表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WELT・SO・HEILEN~ウェルト・ソー・ヘイレン~  作者: 稲狭などか
伊達正明と鳴神華音 編
43/46

プロローグ

少し時間が掛かってしまいました・・・

なんかこの章は辛い感じになりそう。

僕に正義なんか無い。

 あるのは深い絶望と、怒り、失望、そして悲しみ。


 この場所が何なのかは伊達正明が知るすべは無い。だが、彼が見ている光景は自分なら確実に解る光景だ。

 晴天の陽気、大人には少し狭いアスレチック付きの遊び場、明るい色分けがされているバッチが懐かしい。子供達が元気に走り回り、その様子を保育士が優しい笑顔で見守っている。

 遊んでいる子供の中に、手を繋いで仲良く遊んでいる同じ顔の子供が正明の目に映る。

 それは幼い頃の正明と妹の真紀の姿だった。

(正明く~ん! 真紀ちゃ~ん! お母さん来たよ~!)

 保育士の女性が柔らかい口調で幼い二人を呼ぶと、彼女の奥から正明達の母親がやってきた。二人は満面の笑みを浮かべて母親へと駆け寄って行く。その様子を正明は死んだような目で呆然として眺める。母親に抱きかかえられる自分と妹、そうだ、確かこの時期は母親も父親も正明を愛してくれていたのだ。

「そうか、この時は魔力の測定なんかしてなかったから・・・・・・僕の記憶なのか。この時の事はよく覚えている」

 正明がこんなに幼い時の記憶が鮮明なのは、この記憶にしがみ付くしかなかったのだ。優しく自分を愛してくれた両親の記憶。自分がこれを忘れてしまえば、自分の中にあるお父さんとお母さんは死んでしまうと言う不安と、いつか僕を愛してくれると信じるために必要な記憶だった。

 この時から同じ顔をしていたんだな、と正明は幼い真紀の幻影を見ながらぼんやりとそう考えていた。

 いきなり全ての時間が止まった。

 その世界で、母親の影から誰かが姿を現す。

「懐かしいか? お前が一番美しいと感じている記憶だ」

「お、お前は・・・・・・嘘だ」

「嘘? お前にとっては息をする様な物だろう? なんせ、俺自身の事だからな」

 その人物は、伊達正明その人だった。

 蒼い左目、前髪のメッシュ、細身の体に腰には小瓶が差してあるホルスター。

「僕に何をした! 僕は、何処にいるの⁉」

「俺は何もしてない。俺は、本当のお前だ」

「なら、話させるだけだよ!」

 正明は腰にホルスターを召喚すると、魔法を放とうとするが。

 手が震えて打てない、今にも腰を抜かしてしまいそうになる。

「出来ないだろ?」

「固有能力まで同じ?」

「いや? 俺は何もしていない。問題があるとしたら、お前だ」

「なに?」

「お前の闘争心、残酷な心、戦う勇気は死神の飼い猫が持っている物だ」

「違う! 僕の力だ、使えないなんて! 僕は君を殺してでもここを出る!」

「殺す、か・・・・・・お前らしくない言葉だな、優しい優しい俺自身」

「僕は君じゃない!」

 正明はそうは言うが、魔法が放てない。

 暴力がとても恐ろしい、そして悲しい。

「う、うぅ! な、なんで!」

「お前は俺に勝てない!」

 正明は自分から放たれる魔法に吹き飛ばされ、地面へと凄まじい速度で吸い込まれて行った。


オリジンが美しいとは限らない。

人の根幹には諦めがあるのでしょうか? これでいいんだって? これが自分の身の丈だと?

彼もそう、「これで良い」と思っていた。そう、思っていたんだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ