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閑話・お姉さまと一緒

 皆さんこんにちは。私はナミエと申します、本好きなオタクでございますわ。

 前世では川釣りをしていたお姉さまに、虐めを苦にして自殺しようとし、川に飛び込み溺れていた所を助けられまして、そのあまりの格好良さ、その男らしさに一発で心を奪われてしまいました。


 お姉さまが亡くなったと聞いた時は本当に心臓が止まりそうになりましたわ。その内容も余りに酷い物でした。釣りの為に万全を期して挑んでいたのに駅で階段から転落して死亡……。

 お姉さまの無念さを思えばあんまりに悔しくて、実際後追いなどしてしまいましたが、それを聞いたお姉さまは最初怯んではいたものの後でしっかり怒られてしまいました。怒るお姉さまも素敵ですが二度とこんな真似はしないと誓います。

 お姉さまはストーカー気味の私にも寛容ですから、本質的に嫌われたくは無いですもの。


 さて、異世界転生物は私の大好物の一つでしたが、自分がしてみると何と言うか……、特に冒険したいとかは思わないものですね。お姉さまは前世から冒険してたような人ですが。

 お姉さまの趣味は釣りですがサバイバル全般が好きらしく、良く無人島に住んだらどれだけ一人で文明レベルを上げられるか挑戦したい、などと話されていました。


 こんな男前な人が男の子なはずがありませんわねッ!


 それはさておきお姉さまは今世も釣りに励んでいます。知識チートも少し披露されていますが釣りの時間を減らされたくないようですので、雑務は私が引き受ける事にしました。

 そのせいで釣りをするために走り回っているお姉さまとの時間を取れなくなりましたが……。

 でも、イキイキと走るお姉さまを見ているとそれを止めるなんてできません。お姉さまの代わりになっていると思えば苦でもありませんわ。


 記憶を取り戻して一年ほど、お姉さまの料理で村長さんはメタボになってしまったので前世の知識からダイエット法を教授したりしていました。

 お姉さまが帰ってきて私に笑顔で大きな魚を尻尾を持って突き出してきます。


「遂に釣れたよ異世界チヌ!」

「大きいですわね~」


 この世界の動物は魔物が多く、中には魔石を持つものもいます。お姉さまに乞われて錬金術を学んでいる私は大きな生き物を見ると魔石を抽出できないか気になって仕方有りません。

 司書スキルのオートライブラリーでチヌの情報を引き出しますが、どうやらこのチヌは魔物一歩手前と言う所。魔石は採れそうにありません。


「ナミエも食べていくでしょ?」

「もちのろんですわお姉さま!」


 お姉さまは自分の女成分は前世で死に絶え転生もしなかったとお嘆きになりますが格好良いのがお姉さまの良い所です。いやいや、そう言う話では無く。

 笑顔でダイナミックに大きな魚を捌くお姉さまは勇ましいですが、お姉さまは気付かれないのでしょうか。

 料理が大好きで細かい作業も可愛い飾り付けも出来る、そんな所は十分女らしいです。


 お姉さまの料理は村に数十人しかいない子供たちの垂涎の的でありそれを特別に頂けるのだから役得ですね。ただ最近ちょっとお腹が出てきている気がするのでダイエットのためにも毎日走り回るお姉さまを追いかける事にしましょうか。

 そしてお姉さまを追いかけていると集まった村の子供たちに釣りの指導を始められました。私もついて行きます。

 お姉さまは川の下流に来られましたが水は干上がっています。お姉さまによれば潮の干満でこう言う風に河口は干上がってしまう事があるそうです。

 しかし水が無ければ釣りは出来ないと思うのですが……。お姉さまは長靴を履いて川に入られます。金髪で褐色のお姉さまが長靴を履いてると何か妖精を彷彿とさせる可愛らしさですね。女らしさは順調に転生していらっしゃいますよ。

 そう思っていたのはこの時まで。お姉さまは干上がった河口の泥に木のヘラを突き刺し何かを掘り出しました。


 ……あれは、ゴカイ!

 私、お姉さまの事ならなんでも百パーセント肯定したいと考えていますが嬉々としてゴカイを掘り出すお姉さまは若干ホラーです。近寄りたくありません。笑顔で手招きしていますがそんな素敵お姉さまをこんな時に見せないで欲しい。

 ゴカイだけは本当にダメです。いや、ミミズもダメですしオキアミも臭くて嫌いですが。と、言うかゴカイは女の子は誰でも駄目だと思います。お姉さま以外は。やはりお姉さまは女性部分がいくらかお亡くなりになっているのですね。

 まあ、きゃあきゃあと言って怖がっているお姉さまなんてあんまり想像も出来ませんが。この間もお姉さまは人攫いを単独で撃退して兵士さんに突き出していましたし、本質的に怖い物が無いのではないかと思ってしまいます。


 お姉さまが怖い物は何か無いんでしょうか? そう思って直接お姉さまに聞いてみたら、私が怖いと仰っておられました……。私もゴカイを嬉々として掘り出すお姉さまは怖いですが……。そう進言するとお姉さまはうぐっ、と唸りつつも気を落とされたようです。


「……やっぱり私の女成分は死に絶えているのかな……?」

「お料理好きとか作業が細かいって部分は生存されていますよ!」


 なんとかフォローいたしましたが、お姉さまはあんまり嬉しそうではありませんね。料理得意な男性も最近多いですし……。

 お姉さまは掘り出したゴカイを木箱に詰めて磯に釣りに行ってしまいました。

 とりあえず問題は先送りにして釣りをする姿勢は見習いたいものです。

 ゴカイで釣るのは私にはハードルが高いですが、これからもお姉さまを追いかける為には克服しなくてはなりませんね。

 たくさんお魚を釣ってお姉さまに認めてもらわないといけません。

 ああ、お姉さま、ナミエはどこまでもお姉さまについて行きますわ!






 ナミエも頑張っています。

 明日から第二章になります。

 ここまでお付き合いいただき、有り難う御座います。

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