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プロローグ

 趣味の集合体です。

 やりたい放題万歳!こんな物語ですが、批判、ダメ出し、意見などがあればコメントお願いします。今後の参考にしたいと思います

 かつては、魔法と対を成す科学と呼ばれる技術が世界を二分していた。

 ある時に、魔術の天才と科学の天才がそれぞれに生まれた。

 魔術の天才である男は、魔術を発展させた。科学の天才であった女は魔術と科学を一つにしようとした。

 二人は幼馴染であり、大人になりお互いに魅かれ合い、共に生きていた。


 男が女を裏切るまでは・・・・・・


 魔法は、科学の形を歪めた。

「理論に基づいた、壮大な幻想」・「現世に寄り添うおとぎ話」

 科学は、魔法の奴隷となった。


 時が経ち、現在。

 かつては「東京」と呼ばれた街が、「トレライ・ズ・ヒカイント」と名を変えた。

 かの時の様に、魔法の天才達が街に蔓延り始めた事が始まりだった。

 魔法が科学を下した時の様に、「科学」が「魔装」へと名を変えた様に。


 これは、裏の物語。

 人類が魔法を使い、科学を従えた歴史の裏。


 死神の飼い猫が紡ぐ、戦争の前日譚。



 一隻の船が、一人の少年の前に現れた。

 おかしなものだ、街中の河川にいきなり現れたはいいが、普通の帆船よりはデカい。

 客船? それ程はあるが、少し外装に歴史を感じる。それに、大砲などで武装している所を見るにこの船が普通の客船などと言う生易しいものではないことがわかる。

 その船の乗組員なのだろう、一人の男が少年の目の前に訪れた。


「久しいです船長。貴方の帰りを一同、お待ちしておりました」


 涙を目尻に浮かべた燕尾服の男がそう少女に言うと、夏の冷たいアスファルトに膝を付いた。

 少年は口元に笑みを浮かべた。


「僕は、壊れたらしいね。もう、幻覚まで見えているよ」


「とんでもない! 伊達雅美様! 我々をお忘れですか⁉」


「わかんないよ。貴方は誰ですか? 僕は警察に行くんだ。退いてよ」


 少年はYシャツに七分丈のズボン姿で、そう言うと大きな瞳から大粒の涙を流す。

 そのシャツは紅く染まり、彼の白い肌にも同じ色の液体がべっとりと付いていた。


「僕は違うよ。そんな、雅美さん? そんな人知らないよ」


「え? 雅美様? では、ない? そんな、我々は二〇〇年待ったんですぞ! 御戯れを! 雅美様!」


「二〇〇年? そんな時間を人間が生きられる訳ないじゃん。その人、死んでいるよ」


 少年は自分の言葉に驚いた。こんなあからさまに目の前の人が傷つく事を言ったことが無かったからだ。案の定、燕尾服の男は大人気ない声を出して泣きながらふさぎ込んでしまった。


「なぜです! 我々は、これから・・・・・・誰に忠義を捧げればいいのですか⁉」


 そんな事知らない。

 少年はたった今何十人もの人間を殺してきたのだ。

 実の親、近所にいた大人達、愛する人を穢して殺した連中。全員を張り付けて、命乞いを聞きながら燃やしてやった。

 ナイフでも刺した。

 何度も、何度も、何度も、急所を外して、殺さないでと叫ぶ声をBGMにして、スポーツでもするように虐殺を働いて来た。

 正直に少年の心内を告白すると、彼は楽しかったのだ。

 自分を嘲笑い、踏みにじった人間が虫けらの様に這いつくばり、まるで神に祈るように少年へと命乞いを行う。


「僕は、人間じゃない」


「貴方は、立派に人間ですよ」


 燕尾服の男は泣き腫らした目で、少年にそう言ってきた。

 少年の頭に血が上る。


「こんな姿でも⁉ 楽しんで人を殺しても⁉ 僕は自分の両親を拷問して殺して来たんだぞ⁉」


「だから、何なのでしょう? 雅美様も、過去に愛する者を殺そうとしました。戦いの中で、かつての仲間も屠りました。あの方も、今の貴女様のように泣いておりました。楽しんだから何なのでしょう? 拷問して殺したから何なのでしょう? 人殺しだから何なのでしょう? 貴方は、意味の無い殺しをする人間ではありません」


「なんなんだ? 貴方は誰です⁉ この船は? 雅美って誰⁉」


 少年は叫ぶ。

 癇癪を起した子供の様に少年は喚くと、拳をその燕尾服の男に放つが、その拳は彼の顔には届かない。

 身長が違い過ぎるのだ。

 燕尾服の男は確実に一九〇センチはある。それに対して少年は一五五センチしかない。


「もしかしたら、貴方は・・・・・・雅美様の御子孫では、ありませんか? 他人と区切るにはあまりにも、似すぎています」


「わからない‼ 僕には! もう、何もない‼ 誰もいない‼」


 少年は大きな瞳を凶暴に開き、生まれて初めて大声で他人に当たり散らした。


「中位魔法三級魔術、魔力可視化」


「な、何を」


「何故に、このWELT・SO・HEILENが貴方様の前で停泊したのかが解った気がいたします。貴方様には、魔力がありませんね?」


 少年は押し黙った。

 何で気付いたかわからなかったのだ。少年に一般的な魔法の知識はない。親には学校に出してもらえていない上に、家にほぼ軟禁されながら生きていたのだ。

 それも全部彼に魔力が無いせいだ。


「それに、雅美様と同じ才能を持っている様です。魔装使いになってはいかがですか? 我々の主として、世界で一人の魔装使いとして、生きて見ませんか? 我々の忠義を死した雅美様の分まで、貴方様に。後継者としてこの船の舵を握って頂きたい」


「魔装、使い?」


 少年は、混乱を極める頭で無意識に船へと入ると、舵を握った。


 その夜、大勢の人間が殺される猟奇殺人が起こった。被害者は、壁に杭の様なもので貼り付けられて生きたまま燃やされていた。

 身体には様々な刃物が突き刺さり、まるでオブジェの様になっていたとされていた。

 だが、その事件で唯一助かった人々がいた。

 幼い子供達だ。

 被害があった家庭の年端もいかぬ子供は家から離れた場所にある体育館で無邪気に遊んでいた。

 その全員が、一匹の黒猫にこの体育館へと連れてこられたと答えた。

 その事から、警察はこの事件を「死神の飼い猫事件」と名付けた。

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