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WELT・SO・HEILEN~ウェルト・ソー・ヘイレン~  作者: 稲狭などか
アイドルと魔装解放編
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第3話 開戦前(1)

リアル事情で遅くなってしまいましたが、続編です。


 正明はいきなり現れた狐面の女の子をひとしきり眺めると、腰にホルスターを出現させる。

 彼女はSPECTRE,sの仲間であり、先程デバイスで呼び出した京子だ。彼女は使い魔を呼び出して数で戦う事を得意とする魔法使いだ。彼女がいれば軍としての戦いが可能だが、今は華音が隣にいる。


「ふ、二人は逃げて!」


 華音は制服の上にコートを召喚する。

 真新しいオーダーの腕章に付いているダイヤモンドが気高く輝く。

 彼女は自分に対恐怖の魔法をかけると、銃型の魔具を腰から抜き放ち躊躇いなく京子へと発砲した。純粋な魔力を打ち出す魔力弾なので殺傷能力は低いが、直撃すれば骨折は免れない威力はある。

 正明は反射的にホルスターを出していたが、急いで腰を抜かした真似をする。


「ひ、ひえぇ・・・・・・か、華音は⁉」


「大丈夫、私はオーダー。みんなを守れる力が、私にはあるから!」


 強がりだと正明はわかっていた。左目で見たからわかるが、彼女の身体に流れる魔力の循環効率が絶望的に悪い。

 多様な魔法を使えるのは確かだろうが、それは彼女が恐怖を感じていない場合のみだ。対恐怖が解けた瞬間に彼女は戦えなくなる。

 魔力弾を鬼を盾にすることで防いでいた京子は首を傾げている。

 志雄はアイコンタクトで華音に危害を加えない様にと指令を出す。京子は首を縦に振って了解を示すが、別の角度から攻撃魔法が飛んできた。

 冷気をまとった鬼が氷の壁を作りその魔法から華音と京子を守る。


「面倒だなぁ。ねぇ、オーダー。私よりもあの連中を攻撃したら?」


 喫茶店の外にはいつの間にか大量のバンが止まり、そこから大勢の武装した魔法使いが続々と店を囲み始めた。

 京子は防御魔法を中心に構成した使い魔を複数体召喚する。傅く使い魔達に京子は単純な命令を出す。


「力無き者の為に死ね」


「「「「「ハッ‼‼‼‼ 我が主様の命のままに‼‼‼‼」」」」」


 巨大な盾を持った騎士風の使い魔達は店の中にいる一般人の前に立ち、盾を構え防御魔法を発動して逃げ道を確保していく。


「正明、私達も逃げますよ」


「でも、華音は!」


「逃げて! 大丈夫だから、慣れているから」


 華音は笑顔を正明に向ける。

 正明は少し迷うと外へと志雄と走って逃げて、人気のない所で立ち止まった。


「嘘吐きだね。華音」


「そうですね。彼女は、強い女性です」


 正明と志雄は笑うと、顔に仮面を装着すると服装も魔装に固める。

 志雄はまるで軍服の様なデザインのロングコートに、ブーツ。仮面は下顎から二本の鋭い牙と白く光る燐光が力強さと不気味さを際立たせ、額に空いた二つの穴からは角が伸びてまるで京子の召喚した鬼の様な風体になる。

 正明は左目のスリットから覗く蒼い光に、志雄程ではないが鋭い牙が伸びた下顎が特徴的な仮面をつけると、服装も制服から黒を主としたブーツ、ホルスターとは逆の左側にぶら下がるナイフ、レザー生地に見える猫耳フードが付いた上着そこには可愛らしい猫のイラストがプリントされている。異様な仮面にこの服装などとは、ブラックジョークも甚だしいが彼の一番気に入った魔装がこれなのだから仕方ない。

 志雄の魔法で喫茶店の中に転移すると、武装した謎の集団と戦う華音の横に並ぶ。

 襲い来る不届き者に魔法で作った槍を召喚の勢いを利用して突き刺すと、そのまま燃やしてしまう。

 叫び声を上げようとする男の喉を正明は腰のナイフを抜いて切り裂いた。


「うるさくするな。気が散るんだよ」


 正明は口調を変えると、逃げ遅れた一般人の女の子に襲い来る奴にそのナイフを投げ付けて魔装を発動する。

 ナイフの持つ魔法が発動し、突き刺さった相手の身体をズタズタに切り裂いた。またその時に叫び声があげられないように喉を真っ先に潰した。


「使い魔、此処へ」


「第一船長殿」


 騎士風の使い魔が正明の元に傅く。

 正明は辺りから飛んでくる攻撃をいなしながら、使い魔に回復魔法を付与する。


「回復の力を付与した。負傷者があらば治せ」


「ハッ‼」


 使い魔は返事をすると機敏な動きで女の子を抱えると速やかに店から出ていった。

 正明はナイフを回収すると、華音を見る。

 驚愕に目を見開いて既に対恐怖は切れている様だった。必死に正明へと銃口を向けるが、呼吸は荒くなっており身体の震えは遠目からでもわかるほどだ。


「銃を下ろしなさい。今は味方と思ってくれて結構」


 志雄がそう言うと、銃の撃鉄を指で弾いてへし折った。

 その人間離れした力に華音は腰を抜かしてしまい、大粒の涙を流し始める。それが悔しさから来るものだと正明は悟り、趣向を変える。


「俺達の仲間が時間を稼ぐ、オーダーに応援を要請しろ。一般人の犠牲を出す前にお前たちの力が必要だ」


「私達だけでは、時間稼ぎがやっと。早く応援を」


 志雄もそう呟くと、京子の元へと向かう。

 正明は視線を華音から外し、腰の空瓶を飛んでくる魔法にぶつけて分解してしまう。分解された魔法は純粋な魔力となり小瓶に吸い込まれると、自動でホルスターに戻る。


「第二船長。固有能力を使え、対象はこの虫けら共だけだ」


「了解」


 志雄は短く返事をすると、手甲に覆われた両拳を合わせて力を集め始める。

 正明は左目で敵をスキャンする。

 魔法の力は戦えるレベルではあるが、オーダーに比べればカスの様な物だ。一見全員が一斉に動き、連携が取れているかのように見えるものの、各個人が攻撃を自身の敵に放つだけでリーダー格の様な人物はいない。

 だが、数が中々多い。

 正明の魔装での一掃は難しく、京子の二匹の鬼は暴れると危険、志雄の固有能力なら安全であるが決定打にはならない。

 京子は迷う正明に自信ありげに胸を張る。


「第一船長。甘いよ」


「なに?」


「このメンツでは決定打にかけるでしょ? だから、呼んでおきました。第三船長を」


 正明は頭を抱えた。

 敵の攻撃が激しくなり、正明は応戦するがこれから来るのは加々美だと思うと頭が痛かった。

 確かに彼女の固有能力なら応用性に富むため、この状況では決定打となるだろう。


「死神の飼い猫が、なんで人助けを?」


 華音は店の中で応援を呼んだ後に戦う正明を見ながら(彼女は正体を知らない)必死に応戦をしていたが、仲間に号令を出して弱い者を庇いながら戦うその姿を見て彼女は思ったのだ。

 オーダーと同じではないか。


「ん⁉ 来た。速すぎないか?」


 正明は志雄を見る。


「第一船長! 騙しましたね⁉ 何が〇.五秒の短縮ですか! 五秒も縮んでいるじゃないですか! 行きますよ重力操作、発動‼」


「ナイスタイミング! ぶちかませ!」


 志雄は拳を全力で地面へと連続して叩き込んむ。すると、周りの物が浮き上がっていく。止めてあるバンも壊れた店のガラスも敵の身体もだ。

 地面に足を付けられるのはその怪しげな集団以外の人間だけだ。

 志雄の許可なしでは、重力の愛情は受けられない空間が半径十メートルに展開される。


「な、なに⁉ これは、どう言う事⁉」


 華音はワタワタと慌てふためきながら周りの情景を見るが、それが何なのか全く理解できない。

 そうしている内に、空中でもがく連中が見えない何かに次々と切り刻まれていく。まるでカマイタチに切り裂かれるように、鮮血を空中に撒き散らせるがそれすらも赤い球体となって浮かび上がる。

 そうしている内に、二人を除いて大勢いた謎の敵は殺されてしまった。

 死んでいる事が何故わかるかと言うと、殺された者は心臓、頭部、喉を潰されていたからだ。間違いなく即死だろう。

 浮かび上がる物が地面に落ちると、その見えない者が姿を現した。

 顔は狼を模した形状となっており、頭からは狼の耳が生えている。軽装備と言うのだろうか、身体は鎖帷子に首にはマフラーの様な薄い布が巻かれている。

 印象としては、忍者だ。

 それが、俊敏性と即攻性を重視した加々美の魔装だった。


「決まったー! ちょろいちょろい! 援交JKよりもちょろい!」


 いきなりとんでもない事を言い出した彼女は正明にひっぱたかれる。


「第三船長。二人残した気配りには感服するが、いきなりのその発言はやめろ」


「うるさいなー〇〇〇でもしゃぶって黙っててよ。いいじゃん、倒したんだから」


「乳をもぎ取るぞ、下ネタ狼」


「セクハラ! 私をメチャクチャにするつもりでしょ! ハードなハメプレイで私の純潔を凌辱して、柔肌をアッチの練乳でべたべたに犯すつもりなんだ! この変態!」


「ブーメラン」


 正明は溜息を吐くと、生き残った男の首を掴む。


「コイツには聴きたいことが出来たな? 船に運べ」


「私が運ぶよ。おーい、冬鬼と夏鬼。コイツ運ぶよー、あっ騎士のみんなはお休みね」


「「「「「ハッ‼‼‼」」」」」


 その時、加々美が何かを嗅ぎつけた様に視線を動かす。

 どうやら、オーダーがやってきた様だ。


「やべぇや! じゃあ逃げるのだ!」


 加々美は姿を消す。

 京子は鬼と共に溶けるように消えていく。

 正明と志雄は魔法で作った霧の中に歩いて行き、跡形もなく消えた。

 残された華音は呆然として座り込んでいた。目の前で起きた事がまるで夢の中の出来事であったのではと疑うが、列記とした現実だ。

 始めて見たSPECTRE,sと死神の飼い猫は彼女が思っていたよりもはるかに強く、そして市民の評価に見合う程にヒーローの様だった。

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