいかない。どれだけ時間がかかろうが必ず釣り上げる。


 この時点で無理矢理ラインを巻いて引き寄せるのではなく、魚の体力を削りきる戦略に切り替えた。ラインを伝わって奥の手のスキル、体力吸収が発動する。


「タフ……だな……」

「見えてきたぞ。俺の寝室くらいデカいのが!」


 寝室が狭すぎるのかオーガヒラメが大きすぎるのか。

 私の体力は回復しているはずだが同じくらい削られているようだ。しっかり魔力を込めていないとロッドも折れそう。


 こんな大魚ほんとどうやって捌くんだろう。釣ってからだとは思うのだが。

 弱ってきた魚が急に沖に走り、ドラグがギュギュンと音を立てる。待て待て待て、と、焦りの声を上げつつもロッドワークで魚の頭を手前に引き寄せる。早くあきらめろ、と、叫びそうになりながらロッドを振る。ラインを巻く。


 くうう……久々の感覚だあ~。これが釣りだよね。自然の中、魚との一対一の戦い。

 波に合わせて魚を引き寄せる。引き波に乗った魚にラインを切られたり逃げられるのは良くある話だ。ここは気をつけないといけない。


「お嬢ちゃん、このタモじゃ入んないぞ!」

「だよね」


 私はクーラーボックスに保存している鉤を取り出してオキヤシさんに渡した。クーラーに道具とかあんまり入れないけど女神様のクーラーはアイテムボックスみたいなものだから大丈夫だろう。

 後に分かったのだがクーラーに入れた道具は三日で釣具召還で召還できるようになるようだ。

 さあ、ヒラメを引き揚げるぞ!


「よっしゃ、伊達に塩田任されてないって所を見せてやるぜ!」

「塩田と釣り関係無いけどね!」


 だがオキヤシさんは上手にオーガヒラメのエラに鉤を刺して三メートルの大型魚を海から引っ張り出した。この世界の人の凄まじいパワーに呆れるばかりだ。砂浜で引き上げやすいとは言え、多分三百キロはあるのに。

 浄化魔法もそうだが身体強化魔法や武器強化魔法はこの世界の人なら誰でも使えるようだ。

 ともあれ、ようやくオーガヒラメは私たちの軍門に降った。


「手強かったな~」

「しかしこりゃ桁外れにデカいな。いったい刺身何人前になるのだろうな?」


 この世界でも遂に刺身換算する人が出てきたか。東○ドーム何個分と同じくらいどんぶり勘定だよね。

 暴れられると面倒なのでクーラーにしまうのだが、さて、どこで調理しよう?

 お爺ちゃんに相談した所、村の広場で皆でお祭りのように集まってそこで捌く事になった。宿屋のウシオさんにも協力してもらう事にしよう。とにかく重たいので男手は一人でも多い方が良いよね。





 皆が広場に集まった所でオーガヒラメにご登場いただく。

 鮮度がそのままなのでかなり暴れたが、その迫力に村中の人が歓声を上げる。ウシオさんが絞めてくれるようで、大柄なウシオさんがブロードソードのような剣を大上段から振り下ろし首に叩き込んだ所でまた歓声が上がる。


 村中の人が集まっての大騒ぎに何事か、と、観光客も集まってくる。その中に耳の尖った色白の女性剣士がいた。

 この異世界に来て初めて見る……エルフだ。






 最近は水菜にはまってます。トマトと豚しゃぶで食べたら凄い美味しいの。ドレッシングは醤油と林檎酢、粗挽き胡椒とオールスパイス、サラダ油で。エマルション。

 また作ろう!

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― 新着の感想 ―
[一言] >最近は水菜にはまってます ①パスタ茹でる ②水菜ザク切り(2〜3cm幅くらい) ③調味料用意 ⇒酒+醤油+みりん(全部大さじ1)+だしの素(適量) ④フライパンに水菜投入 ⑤火が通ったら調…
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