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釣りガール、水産ではなく推参

 疲れて寝てしまいました。これで一章は終わりです。


 面倒だが少し敵が残っている。後ろにマンサ様がいる状態ではあるが対人の実戦を経験しておけ、と言う事らしい。マンサ様は腰に手を当てて、お前がやれと言う風にこちらを見ている。

 しかし私は対人スキルなんて……あるな。


 まず竿強化で大樹のようにガチガチに固まった竿を身体強化で大人より強くなった体と瞬発力で叩き込む。……人間ってこんなに簡単に跳ぶんだ……?


 たった一発で敵は一気に怯んだ。ん~、たぶんこれはこの人たちが女神の寵愛を舐めたと言う事なのだろう。前世で女成分が死に絶えて今世でやっとほんのり転生したレベルの私だが……まあなんて言うか、元々喧嘩好きな女なのである。いじめられている少年少女を見つけたら嬉々としていじめっ子を懲らしめたものだ。だから女の子にモテたのかも知れないな……。

 前世のバイト先の居酒屋の女将さんは凄くおしとやかな人だったが元レディースだったらしく凄く気が合ったのを思い出す。つまらないお客を二人で叩き出した事もあったなあ。

 まあ何が言いたいかと言えば、……弱い男とかつまらない。

 何故かこの程度で反女神教徒の皆さんがガクガク震えだした。正当だろうが反対だろうが宗教に依存してる割に信心が足りない。祈れば良いのに、中二女神様に。


 私は散々に襲撃者共を強化されたロッドと強化された身体能力で打ちのめし、強化されたラインで束縛して兵士さんたちに引き渡した。

 大人なのに弱すぎると思う。


「七歳でここまで強くなるんですか」


 ニッケル様が言うように私は年齢の割に強すぎるのか。女神様のお陰なのは分かるが何故そんなに贔屓されてるのだろう?

 そう思ってマンサ様に訪ねた。


「怒りに任せて大災を起こした星の女神様の寵愛を受けている私たち眷属が、戦闘力を持たないわけがない」


 マンサ様の女神評価が正当ならマンサ様も相当にヤバい人なんだろうなあ……。

 まあ私たちは女神様に従うだけである。私は主に好きなこと(釣り)をするだけだが、たぶんマンサ様も好きな事をしてると思う。

 女神様に愛された私たちは世界の為に好き勝手する運命にあるようだ。思いがけない幸運と言うべきか。


 まあ犯罪とか犯したらすぐスキルとかレベルを失いそうで怖くはあるけど、それは力を女神様から得ているのだから当然だ。なるほどこうしてこの世界の治安は女神様によって保たれているのか。次に出会った時には少しあの中二神様と話をしてみても良いかも知れない。なんかデザート食べに来るらしいし。


 光の魔石を持って夜釣りを始める。


「本当に釣りが好きなんだね」

「やっぱり燃えますからね」


 人間との喧嘩は後が虚しいが魚となら熱い戦いができる上に食べられる。食うか食われるかの自然の中の戦いである釣りは自然で正当な戦いだと思う。生きる為に釣りができる今の環境はとても有り難い。


「釣れたら私にもご飯作ってね」

「そのつもりですよ」


 それにしてもマンサ様はいつ仕事をしているのだろうか。我が村に訪れるのも公務としてだろうが前世なら税金の無駄遣いで騒がれそうである。権力者がお金を使わないと経済は回らないんだけどね……。限度はあると言うのは当然の事だが。


「お」

「きた?」

「お魚!」


 この引きは狙っていたスズキ系の魚だろう。強い引きに心が踊る。


「マンサ様、タモをお願いします」

「これで掬うのね」


 マンサ様も前世は女性のようだし、釣りはした事無いんだろうな。釣りガールは人口が少なくて寂しい、とは思うがゴカイを平気で振り回すような女の子はあんまりいないだろう。私も気持ち悪いと思いつつ使っているのだから無理は言えない。


 強引に引き寄せたスズキをマンサ様が掬い取る。魚は派手に暴れているがマンサ様はレベルも高いのか平然と持ち上げた。


「晩御飯ゲット!」

「じゃあ帰りましょうか。皆驚きますよ」


 魚にではなくマンサ様にだが。

 今回の魚は五十センチくらいのスズキだ。ムニエルにでもして提供しようと思う。





 カソレ村は最近活気付いて来ているので知らない人とすれ違うことも増えてきた。田舎の人間は知らない人が怖いのでついつい萎縮してしまう。でも元気に挨拶するのも健全に村を育てる秘訣だろう。


「こんにちは~!」

「はい、こんにちは」


 挨拶はやっぱり気持ちいいな、と、思いつつ走り抜けて教会に入ると、ミサを行っていたらしく、たくさんの村人がいた。

 女神様は教会を嫌いらしいが私は個人的に巫女のアミさんと仲良くしている。今日も孤児院で食べる分の魚を提供するためにやってきた。今日の魚はマンサ様に提供したのと同じスズキだ。


「シズクちゃんいらっしゃい」


 前は一時期シズク様で呼ばれていたが年上に敬われるのは居心地が悪いので変えてもらった。女神教徒の人は一面では女神様は怖い存在だと教えられているので性格はとても素直だ。

 綺麗な銀髪を揺らし赤い瞳をぱちくりとさせるアミさんはとても可愛い。無理だとは思うがこんな女の子になりたいものだ。


「今日のお魚は大きいですね」

「下ろしましょうか?」

「助かるわ、お願いします」


 最近魚を色々な所に売り込んでいるので捌く機会が多い。なので自前の包丁を持ち歩いている。釣具召喚で取り出せるので助かっているが、女神様釣具の判定は広い。ひょっとしたら何でも許されるのかと思って携帯などを召喚しようとしてみたらさすがに出てこなかったけれど。


「シズクお姉ちゃん!」

「シズクさま~!」


 この村はまだまだ小さいので孤児も数人しかいない。この子たちは魔物などに両親を奪われた子供たちである。

 村の人情は深いので親類縁者があればたいていはもらわれていくのだが、去年までは貧しい村だったのでもらわれないで孤児になった子も多い。

 村の子を養うのも村長の孫である私の仕事ではないだろうか。やっている事は釣りすぎて余った魚の提供だが。


 美人のアミさんが喜ぶと嬉しいしね。可愛いものや綺麗なものが好きなのは私の辛うじて生存している女らしい部分である。


「どう調理しようかな、シズクちゃんに教わった天ぷらか唐揚げにしようかな」

「あぶらものは太っちゃいますよ」


 そう私が言うとアミさんは自分のお腹を見る。何かその仕草が可愛くて吹き出した。


「今日は網焼きにしましょうか」

「アミ焼き?」

「お姉ちゃん焼くの?」


 子供たちはいつも興味津々で私の調理を覗いている。今日は七輪を持ってきていたのだが皆その赤く燃える炭を見つめて目を輝かせている。アミさんは焼かないが。

 スズキに塩だけを振って炭火特有の遠火でじっくり焼く。魚の脂が落ちる度に炭火の香りが立ち上って、凄く美味しそうだ。

 その香りに誘われてかたくさん人が集まる。どうやら私は人間を釣るのも得意なようだ。






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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今回の魚は五十センチくらいのスズキだ。 そのサイズだとセイゴ(もしくはハネ)では? スズキは60センチオーバーかと。
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