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WELT・SO・HEILEN~ウェルト・ソー・ヘイレン~  作者: 稲狭などか
勇者達と死神の列編
33/46

第四話 バカだらけの大運動会

遅くなってしまい申し訳ない! これからも末永くよろしくお願いします

 1


「第一回! ブレイブ対WELT・SO・HEILNのドキドキ運動会」

 なんだ、そのゴミの様なネーミングセンスは!

 そんなツッコミも追いつけない程の勢いでテンションをバカ上げする黒宮左近は、第一船の看板で小躍りしている。

 余程の自信があるのか、奴が連れて来た連中も大騒ぎしている。

 正明は仮面に黒い猫耳パーカーと言う格好で腕を組んで黒宮左近を睨む。

 WELT・SO・HEILNの全員は戦闘前のピリピリした雰囲気をかもしだして、いれたら格好がついたのだろう。

「イェェェイ! お祭り! おー祭り!」

「おう! 良いねぇ、狼のお姉ちゃん! ホント、敵として出会いたくなかったぜ!」

「いやいや、今回は殺し合いじゃないから大丈夫だよ!」

 狼を意識したマスクをしているが、動きと言動で既に敵陣に友達を作っている加々美。

「魔法を使えなく出来るって本当ですか⁉」

「え? いや、その・・・・・・はい」

「えー⁉ 凄い! もう最強じゃないですか!」

「最強なんて、僕なんかまだまだですよ! この力も、もらい物ってい感じで」

 敵陣の女性メンバーに取り囲まれている八雲。

「俺は銃ってよりも弓が得意って感じなんだよな。逃げられないぜって感じで敵を撃つ!」

「ははぁ、そうかい? 弓も良いが、今は銃の時代だぜ? それで弾幕が張れるか?」

「弾幕と、精密射撃の融合が俺の美学! だが、そうだな悔しいが銃と比べると連射で負けるな」

「しかし、弓か・・・・・・それも銃とは違う戦術も生み出せるかもな。いやぁ、その発想は無かったぜ」

 遠距離武器談義で盛り上がる宗次郎。

「可愛い! お姫様みたい! ねぇ、素顔みせて?」

「嫌だよ! 敵なのに!」

「そうだけど、可愛いんだもん!」

「可愛くないよー!」

 京子もあちら側の女性陣にモテモテだ。

「強化〈バフ〉魔法にもいろいろあるけど、普通の魔法では身体に大きな負担をかける事になってしまう。だから、私は日常から微弱ではあるけど対象の身体を改造していく事に着目して」

「薬の力って事か?」

「薬だけじゃない、魔法も術式の組み合わせを考えれば無限にある。まずは強化〈バフ〉魔法に耐える身体を作るって事。あっ、そうだ・・・・・・女性の皆さん、私の造った化粧水試してみない? 無添加だし、赤ちゃんが使っても問題ないぐらい肌に優しいよ」

「え? 良いの?」

「試したいなら今試してみてよ。絶対に化粧ノリが変わるよ~、こればかりは魔法ではどうもならないからね、科学も捨てたモノじゃないよ~」

 敵に早速自分の造ったものを自慢しているアイリス。

「はぁ、今はギルド戦の途中なんですよ? もう少し気を引き締めて下さい」

 呆れた様子の志雄は腕を組んで呆れた様に呟く。

 正明も溜息を吐くと、目の前の黒宮左近を睨む。

「その仮面、もう少し可愛いのにしたら? まるで怪人だよ?」

 正明は仮面を右手で少し撫でると、鼻で笑う。

 外すつもりは無い。この仮面は正明の深層心理を表す形をしている。仮面を作る際に自分の心を投影する魔法術式を使っているのはここにいる全員が同じだ。この仮面は言うなれば本当の意味では素顔とも言える。

「お前は俺の一番深い部分を見ている。この仮面はそんな仮面だ」

「なんだかわからないけど、僕は君の前では仮面をしたくないから素顔で行かせてもらうよ」

「好きにしろ、仮面なんか本当の所意味はない。顔を隠しても魔力を視覚化すれば簡単に個人は特定できるだろう?」

「偽装は基本だよ?」

 正明は口をつぐむと、腰にホルスターを出現させる。

 志雄も両腕に手甲を出現させて、硬質な音を響かせた。

「やる気は十分か、では、第一回戦!」

 左近は腰の銃を引き抜くと、頭上に向けて発砲した。その銃口からは花火の様な火花が飛び出す。

 それを見た両陣営のメンバーは歓声を上げた。

 正明は敵陣の人間を左目でスキャンする。

 全員がソコソコの実力者だ。雑兵なんかはいない、戦えば正明を含めたメンバーは苦戦を強いられるだろう強さだが、連中には戦いに必要な武装意外に情報収集を行うための道具は無い。

「飲み比べ対決! ルールは単純! 先につぶれた方が敗け!」

「はぁ⁉ おい! 勝手に決めるな! なんだその飲み会じみたノリは!」

 正明は焦って異議を唱えるが、効く耳など持たない左近とその手下はテーブルの上に大量の酒を召喚した。

「さぁ! 僕のギルドからはこの男! いでよ! 鬼頭直志!」

「うおおおお!」

 雄たけびと共に現れたのは加々美と親し気に話していた男だった。まさに巨漢だとしか言えない体躯をしている。身長は二メートル程か、相当な力自慢である事はその筋肉質な身体が物語っている。

「さぁ! 来い! 誰が相手かな⁉」

 乱暴にテーブルに腰掛けた直志は期待に胸を膨らませているのが見て取れた。

 正明は隣にいる志雄にアイコンタクトを取る。

 察してくれたのだろう、志雄は黙って椅子に腰掛けた。

「あぁ? こんな細い姉ちゃんが相手か⁉ バカにするなよ!」

 怒鳴る彼に志雄は静かに一言。

「もし私に勝てたら、何でも言う事を聞きましょう」

 その言葉に直志は顔色を変えた。

 彼の眼は彼女の身体を品定めする様に動き始める。

「いいだろう! 後悔するなよ!」

「その代わり、貴方が敗けたら」

 志雄は懐から一枚のチラシを出す。

 そこには有名なパティシエが作る限定品のシュークリームが記されていた。

「これを買って来てください。貴方のおごりで」

 恐ろしい鬼の仮面に似合わない提案に、直志は笑いを必死に堪えていた。

「あー、開始の合図は俺でいいのか?」

 宗次郎がめんどくさいと言わんばかりにそう言うが、正明はそれを催促する。

 首を縦に振ると、宗次郎は息を吸い込んで合図を送る。

「始め‼」

 その声と同時に直志は太い腕でジョッキを掴むと一気に口の中にビールを流し込む。まるでバケツにでもひっくり返しているのではないかと思えるほどにジョッキの中身は消えてしまった。対する志雄は仮面を外し、同じ様にジョッキからビールを飲んでいるが、彼ほどの勢いはない。

「やっぱり、若い姉ちゃんじゃ分が悪いよな! そちらのリーダーも人が悪いぜ、この娘は今夜俺がじっくり味わってやるぜ。おぉ~、美人じゃねぇか!」

 最低な発言に正明は奥歯を音が鳴る程に噛みしめると、不機嫌そうにその姿を子猫に変えると近くにいる八雲に抱えられた。

 志雄も怖い顔をして直志を睨み付けると近くのある樽に視線を移す。

「そこの樽ですが、中身はお酒ですよね?」

 その言葉に直志のそばにいる男は怪訝な顔をすると、樽の蓋を開いて中身を見せる。すると中から酒の匂いが広がり、透明な液体が見えた。

 日本酒だろう。

「そうだが、どうしようと?」

「貰いますよ」

 志雄は男の了解も聴かずに樽を足先でひょいと器用に持ち上げる。

「ハァ⁉ 樽は三〇キロあるぞ!」

「三〇キロは物理的に無理ですので注ぎますか」

 その言葉に宗次郎が巨大な器を志雄に投げる。それを受け取ると、樽のそこに指で穴を空けてなみなみまで注いで志雄は器に口をつける。

「それがどうした! はははっ! やめときな! 倒れるぜ!」

 直志がそう言い終えると同時に志雄は空になった器を放り投げた。

 その器を見て、そこにいる全員が言葉を失った。

「は? 飲んだのか?」

「飲みました」

「マジで?」

「はぁ、解りました」

 志雄は直志の見ている前で樽の穴に直接口をつけると喉を鳴らしてその中の酒を飲み干してしまった。

 空になった樽をデコピンで粉砕して中身が無くなっている事を証明すると、志雄はまだシラフの直志に顔を近づけて一言。

「同じ量が飲めるまで待ちますよ?」

 自分で物理的に無理と言っていた量を飲み干した志雄の顔を引きつった笑顔で見つめる直志はその場で深々と頭をさげて白旗を挙げた。

「ま、参りました」

「約束は守ってくださいね?」

 偉そうに脚を組む志雄は酔いが回って来たのか少しいつもよりも無邪気な笑顔を見せていた。

案外この作品は何でもありですよ? 何でもしていきますよ!

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